2話
「ふあぁぁ~」
よく寝た…とは言い難い。
たしかにあのとき、ユウキのいびきの隙をついて眠った。
だが、そう甘くはなかった。
まさかユウキが寝ぼけて殴りかかってくるなんて思いもしないだろう?
その本人はどうしてるかって?
無論、となりのベットで寝ているぞ?
ん?起こさなくて良いのかって?
問題ない!
ちゃんと起こしたし、ちゃんと仕返しもした!
叩き起こしてぶん殴ってやった!
まぁ、その結末は…
「話の途中であくびしない!」
「はい、すいません…」
小一時間エミにお叱りを受けているのだった。
「これからクエストに行くのに、何かあったらどうするのよ?」
「わかった。俺が悪かった。
だからもう勘弁してくれ…」
「もう…次はないからね?」
と、エミがユウキを起こしはじめたとこで、お説教タイムは幕を閉じた。
「はぁ…もう一部屋借りたい…」
俺は悪くない。
絶対に悪くないと考えつつ、そう呟いた。
「なんか言った?」
「なんでもないよ…」
宿を出た俺たちは、昨日ギルドに言われた停留場にいた。
ここにあるのは、様々な場合の移動手段となる馬車や、
移動だけでなく、周辺の警戒などができる気球などが配備されている。
俺たちが今日使うのは馬車だ。
この町の付近だし、徒歩でも良いのだが、
最近、大型の魔物の存在が噂されているため、大事をとって乗り物を使うことになったのだ。
「さぁ、乗った乗った!」
と、運転手に急かされ馬車乗り込む。
「狭!」
「馬鹿!声に出すな!」
と諭したが、聞かれてしまったらしく、
「狭くて悪かったな!」
と、笑ながら言われてしまった。
「すいません…」
まったく…ユウキはいつもこれだ。
ゴトゴトと小一時間馬車に揺られて着いたのは、
『リトルハーブの林』
という場所で、町の人々からは略称の『林』で通じている。
ちなみに、リトルハーブというのは、俺たちの滞在している町の名だ。
「タカミもキャンプ張るの手伝ってよ!」
「あぁ、良いよ、俺やっとくから!」
「え、でも…」
「じゃあ、エミは装備の点検を頼むよ」
「うん!」
キャンプを張り終えた頃には、
日が空高く昇っていた。
俺たちは簡単な食事を済ませた後、
ターゲットであるリキッドをそれぞれ討伐に行った。
ユウキはキャンプを挟んで西のエリア
エミは東
俺はその中間だ。
「早速発見」
見つけたのはリキッドが3体だ。
「一気に型をつけるか!」
ザッ!ザシュッ!
2体のリキッドを切りつけた。
1体は核が切られて体が溶けたが、
もう1体は核まで届かなかったようだ。
さらに、無傷のリキッドもこちらに気づいて臨戦体制に入る。
言い忘れていたが、俺の武器は両手剣と呼ばれる一対の短剣だ。
機動力に優れ、素早く2回切りつけることが可能な武器だ。
「まずは1体か…できれば2体倒したかったけど…」
「きョあ~!」「き~!」
「おっと」
どうやら、ぶつぶつ言ってる暇はないみたいだ。
リキッドが突っ込んで来やがった。
たとえランク1でも油断は禁物だな。
(とりあえず、もう1体!)
と、両手剣でリキッドを切りつける。
ズザザンッ!
二連切りを喰らったリキッドは、核を壊されて溶けてしまう。
(ラスト!)
掛け声と同時に残ったリキッドのもとに突っ込み…
ザザザン!ズッ!ズザザザン!
と、四段切りをもろに喰らい、
リキッドは溶ける間もなく核含め四方に散らばる。
「ふぅ…まず3体撃破っと。あと何体だ?」
数の確認のため、ギルドから受け取ったカウンターを見る。
「と、その前に…」
あたりに散らばったリキッドの核を拾って、カウンターに入れる。
カウンターはモンスターの魔力の個体差で数を数えるため、そのモンスターの指定された部位が必要になる。
リキッドの場合は、その核なのだ。
「よし、あと半分か」
「よし、これで最後だ!」
カウンターの数値は20。
クエスト達成だ。
「さて、キャンプに戻る…」
ガアァァァー!!
「なんだ?!」
(これは…東か!?)
考える間もなく走り出していた。
東にはエミがいる。
ユウキは聞こえていたかわからない。
とにかく、最近目撃されている大型の魔物かもしれない。
そんなことを思いながらひたすらに走っていた。