11話
「なんかドキドキするね…」
「そうですか?俺はまぁ、人数多くてやりにくいですが…」
…この人小隊長だよね?
そりゃ、危険な場所だし、緊張するのもわからなくもない。
でも、隊長がこれで大丈夫なのか?
「そっか、君たちは魔狩者だったね
僕は調査にあまり出ないから、こういうのは珍しいんだ」
それって、ルルさんもそれっぽいこと言ってたな。
ん?ケルロさんとルルさん。
なんか前にそんな話を…気のせいかな?
「調査事態少ないんですか?」
「いや、僕はまだ新米で
調査に出るのはたまになんだよ
そもそも、調査にこんなに人数は要らない
いつもは二班くらいで一班の人数も少ない」
「あまりに多いと逆に魔物刺激しまって危険だからですか…」
「そういうこと
だから、今回のような大規模な調査は異質なんだ」
「なんでも良いけどよー
てか、何やるんだっけ?」
「林の調査だ馬鹿
つか、現地来てまで言う台詞かそれ?」
「はーいはい、ユウキは緊張感なさすぎ、
タカミは一言余計ね」
「「イテテテ!」」
なんだよ、この脳筋にはちょうど良いだろう。
それがなんでユウキと一緒に頬をつねられなければならないのだ。
それが、リトルハーブの林に着いてまもなくの出来事だ。
そして、それから一時間ほど後にあたる現在…
「グゥゥゥ…」
目の前にいるのは、片目に長くもなく短くもなく、そんな中くらいの剣の刺さった竜がいた。
「タカミ君、あの飛竜で間違えないかい?」
「はい。右目に両手剣の右剣、間違えないはずです」
「そうか、では」
ケルロさんは確認を終えると、近くにいた隊員になにか話しかけ、その隊員は静かにさっていった。
「あの隊員は?」
そう訪ねると、
「あー、彼には言伝てを頼んだんだよ
確認の終了の連絡と、今後の指示をあおぐために、本隊にね」
「あー、」
なるほど、と良いかけたとき、当たりに不穏な音が鳴り響いた
擬音にするなら
ドカーン!
って感じだ。
俺はもちろん、エミ、ユウキ、ケルロさん、それにまわりの隊員3名ほどと、その場にいた全員が、音のした方を振り向く。
そこには、
「くくく……」
怪しく笑う黒マントの男が立っていた。
その手には、音の発生源と思われる魔方陣が展開され、足元には僅かに飛び散った血液と、その中央に焦げあとがあった。
「貴様、何者だ!
現在この林には我々ギルド調査班しかいないはず、貴様は明らかに調査班ではない!」
隊員の一人が、声を荒げて謎の人物に問いかける。
「あー…俺かい?名乗るほどのものじゃないし、敵じゃあないぜぇ?」
謎の人物の反応に対し、
「ならばその右手に展開された魔方陣はなんだ!」
と、帰す。
確かに、敵でないなら魔方陣を展開する理由がない。
そもそも、敵ってなんだ?
「これか?ちょいと爆発呪文を唱えたばかりでねぇ、また展開するのはめんどうなんで、そのままにしてるんだよねぇ…」
「爆発呪文だと…?」
「そうそう、調度君と同じ格好の男を今、ここで木っ端微塵にしたのよぉ」
「?!
ろ…ロレンスを殺しただと…」
いきなり何かと思えば、いきなりわけのわからない危険人物かよ!
くそ、こんな時に!
…こんな時?どんな時だ?
そりゃ、すぐ後ろに眠ったレスワイバーンがいて…それで…
ここでようやく気づく。
目の前の隊員が声を荒げているこの場所は、
レスワイバーンの寝床なのだ。
「よくも…よくもー!!」
「きひっ…!
…トリックボム…!」
黒マントが、おそらく魔術の名、を呟いた直後、隊員の足元に魔方陣が出現し、まもなく隊員は消滅した。
名の通り爆発して。
「さてと、俺の任務は完了だ
あとは精々長生きするこったなぁ!」
黒マントはそう言い残し、木々のなかに消えた。
訪れた沈黙もつかの間。
グオアァ!
という、咆哮が、当たりに広がり、後方から、明らかな殺意を感じた。
「くっ!あいつ目を覚ましやがった!」
「君!他の班に応援要請!」
「り、了解!」
「私も行く!」
「ふぁ~あ。
やっと体動かせるのか?」
「ユウキこのやろう…今の今まで寝てやがったのか…」
「ん?なんかあったのか?」
「説明は後!今はこの場をしのぐよ!」
「了解!」
「ん?まぁ良いや、了解~!」