第二十五話 派遣でも偉い人 正規雇用でも偉くなれない人 神も人も変わらないな
大規模ため池改修工事
project ×(エックスではなくバツ)
その池は、幾度となく決壊した。
讃岐の民を苦しめ続けた満濃池。
その大改修を前に、現場には数々の難題が立ちはだかっていた。
まず、現地の豪族たちとの対立。
池の水利権をめぐり、誰もが自分の領地を守ろうと声を荒げる。
工事の開始すら許されぬ空気が漂っていた。
集められた人足たちもまた、問題を抱えていた。
命令は聞く。しかし内容が理解できない。
「堤を締めろ」と言われても、どう締めるのかが分からない。
技術監督は頭を抱えた。
資材もまた、思うように集まらない。
足りない土、余る石。
運んだはずの木材は、いつの間にか豪族の蔵へと消えていく。
ちょろまかしは日常茶飯事だった。
追い打ちをかけるように、天候が荒れた。
長雨が続き、工期は迫る。
堤は崩れ、作業は遅れる。
焦りだけが現場に積み重なっていった。
混乱、対立、誤解、焦燥。
工事は、始まる前から崩壊寸んだった。
そのとき、ひとりの男が現れる。
遍照金剛・遍照金剛。
護摩壇の炎を背に、彼は静かに言った。
『明王を遣わす。
この現場、必ず成し遂げる。』
満濃池大改修。
その裏には、知られざる戦いがあった。
――そしてまた新たなる問題が。
飯つき、給与つきの現場にしたところ、
終業の鐘が鳴っても、誰も帰ろうとしない。
「働けば飯が出る」
「働けば金が出る」
人足たちは夜になっても作業を続けようとした。
エーックス。
いやなんだこれどうすんだよこれ。
いやまじでさ、筆ちゃん大丈夫なのこれ。
筆「明日、朝から貴方様の手で変わるのです。変わるのです、人の世の理が」
え?なにそれ聞いてない。
まじで。まじだった。
──翌朝。
筆「そこの中心に立ってください。そして昨日のカンペを迫真の演技でお願いします」
うっしゃ。それは得意だ。
それしかできないとか言っちゃらめぇぇ。
――演説開始。
皆の者、よく集まってくれた。
ここに立つ遍照金剛、今日よりこの満濃池の改修を統べる者である。
まず言おう。
この池は、ただの池ではない。
讃岐の民の命をつなぐ器であり、国の基を支える柱である。
これが壊れれば、田は枯れ、民は飢え、国は揺らぐ。
ゆえに、この工事は誰か一人のためではない。
ここにいる全員のためであり、讃岐のためであり、日本のためである。
だが、皆も知っていよう。
この現場には、すでに多くの障りがある。
豪族たちの争い。
人足たちの不安。
資材の不足と横流し。
技術の伝わらぬもどかしさ。
長雨、迫る工期、尽きぬ焦り。
これらは、誰か一人の力でどうにかなるものではない。
だが、皆の力を合わせれば、必ず越えられる。
私は、護摩を修する者である。
炎をもって煩悩を焼き、祈りをもって道を開く者である。
この護摩壇は、ただの火ではない。
ここから、我らの力をひとつに束ねる。
今日より毎朝、私はこの壇に火を入れる。
その炎を通じて、明王を遣わす。
危険を断ち、混乱を鎮め、皆の働きを守る者たちだ。
だが、明王だけでは工事は進まぬ。
必要なのは、皆の力だ。
人足よ。
お前たちの手が、この池を形づくる。
技術者よ。
お前たちの知恵が、この池を支える。
役人よ。
お前たちの調整が、この池を守る。
豪族よ。
お前たちの協力が、この池を未来へつなぐ。
そして私は、皆の力をひとつに束ねる。
ここに誓おう。
この池、必ず完成させる。
誰一人欠けることなく、無事に家へ帰す。
そのために、私は炎を焚き、明王を遣わし、祈りを尽くす。
皆の者。
今日より、この満濃池は我ら全員の現場である。
共に働き、共に乗り越え、共に成し遂げよう。
――さあ、始めるぞ。
うぉぉぉ、すげええ。
熱気すげええ。
有明のあのイベントみてえだ(令和脳)
筆「さあ、この梵字で色々やった木をその炎にくべて、召喚のマントラを」
南無大日遍照金剛
我、護摩の炎をもって請ず。
ここに梵字を刻みし護摩木を捧ぐ。
この木は迷いを断つ刃、この火は危険を焼く智慧。
不動明王よ、五方の守護者たちよ。
東・南・西・北・中央、五つの位より来たれ。
されど今日は戦のためにあらず。
怒りの剣を振るうためにあらず。
来たれ、現場を守る者として。
来たれ、危険を断ち、混乱を鎮める者として。
一体は足場を守れ。
一体は重機の動きを見よ。
一体は人足の身を守れ。
一体は資材の流れを正せ。
一体は天候の兆しを見極めよ。
五体の不動よ、我が炎に応じて姿を現せ。
その眼は千里を見通し、その手は災いを払い、
その足は揺るがず、現場を支える柱となれ。
我、遍照金剛・遍照金剛が命ず。
この工事、誰一人傷つけることなく、
この池、必ず完成させるために。
今ここに、五明王、来たれ。
――奇跡が起きた。
まさしく神の奇跡。
まあ、日雇い派遣だけどね★
よっし、盛り上がったので今日の安全確認やって始めるかー。
――炎、上がれ。
(護摩壇の炎が轟と立ち上がる)
この炎は、ただの火ではない。
危険を照らし、迷いを焼き、我らの働きを守る灯である。
まず、現場の気を整える。
五体の不動よ、位置につけ。
(不動明王たちが静かに配置へ散る)
東、足場――異常なし。
南、重機――動線よし。
西、資材――流れ正し。
北、人足――気、整いし。
中央、天候――兆し、見えたり。
よし。
今日も誰一人欠けることなく、
この池を一歩、完成へと近づける。
危険を見たら止まれ。
迷いを感じたら声を上げよ。
仲間の動きに目を配れ。
そして、己の身を守れ。
我、遍照金剛・遍照金剛がここに立つ限り、
この現場に災いは寄せつけぬ。
――全員、心をひとつに。
安全確認……
ヨシ。
よーし、あとはおれ、ここで踊ってるだけで終わるんだー。
あとはもう筆ちゃん管理監修の行程プログラムどーりに進むだけだしねえ。
初日を乗り切ったヘンジョー。
日雇いっ派遣っ。
次回 第二十六話
全話のタイトル全然回収してないから今回もソレでおなしゃ
改修作業だけにな★




