17話
「よし、宿を出よう」
「うん…」
「まぁ、しゃあないかな」
「付け加えると、この町からも出るべきじゃな」
ティアの話を聞き、半信半疑だが、宿、しいてはこのリトルハーブの町を出るという決断に至る。
その話というのは、
俺たちはこの世界を統制する十統神の一体から、邪魔な存在とされ、始末されようとしていること。
ティアはその一体と敵対する派で、俺たちの捜索、護衛、保護を目的にここに来たこと。
そして、力を振るったことで、敵に発見され、行動が警戒から始末に移ったことだ。
よって、敵が今後どんな行動をとるかわからないため、町に被害が出ないよう、この町をあとにしようとう結論に至った。
「まったく、忠告を無視するからこんなことになるんじゃ。
ほんとはもっと穏やかに済ませるはずじゃったというのに…」
「あー、それはすまない。
だが、訳のわからない子供に言われてもだな」
「もうちょっと頭のいいやつだとおもったのじゃよ。
お主の友だというものは頭の切れるやつじゃったからな。
名はたしか…サクマじゃったかの」
「「「サクマ ?!」」」
「なんじゃ急に、大声出しおって」
サクマ…あの日…俺らの家だった教会が、山賊に襲われ、すべてが燃やしつくしたあの日、死んだと思っていたやつの一人だ。
生きていたってのか…?
だが、あのあと、泣きじゃくるエミをなだめ寝かしつけたあと、ユウキと二人で人数分の焼死体を確認したはずだ。
それが何故…。
「おい、タカミ…」
「あぁ…ティア、サクマは今どこに?」
「わからん。じゃが、これから行く場所にたどり着けば、なにかわかるじゃろう。
なにせ、これから儂らがめざすのは、『月の寝床』と呼ばれる場所じゃからな」
「え、月の寝床ってたしか...」
月の寝床とは、神の住まう場所と言い伝えられる秘境の一つだ。
他に、『太陽の神殿』『水流集う大空洞』『恵みの城』『癒す霧の湖』『破壊者の孤島』『勝者の虚空』『幸運の三角域』『輪廻の大穴』『罪深き審判の場』
と、それぞれの神の住まう場所が存在する。
月の寝床とは、遥か西にあると言われるが、誰も到達したことがないと聞く。
「そんな秘境に私たちで到達できるの?どこにあるかだってわからないのに…」
「わしがいるから安心せい!無事にとは言わんが、到達はできよう!」
「そこは無事に到達させろよなちみっこ」
「…今なんと言った…」
「え?無事に到達「その後」…ちみっこ?」
「おんどりゃあぁぁ!」
豪快に投げられたユウキは「わあぁぁ!?」と言って飛んでいた。
飛んでいたと言っても、放り投げたのではなく、真上に打ち上げたので、頭から落ちてきて地面に刺さる。
この餓鬼ただ者じゃない。
薄暗い洞窟内に二つの人影がある。
どちらも黒いフードをかぶった男で、背の高いのと小柄のがある。
「…まだ見つからないのか?」
「るっせーな、口動かしてねぇでてめぇも働けってんだよ」
「ゲームに負けたのはお前だ。敗者は敗者らしくと、いつも言っているのは貴様だろう?」
「ヘーヘーワカリマシタヨ~」
二つの人影は更に奥へと進んで言った。