33/95
第二章第七話
私は大きく息を吸って、会社で作ってきたこの辺りの地図を眺めた。やはり昨日江田課長と打ち合わせをしたとおり、現地に一番近くて、一番新しい計画の影響を受ける現地北側の戸建てから、説明に廻ることにした。北側の家はでかい立派な戸建てだった。私は門扉の外にあるインターフォンを鳴らした。はい、と品の良さそうな女性の声がした。「無限不動産の南と申します。」「うちはマンションは要りません。」と女性は答えた。「いえ、マンション販売の営業ではなくて、今度、こちらのお宅の南側の土地に作るマンション計画の説明に参ったのですが。」「エェッ、ちょっとどういう事、玄関に行くから、詳しく話してください。」予想していたとおりの怒り心頭の声だった。