10話
「…」
「…」ジロジロ
(このガキ…なんだ?)
目の前には青い瞳と黄金の長髪という、一般論では美形ととれる、勿論、俺も例外ではなく、確かに可愛いとは思える少女いや、幼女がいる。
それだけなら何でもないことだ。
うん、本当に何もないからな?
それだけならどんなに良かったか…
擬音にも表してあるように、そう、ジロジロと見られている。
俺はなにもしていない。
強いて言うなら、顔合わせを終えて自由行動になったので適当に本屋に入ろうとしている。
そこでうっかりこの子とぶつかってしまったのだが、怪我はしていないと言うので、本屋に入ろうとしたわけだが、ジロジロ見てくるので、動けないでいる。
うーん、思えば結構あるな。
とりあえず、動いてみよう。
「えっと、君、名前は?」
そう。
子供に接するときは、まず目線を合わせて、ゆっくりと話す。
何故名前を聞いたのかという理由は、他に思い付かなかったからである。
「…ティア」
少し考え込むような仕草をした後言った。
ちなみに、初めて声を聞いた。
怪我の有無の確認には頷くだけの反応だったからな。
「…」
「…」
訪れる沈黙に、俺の顔はひきつった。
ほんと…なんでこんなときにエミがいないんだ!
「…」
ティアと名乗った少女?幼女?
世間的に少女にしよう。
何がどう世間的かは置いておくことにする。
で、今そのティアと市場を歩いているところだ。
ぶつかった詫びとして、菓子の1つでも買ってやれば、どっか行くだろうとふんでのことだ。
「好きなの選べ。1つだけ買ってやる」
「…」
ティアはコクりと頷き、人混みに紛れた。
俺は本屋で買った本を、そこらにもたれながら読んで待つことにした。
読書も中腹に差し掛かったとき、大きな爆発音が耳に入った。
「なんだ、今のは?
ともかく、面倒事はごめんだ。」
と、すぐに立ち去ろうとしたが…
「てめぇら動くんじゃねぇ!
でねぇと、この餓鬼の命はねぇぞ!」
思わず振り替える。
目に入ったのは、女の子の首にに大剣を突きつける大男。
そしてその女の子は、
(ティア!)
恐らくもなにも、これは確実に強盗だ。
目的を達すれば、ティアを人質に逃げるつもりなのだろう。
「…」
気が付くと剣を抜き、強盗の前に歩み出ていた。
「あぁ?なんだてめぇ?
動くなって言った…」
話を遮るように、金属がぶつかる音がする。
「ろ…」
続きを言い終わると同時に、何かが地面に落ちる。
強盗が落ちたものに目を向ける。
それはまさしく自分の大剣だった。
今抱えている少女の首に突きつけていたはずの自分の剣。
それは今床に落ちている。
そして、首には目の前の少年の剣が突きつけられていた。
なにが起こったのかわからないまま、駆けつけた治安維持部隊に拘束されてしまう。
「すまないティア、怪我はないか?」
ティアは、初めて会ったときと同じく、首をたてにふって応答した。
その後、治安維持部隊に事情聴取をされた。
正直肩がこった。
しかもだ、帰りが遅いとエミに叱られ、その上小さい女の子をつれてきたとあってコッテリ絞られるなど、明日は林の調査に出ると言うのに、まったく、散々な1日だ。