1話
お待たせしました。
やっと本編入りです。
「ハッ!」
俺は悪夢に目を覚ました。
体は汗だくだ。
(また…あの日の夢か…)
突然、俺たちの住む教会が襲われ、
ひたすら逃げることしかできなかったあの日の夢。
「あれ、タカミもう起きたの?おはよう、今日は早いね。」
笑いながらそう言う幼馴染みに対し、
「あぁ、おはようエミ。
偶然だよ、偶然。」
そう答える俺。
あの日の夢を見た、なんて言う必要はない。
俺たち3人は、あの日のことなんて思い出したくないのだから。
ん?二人しかいないだって?
あぁ、それなら、横で大きないびきをかいて寝てる、ユウキってのがいるぜ?
どれ、今日は俺が起こすかと、悪い顔をしながら起き上がる。
「え、なにする気なの?」
タカミ「なぁに、たまには俺が起こしてやろうと思ってな」
笑いながらいや、にやけながら答える。
「グガ~!ゴ~!」
(本当にうるさい。まぁ、普段は寝てて聞いてないがな)
「さて、起こすとするか」
と言い、にやけながら近くにあったメガホンをとる。
「あ、それ…」
ん?エミがなんか言いかけたみたいだが、ここはあえてスルーだ。
大きく息を吸って…
「おぉきろおぉぉ!!」
と、ユウキの耳元で叫ぶ。
「どわぁぁ!」
「おはよう、ユウキ」
ニヤニヤした顔でそう呼び掛ける。
ユウキ「なんでお前に起こされなきゃなんねぇんだよ!
そのメガホンもエミのだろうが!
てか、なんで起きてんだよ!」
ほぅ、このメガホンはエミのだったか。
ってことは、いつもエミの大声で起こされてるわけか。
どんな耳してんだか。
「偶然早起きしたから、たまには俺が起こすかって思ってな」
と、笑う俺。
「クッソー、俺が早く起きれば…」
と、ユウキが呟くが、
「ユウキが早起きしたことって、一回もないじゃない」
と、エミの鋭い突っ込みがきまる。
「グゥ…」
エミ「たまには早起きしてよね。起こすの大変なんだから」
ユウキ「はいはい、あと10年くらいしたら早起きするよ」
「10年って、その間私が起こさなくちゃいけないわけ?」
グウゥゥゥ~
「ん?誰か腹なったな?」
「お前だ(タカミよ)!」
「ハモるなよ!まぁ、良いや、はやく朝飯食いに行こうぜ!」
「だーめ!今日は用意しておいたから、ここで食べる!いつも外食じゃあ宿代なくなっちゃうよ!」
クソッ、俺の好物『マッシュー特製キノコステーキのキノコソースがけキノコのソテーを添えて』は食えないのか。
「はい、これが今日の朝ごはん」
と、出されたのは、
「サラダとハムと…」
「ロールパン…」
(市販だ!)
