三、ルール
「は?恋の遊び?」
「そ。惚れたら負け。惚れさせたら勝ち。簡単だろ?」
二カッと笑う。簡単なのはきっと、青田の頭だと思う。
まほこと美華は青田から目を離し、元木と坂下を見る。二人の表情は一緒。きっと言いたい事も一緒。
(お前らも馬鹿なのか?)
坂下と元木が口を開く。
「まぁ、簡単に言えば青田が言った通りだ」
「坂下、俺がルール説明するよ。まず1、予定期間は一ヶ月。2、残りの五人はゲストとする。ゲストには企画の事を話してはいけない。3、ゲストでない場合は告白を受けた時点で勝ちとする。4、ゲストの場合は告白を受けた、または告白してOKをもらうと勝ち。5、ゲストでない相手には、それぞれに対し一回だけフェイントの告白が出来る。フェイント告白の時は証拠になるように誰かにメールでそれを伝えておく」
「ちょっと待って。3と5って矛盾しない?」
「告白を受けて自分も惚れたと思ったら、返事の変わりに告白仕返す。もしフェイントだったら、その時点で負け。本当だったらカップル成立。ただし二人とも負けな。告白の返事として、フェイント告白をする事は出来ない。どう?」
「うーん。何となく分かった」
簡潔に言うと、かけひきを駆使して、相手を惚れさせれば良いらしい。
「でも、何の意味があるわけ?」
美華が最もな事を言った。
「特に意味はないよ。だって暇つぶしの企画じゃん?負けた奴には何か罰ゲームさせるつもりだけど。敢えていうならプライドのために」
元木は言い終えると、食事を再開し始めた。青田と坂下もそれに続く。
まほこと美華はお互いに顔を合わせて、この企画に本当に参加しても良いものか、考える。
しかし、まほこの答えはもう決まっていた。
「で、参加すんの?」
「もちろん」
「あたしも。面白そうだし」
まほこと美華の参加が決定した。
あとはゲストとなる五人だ。ゲストには企画の内容を説明する必要がないので勝手に決める事が出来る。ただし、皆が知っている人という条件だ。同じ学校の人なら誰でも良いという事になる。
女子で名前が挙げられてのは、相川夏妃、高澤沙衣、河本友希。夏妃はクラスの中心にいる正統派人気者だ。不良なまほこと美華とはあまり縁がない。元木が夏妃の名前を挙げた時に、少しだけイラッとしたのは秘密。友希の名前を言ったのも元木だ。友希は女子のまほこから見ても可愛い。天然な子はあまり好きではないけど、友希はそういう所も良さだと思う。不良じゃないのに、まほこ達とも仲良くしてくれている。そして沙衣の名前を挙げたのは青田。沙衣は男嫌いで、滅多に男子と話さない。更に美人なので男子の間でハードルが高いと言われている子。
「何か、この三人とあたしって、勝負にならない気がするんだけど」
美華が最もな事を言った。しかし戦う相手が違う。
男子はまほこと美華が一人づつ挙げる事にした。美華が挙げたのは片瀬准一。女子の人気者が夏妃なら、男子は片瀬。もちろん格好良いし、元木や坂下と違ってさわやかだ。まほこは誰にしようか迷った。一種の告白大会みたいだ。
「・・・沖田慶」
「あー。沖田ね。良い奴だよな」
沖田は優等生なのに、冗談も言えて、がり勉でもなく、めちゃめちゃ格好良い。不良の元木達も沖田を認めている。
これで参加者、ゲスト含めて全員同じクラスだ。
「企画スタートは来週からな。ルールは守れよ」
企画が始まる前にすでに敗者がいる事は、秘密。