7話
「はぁ…はぁ…」
様々なハーブの香りのたちこめる林を木々の間を縫ってひたすらに走る男が一人。
よくいる中級魔狩者の来ている服と、背負っている弓矢を見ると、
中級の弓使いであろう。
弓は威力に劣るため、ソロでは珍しい。
しかし、彼はソロではない。
彼は剣士二人とともに魔狩に来ている。
いや、訂正しよう『来ている』ではない。
『来ていた』だ。
さて、何故彼が一人なのか。
その理由は、彼のすぐ後ろにいた。
彼はその脅威から逃れるために、小型魔物しか入れそうにない洞穴に逃げ込んだ。
「はぁ…はぁ…こんな、馬鹿な…
だって、あいつは…」
息を切らしながら男は呟く。
しかし、彼は失念していた。
いや、混乱していて正常な判断ができなくなってるのだろう。
そう、今この林にいる脅威は、ブレスという遠距離且つどこにでも放てる便利な代物を持っているのだ。
よって、彼が迎える結末は…
町には、こんなニュースが広まっていた。
『レスワイバーンの討伐に向かったランク4魔狩者パーティ全滅。』
こんなことはクエストでは日常茶飯事だ。
しかし、これが飛び級を検討されていた腕利きの魔狩者だったらどうだろう?
ランク6相当の腕を持つ魔狩者がランク4のレスワイバーンに全滅させられたのだ。
これはギルドに深く関わっていなくても驚くほどのニュースだ。
事実、このニュースを耳にした俺も酷く驚いた。
この魔狩者のパーティ『フレイガード』には憧れていたからだ。
恐らく、リトルハーブに所属する魔狩者の9割が注目したいただろう。
このニュースにはエミもユウキも驚いていた。
そして、3人でその話をしながら市販のパン(お世辞にも美味しいとは言えない)を食べていた。
そうそう、ユウキは忘れていたようだが、俺は今日から片手剣の稽古を始める。
レスワイバーンが討伐されていいない以上、仕方がないことだ。
そして、いきなり驚いた朝をすごし、今はコーワンのもとで例の片手剣使いを待っていた。
「悪いな、今朝ドーガを出発したらしいから、到着は午後になっちまうんだ。
それまで片手剣の基礎知識でもつけておいてくれ。」
と、片手剣入門といういかにも初心者向けの本を渡されて、今ちょうど半分くらいまで読んでいる。
入門と書いてあるくせになにげに書いてあることが多い。
それから小一時間ほどたち…
「ごめーん、遅くなった!」
どうやら、俺の教習役がご登場のようだ。
「お、来たか!約束の物は用意できているぞ!」
「おー!ありがとう!じゃあ、代金の30S!」
「毎度あり!で、頼みがあるんだが。」
「大丈夫!無償でやったげる!
って訳で、よろしくねタカミ君!」
「え、あ、はい!よろしくお願いします!」
「うん、よろしく。」
「んじゃまぁ、お互いの紹介と行こうか。
まず、タカミ。
手紙で知ってるだろうが、人族の両手剣使いだ。
が、片方を無くしたので片手剣の使い方を教えてやって欲しい。」
「どうも」
「うん!」
「で、こっちが…」
「わたしはクリスター!よろしくね!」
「はい。」
「ていうか、そんなに畏まらなくて良いよ?
肩こっちゃうから私語でOK!」
「そうか?じゃあ、そうさせてもらうよ。」
そうして、お互いの紹介を終え、片手剣のレッスンが始まった。