第三十七話 水を探せ ダウジンガーに おれはなる!
ふでちゃんも「このへん」とは教えてくれるけど、
じっさいどこってまではいかないんだよなぁ。
筆「今はまだダメです」
うーん……よし、こうなったら未来の俺が妄想していた
“可愛い女の子と二人で遭難して水を探すために
ダウジングを披露してモテようとした妄想”を思い出すか。
そのとき覚えた(適当)ダウジングを披露してしんぜよう。
ダウジングちゅーい。いいか、条件書くぞー。
① 水脈は“動いている水”に反応する
② 湿地帯は“偽反応”が多い
③ Y字の木の枝を使うこと
④ 歩きながら探るのが基本
⑤ “交差する水脈”が最強ポイント
⑥ 地面に耳を当てるのは実在する技術
⑦ “外れ”が多いのがリアル
異常だ。いや、以上だ。
……いやこれ無理じゃね?
ここ湿地よ? 今渇水してるけどさ、地下って結構そのままでしょ?
駄菓子菓子、諦めたらそこで試合終了ですよ?
やるしかねえよなぁ。
あふん 足取られてこけた
あふん 地面に耳あててみたけど何もきこえぬぇ
あふん 棒きれふりまわしてたら手の皮むけた
あふん 歩き回ってたらどこ調査したかわかんなくなった
あふん 手がうごいてるのか棒がうごいてるのかわからん
あふん もうこれこっくりさんでいいんじゃねえか?
あふん 村人の眼がだんだん白く
あふん 逆にテンションあがってきたな 踊るか
あふん 踊る大捜査線というか棒
あ、ここ……なんかある。
なんか……え、なんだこれ……お通じ4日ない女性のはらみたいな気配。
まじかー。
あーでもこれ、ちょっと掘らんとあかんな。
しかもそっちはおれの力反応しちゃダメなやつかぁ。
村人にがんばってもらうかぁ。
空海さまは、枝を手にして村の外れへ歩き出した。
最初はただの歩みだった。
だが、次第にその動きは不思議なものへと変わっていった。
枝が左右に揺れ、空海さまの足取りも変わる。
時に跳ねるように、時に沈むように、時に旋回するように。
「……舞っておられる……」
誰かがつぶやいた。
空海さまは地面に耳を当て、また立ち上がり、
今度は反対方向へ歩き出す。
「地の声を……聞いておられるのだ……」
足がぬかるみに沈み、空海さまは体勢を崩しかけた。
だが、すぐに踏みとどまり、枝を高く掲げた。
「おお……! なんという御業……!」
村人たちは息を呑んだ。
空海さまは、まるで見えない何かと対話するように、
静かに、しかし確かな動きで地面を探っていく。
やがて、空海さまは立ち止まった。
「……ここだ」
その声は、村の空気を震わせた。
村人たちは言われた場所を掘り始めた。
だが、疫痢で弱り、渇水で喉も乾き、体力は限界だった。
一メートルほど掘ったところで、鍬が固いものに当たった。
「……岩だ……」
「もう無理だ……」
「これ以上は掘れねえ……」
誰もが膝をついた。
そのとき、空海さまが静かに穴の縁に立った。
袖の中から、金属の光を放つ法具――独鈷杵を取り出す。
村人たちは息を呑んだ。
それは祈りの道具であり、魔を砕く象徴でもある。
空海さまは独鈷を両手で構え、静かに目を閉じた。
風が止まり、空気が震える。
マントラだった。
次の瞬間、空海さまは独鈷を真下へ突き立てた。
無駄のない、ただ一点への動き。
まるで雷が落ちたような、鋭い直線。
“ボコッ”
岩が割れたような音がした。
土の隙間から水が滲み出した。
「……水だ……!」
「水が……出た……!」
「空海さま……!」
水は最初、細い糸のように滲み出ていた。
だが、岩の割れ目が広がるにつれ、勢いを増していく。
空海さまは独鈷を引き抜き、静かに言った。
「障りは砕けた。あとは……水が通るだけだ」
村人たちは、その背中を見つめた。
あの日、空から落ちてきた泥まみれの坊主が、
岩を割り、水を呼び、村を救った。
誰もが確信した。
――この出来事は、必ず語り継がれる。
――これは、伝説になる。
いやー、村人がんばった。
道具も無いのに1メートルも掘るとか、すげえな。
掘ってみたら案の定、便秘じゃねえかこれさもうさ。
ここはひとつ、アレの出番か。
じゃじゃーん、どっこいしょ。
こいつにマントラぶちこんでーっと……あらふしぎ、槍のように。
そこでーーイメージするのは最強の自分。
時は幕末、新選組の隊長として……そう、あの技、牙突。
穿て、ゲイボルク(違う)
とぅ ぶちゅ ぶちゅ ぶぼぼぼぼぼぼぼ
きたない(確信)
まあちょっと待てば水出んだろ。
出た。あれなんか光ってねこの水。まあいいか。
なんかこの水村人が飲んだら、病気なおってんですけど。
なんで?
いやほんと、なんで?
なおったもんはしゃーないな。
誰も困らないし、うん。
さて、これでふじさんの依頼は完了かなっと。
筆「井戸として整備しておくことをお勧めします」
おおっとなるほど。ため池じゃなくて井戸か。なるほどな。
かくして、村は救われた。
あの日、空から落ちてきた一人の僧が、
疫痢に沈む村に足を踏み入れた。
村人たちは、ただ必死に掘った。
道具もなく、力も尽き、岩に当たり、膝をついた。
それでも、空海さまの言葉を信じて掘り続けた。
そして、空海さまは静かに独鈷を構え、
祈りとともに地へ突き立てた。
岩は割れ、水が湧き、光が差した。
その水を口にした者は、次々と立ち上がった。
熱が引き、苦しみが和らぎ、命が戻っていった。
誰も理由はわからなかった。
ただ、救いがあった。
空海さまは言った。
「水が正されれば、病も去る」
その言葉の通り、村を覆っていた疫痢は静かに消えていった。
村人たちは、湧き出した水を囲み、
井戸として整え、祈りを捧げた。
あの日の出来事は、語り継がれることとなる。
――空から救いが降りてきた、と。
――空海さまが岩を割り、水を呼び、村を救った、と。
その井戸は「西の井」と呼ばれ、
やがてその地は「西新井」と名を変えた。
救いは確かにあったのだと、
人々は今も語り続けている。
第三十七話
水を探せ ダウジンガーに おれはなる!
おわり
次回 第三十八話
因果は巡るよどこまでも
なんでもかんでも私のせいにするんじゃない(孔明)




