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第一章第八話
私は出がけに江田課長に聞いた。「Nさんの話ではR社も買いに来ているらしいです。」「何っ、本当の話か、それは。だったら絶対に負けるな。おまえにここまでのアドバンテージをやるから。ここまではおまえの裁量で決めていいよ。それ以上になるようだったら連絡くれ。」江田課長が私に示した価格はかなり強気な数字だった。私は電車に飛び乗り、Nさんの事務所に向かった。小一時間して、Nさんの事務所のある駅に着いた。Nさんの会社は駅から五分ちょっとだ。もうすぐ日が暮れて、少し涼しくなるだろう。これからタフな交渉が始まろうとしていた。