と、俺とユウキの二人は感じた。
が、そんなことは口が滑っても言えるわけがない。
俺たちは黙々と食べることで、口を塞ぐのだった。
食事を終えた俺たちは、この町にあるギルドへ向かっていた。
ギルドというのは、様々な目的を持って旅をする者や、魔狩者をサポート及び管理する機関だ。
そして、俺たちは魔狩者のパーティー。
魔狩者には、この町や、付近の村や集落からの依頼が、ギルドを通して来る。
それらはクエストと呼ばれ、
魔狩者なら誰でも受けられるフリーのもの、
ランクの指定のされたもの、
有名になれば、個人を指定したもの、
そして、付近の魔狩者は強制でさんかするものの、4つがある。
ちなみに、俺たちは、9段階あるランクのうちの、ランク2だ。
今日は、宿代や装備代などを稼ぐために、手頃なクエストを探しにいく。
「どんなクエストが良いかな?」
「ランク1モンスターの掃討なんてどうだ?」
「はぁ?俺たちははランク2だぜ?ランク2モンスターくらい狩ろうぜ?」
「えー?ランク2モンスターだと、今の装備じゃ難しくない?」
「そうだよ。今は金を貯めるのが先決だ」
「ちぇー」
そうこうしているうちに、ギルドに着いた俺たちは、顔見知りの魔狩者たちと挨拶を交わしながら受付へ向かう。
「おはよう『デリーツ』の皆さん」
笑顔で挨拶してくれる彼女は、ここのギルドの受付三姉妹のひとり、ララだ。
で、『デリーツ』っていうのは、俺、エミ、ユウキの三人のパーティー名だ。
「あぁ、おはよう」
「おはよう、ララさん」
「おーっす!」
「それで、今日はどんな用件で?」
「クエストを受けにね、ランク1モンスターの掃討なんてあるか?」
「できれば、報酬の良いものが良いな」
ユウキが笑いながら付け加える。
別に、並の報酬が貰えればなんでも良いんだがな。
「そうねぇ…リキッド20体以上の掃討なんてどう?
報酬は1Gよ」
「リキッド20体にしては多すぎる額ですね…」
「なんでも、観光に来たお金持ちが襲われたらしくてね。
なんとしても恨みを晴らしたいみたいなのよ」
「なるほど、それで1Gなんて額にして、魔狩者を釣ろうとした訳か」
「そんなところね。それで、どうする?」
と、訪ねてきたララさんに、
「勿論受けるぜ!」
ユウキが元気よく答えるが、
(リーダーは一応俺なんだから勝手に受注するなよ)
と、思う。
まぁ、受けるつもりだったし、構わないんだけどな。
「じゃあ、はいこれ」
渡されたのは、魔力によって、倒した魔物の数を数える装置で、カウンターと言う。
うん、そのまんまだ。
これの普及によって、討伐系のクエストに関する不正は激減したそうだ。
それでも、激減に留まっている。
やはり不正というのは、完全になくすことは難しいようだ。
ちなみに、これが普及したことによって、魔物を倒す度に記録をとる必要が無くなったため、
魔狩りに集中できるようになったのも、
カウンターの利点だったりする。
タカミ「あぁ」
適当に相槌を返しながらカウンターを受けとる。
「じゃあ出発は明日だから、明日の朝に停留場に行ってね」
「わかりました」
そう言って、ギルドをあとにする。
「リカバーと…丸薬と…」
「煙幕に焼夷玉…それから投げナイフ…」
宿に戻った俺たちは、明日のリキッド狩りの準備を進めていた。
リキッドと言うのは、液体状の不定形モンスターのため、どこにでも隠れられる。
と言っても、所詮はランク1のため、個々で相手取れば、隠れられる前に倒せる。
が、今回は掃討、つまり、相当の数が発生している筈だ。
…ちなみに、掃討と相当をかけたつもりは全くない。
ともかく、数が多いなら、何が起きるかわからない。
なので、こうして入念に準備を進めて…
「ゴガ~!」
「「寝るな~!!」」
「ふぇ?!って、どわー」
ドンガラガッシャーン!
そんなこんなで、準備を終えた俺たち二人は、部屋で食事を取り、
俺はベッド
エミは自室で、明日に備えて眠ろうとしていた。
が、俺は眠れん。
何故かって?
残ったもう一人が準備を終えて、
それを点検しなければならんからだ。
いや、準備・点検はとっくに済んだ。
なら何が眠りを妨げるのか。
答は簡単。
「グ~ガ~!ゴガ~!!」
ユウキのいびきだ。
(だ~!うるさくて眠れねぇ~!!)
なんてことを叫んだら近所迷惑なので、心のなかだけに留める。
てか、すでにこのいびきが近所迷惑なんじゃないか?
結局、ユウキのいびきが収まる一瞬の隙をついて眠ったのだった。