プロローグ
(なんだよこれ…)
振り向けば、遠くに激しく燃え盛る『家』があった。
「うっ…うっ…ぐすん」
「クソッ!」
俺の隣には、ただただ泣きじゃくるのと、
ひたすら悔しがり、怒りを露にする二人の幼馴染みがいた。
「なんで…親父が…姉ちゃんが…皆が…なんで…」
(なんでこんな目に合わなきゃいけないんだよ!)
俺たちは泣いた。
ひたすら泣いた。
泣くことしかできなかった。
こんな小さな体で、
なにも知らない頭ではなにもできなかったから。
この惨劇は、半日ほど前に起きた…
バタン!
乱暴に開け放たれた扉の前には、
体格の良い人族の男が十数人並んでいた。
身形から言って、山賊か何かだろう。
彼らは、斧や鎌・剣に弓矢と、様々な武器を手にし不適な笑みを浮かべていた。
「ここは教会。神の前ですぞ。
そのような物騒なものはしまっていただきたい。」
彼らに対し、落ち着いた口調で話しかけた彼は、孤児だった俺たちを引き取り、育ててくれたここの神父だ。
そして、危険を感じたのか、俺たちを安全な場所へ移動させている彼女は、
ここのシスターで、神父の娘だ。
俺たちのように、ここに住む子供たちは、
神父を父と呼び、シスターを姉と呼んだ。
「全部燃やしつくしちまえ!」
この声で、俺の思考は現実に戻される。
彼らの足元には、血まみれで倒れる親父がいた…
「逃げるわよ!」
姉ちゃんは、俺たちを外に逃がそうとしたが…
「逃がさねぇよ!」
「キャッ!」
姉ちゃんの背中には、木でできた矢が刺さっていた。
姉ちゃんは血を流して倒れた。
ピクリとも動かない。
とたんに、飛んできた斧が一人の子供の首を飛ばした。
俺たちはパニックになって、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。
俺を含めた3人は、なんとか脱出することに成功したが、他の皆がどっなったかはわからない。
「…」
俺たちはあのあと、ひたすら走ったのち、この教会から少し離れた丘にたどり着いた。
俺たちは、もう燃える『家』を見ることしかできなかった…