第三十五話 パワハラからのエスケープ はしれ空海 君は 逃 げ 切 れ る か?
奏上
このたびの祈雨の務め、
身を削りてこれを果たし候。
されど、近頃の御沙汰、
「空海ならば何でもできる」
との風聞、いよいよ過ぎたるものにて候。
僧といえども、限りある身。
雨を呼び、風を鎮め、
地を清めよと次々に仰せつかるは、
もはや耐えがたき重荷にて候。
つきましては、
この身ひとたび俗務を離れ、
心を鎮め、道を正すため、
しばし旅に出たく存じ候。
行き先は、定めず。
風の向くまま、雲の流るるまま、
ただ己が心の在り処を求めて歩むのみ。
ゆえに、行方は問われぬよう願い奉る。
これは逃避にあらず。
修行にして、探求にして、
再び国に尽くすための“間”に候。
当面の勅務、辞退申し上げ候。
空海 拝
ぬっふっふ。
どうじゃこの完璧な
「探さないでください」「自分探しの旅に出ます」
ダイナミック辞表は。
やっぱおれ天才~~。
筆「あなた憑かれてるのよ」
そうなんだよね。もう疲れちゃってさあ。
旅の支度してるときって、旅してるより楽しいよねって
なんだか虚しくなってきたな。
よしここはひとつ、この前覚えた呪法の練習でもしてみるか。
なんだかんだいって魔法って使ってみたいよね? ワカルー。
えっと確かここをこうして、この小指が風だからえっと、こうすると――
筆「あなた様、空が発動します。とめてください」
え? え? え?
辞めよう無謀運転――じゃねえええええええ!!
ここどこおおおおおおおおおおお!!
それは全であり空であり現世であり幽世であり隠世でもある。
それは悟りの世界でもある。
なになになに!?
おいちゃんとうとう賢者になっちゃうのぉぉぉぉ!?
筆「だれかきます」
ハイハイハイ、コンニチワ、オヒガラモヨク。
……って、なんかデカイゾー?
ああ、ふじさんでしたか。なるほど。
空海と申します。よろしくお願いします。
ハイ、オネガイですか?
いや、ワタシツカレテマシテ。
エエ、ハイ、ウケタマワリマス。
東の地にて水が滞って世相がよろしくない?
それの解決ですね?
ワカリマ(投げやり)
ああああああああああああああああ(落下中)
せめてちゃんと現世にもどしてほしいなぁ……と、
切に願う空海であった。
第三十五話
パワハラからのエスケープ
はしれ空海 君は 逃 げ 切 れ る か?
おわり
富士山なのか富士さんなのか。
次回 第三十六話
東京って いまは まだ ない
というか ぬまじゃんここ




