2人から3人へ。
千尋、
千尋の娘すみれちゃん
友紀は
カラオケに来た。
1時間の約束で
入店した。
すみれちゃんから
歌い始めた。
流行りの
女の子グループの歌、
彼女の好きな
男性グループの歌。
千尋も友紀も好きな
グループだ。
千尋の歌は
友紀が千尋が歌う
歌の中で好きな歌を
数曲。
友紀は
すみれちゃんが
知っていそうな曲を。
楽しく歌った。
千尋が少し
涙を流す。
失恋の事が…。
友紀は涙を拭おうと
した。
ティッシュを
その手から受け取り
自分で…、
すみれちゃんの前、
精一杯の…。
友紀は胸が痛かった。
あっという間に時間。
まだ延長を
千尋は望んだが
友紀は帰ることに。
駐車場までの
200メートル程を
3人並んで歩く。
カラオケでは
千尋と友紀の間に
すみれちゃんが
座り
距離があった。
帰り道は
千尋の隣に。
足元がさらに
おぼつかなかった。
車の後部座席に
2人をエスコート。
シートベルトもとめた。
「さぁ、帰ろう。
遅くまで
ゴメンね。」
友紀はそう言うと
車を出した。
「道、教えてね。」
なんとなくは
覚えている、
すみれちゃんに
2人が
よく逢っていること
を悟られたくない
千尋の事を思った。
千尋の案内で
家のすぐ横に
車を着けた。
「すみれちゃん
遅くまで
ゴメンね。 学校、
楽しく
行きなね。
お母さん
頼むね。
おやすみ。」
「おやすみ。
ここで見送るから
さぁ、行って。」
千尋がすみれちゃんと
並んで手を振る。
嬉しかった。
でも、2人が玄関に
入るまで見届け
たかった。
外は寒い。
2人が風邪をひくと
思い車を出した。
角を曲がり、
車を停め、
家のそばに戻った。
「おやすみ。」
何やら仲良く話しながら玄関に向かう2人の
背中に声をかけた。
びっくりして
振り向いた2人が
近くまで戻って来た。
「何してるの?」
「見送りたくて…。」
「嫌い…。」
「いつもそうなの、
お母さん、
男の人を
こうして
見送るの…。」
友紀は複雑だった。
「車はどうしたの?」
「曲がったところ。」
「もう…。
嫌なの、
見送られるの。」
「わかったから、
ここで…。
走って車に行くから
じゅあ、
ありがとう。
おやすみ。」
そう言って、
手を振って走り出す。
角で振り向いて
また手を振った。
角を曲がった。
また引き返した。
千尋とすみれちゃんが
また楽しそうに
話しながら家に
入る後ろ姿を
見送った…。