助けを呼べば守ってくれる! ──正義のヒーロー雨宿りーマン
会社帰りに、あたしはそいつと出会ってもーた。
「うひゃひゃひゃひゃ! 会社から直帰はさせへんでぇ〜っ!」
あかん……。怪人『ゲリラゴーウ』や……。いきなり猛烈な雨降らして、徒歩で帰宅するもんを途方に暮れさす……いやダジャレやないで?
「女! どーせ帰りに頓堀の立ち呑み屋で一杯やって帰ろ思うてたんやろ? そうはさせるかいな!」
なんてイケズな怪人なんや……。
OLのささやかな楽しみ、邪魔すんなや!
このまま走って難波のアーケード街に駆け込もうか思たけど、地面に圧しつける勢いの雨に負けて、地べたに手をつき倒れてもうた。
こないな時はアイツを呼ぶのが一番や!
「助けて! 雨宿りーマン!」
「はいなーっ!」
昭和のサラリーマンみたいなアイツが飛び出した。
「ワテがなにわの雨宿りーマンでっせぇっ!」
雨宿りーマンはまるで潰れたタバコ屋の軒下みたいに展開し、あたしを守ってくれた。
「ククク……。いつまでもつかな?」
ゲリラゴーウがさらに雨を強くしよる。
「ワイの雨があんさんの軒をへし折るか、あんさんの軒が令和の時代までもつか──勝負や!」
「フンッ! ワテの防御力を舐めたらあきまへんで!」
雨宿りーマンはあたしを守って吠えた。
「必殺! 超大型軒下!」
軒が伸びて、広がって、あたしを少しも濡らさんよう、守ってくれる。
頼り甲斐あるわー……
そない思てたけど──
いつまでも戦いは終わらんやった。
あたしはハナクソをほじりはじめながら、ツッコんだった。
「なんやアンタ、守るだけかいな。攻撃はどないしてん? 攻撃こそ最強の防御とか言うやろ」
「ワテには守ることしかでけへん!」
力を込めて、雨宿りーマンは言うた。
「姉さんを意地でも守り抜きまっせぇっ!」
「フハハハ! ワイの雨足が弱くなるのを待っとんのやな?」
ゲリラゴーウの元気さが衰えへん。
「甘いわ! ワイの生き甲斐は庶民のささやかな幸せを邪魔することなんや! ワイの寂しさ、思い知れ!」
あたしはスマホを取り出すと、芦澤に電話した。
「──あ、芦澤ー? 悪いねんけど今すぐクルマで迎えに来てー? うんうん、ゲリラゴーウに出会ってもて、帰られへんねーん」
迎えに来てくれた芦澤の赤いデミオに乗って、あたしはその場を離れた。
雨宿りーマンとゲリラゴーウはいつまでも戦っとった。
どっちが勝ったんかは知らへん。
どーでもええもんな。
「姉さん、災難やったな」
優しくそう言うてくれる芦澤の横から抱きついたった。




