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特殊スキルで転落していく人々  作者: 豚煮豚
人の心が聞こえる僕は半魔半人の声が聞こえる

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8

 

 僕には特殊スキルがある。


 それは、人の心が時々見えるというスキルだ。


 これはもう本当に時々でしかない。

 見たいときに見れるわけじゃないから地味に面倒だ。


(うわ、このスペードとかいう男キモ)


 とかね?僕の名前ね?スペードは。


 しかもこれは僕が好きだった相手から思われたことだ。


 そのときのショックといったらもう、その場で泣き崩れるかと思ったくらいだ。


「あの、おはようございます!」


「おはよう!今日もよろしく!」


「よろしくお願いします!」


 そんな僕は特にこの特殊スキルを活かすことなく普通に暮らしていた。


 というか、活かす機会なんて今まで一度もなかった気がする。


 ショックなことばっかりだった。

 なければよかった、と何度も思った。


「おい!廊下にゴミが落ちてたぞ!」


「す、すみません!清掃が行き届いていなかったようで!」


「コッチは冒険者だぞ!?快適な空間を用意するのがお前たちの義務だろ!」


 冒険者たちが集うホテルみたいな巨大な宿で働いていたのだ。


 冒険者っていうのは粗暴な人が結構多い。


 だから、ここでの仕事は割りと地獄に近かった。

 なんにも楽しくないのだ。


「今日もお疲れさま」


「あ、ありがとうございま――」


(全く、今日もクレームがあったよ。この無能が)


「……す」


 なんでこんな聞きたくもないことを聞かないといけないんだ。


 仕事が終わって上司と話しているとそんなことを言われた。


 いや、思われた。

 責めることもできなくて、ただただ虚しいのだ。


「どうかしたか?スペード」


「い、いや、な、なんでもないです」


「そうか。まぁ、気をつけて帰れな?外はもう暗いから」


 いい人ぶって。


 本当は僕のことを無能だと思ってるクセに。


 そんな宛先のない不安を抱えたまま帰り支度をする。

 こんなスキル、なければよかったのに。


「……おつかれさまでした」


「おつかれ」


(はぁ……俺はまだ仕事があるってのになぁ。楽な身分で羨ましいわ)


 心の声なんて聞こえないフリをしながらホテルの外に出た。


 すると、外には小雨が降っている。


 傘なんて持ってきてないよ。

 濡れることがわかりながら、通りへと出た。

 すると、不思議な老人に話しかけられる。


「お主、ちょっといいか?」


「え、な、なんですか?どなた?」


「ワシのことはいい。ほれ、とりあえず傘でも使え」


 そう言って魔法使いみたいな服を着た老人は僕に傘を渡した。


 どうして傘を二つも持ってたんだろう。


 というか、どうして僕に話しかけてきたんだろう?


「ど、どうしたんですか?なにかありましたか?」


「お主、特殊スキルを持っているな?人の心がわかるというスキルを持っているだろう」


「え?いや、そんな……」


 僕はこの力のことを両親以外の人には言ったことがない。


 だって、そんなの気持ち悪すぎるからだ。


 自分の考えていることはわかる人なんて気持ちが悪すぎる。


「……もしかして、両親の知り合いとかですか?」


「そうじゃ。お主の両親と関わりがあってな。ちなみにこれは嘘ではないぞ?心が読めるお主の前で嘘をつくほどバカではないからな」 


 僕は両親が勝手にこの能力のことを言っていたことにショックを受けた。


 解決してくれようとしたのかもしれないけど、悲しい。


 もしも他の人にバレたら嫌われるのは僕なのだ。


「たしかに……たしかにそれはそうですよね?僕のスキルのことがわかってるなら、嘘なんてつかないですよね?」


「そうに決まっているだろ。だから少しは信頼して話を聞いてくれないか?」


「……話、話だけなら……」


 まだこの人がどんなことを考えているのかはわからない。


 まだスキルは発動してないけど、でも、この人が今言ったことは正しいと思う。


 だから、信用していいのかな?


「であるならばこっちへ来い。こんな雨の中で話すのは大変だろう」


「どちらへ向かうんですか?」


「ワシの家だ。なぁに、心配する必要なんてどこにもない」


 僕は怪しい老人に着いていくか迷った。


 でも、両親のことを信じて着いていくことにした。


 きっと、二人は本当に親しい人にしかこのことを話していないはずだ。

 だったら僕が知らないだけできっと関係が深い人なんだろう。


「あの、ちなみに両親とはどういう関係ですか?」


「お主の両親は冒険者同士で出会ったのだったな。そこで一緒にパーティーを組んでいたんだ。それで、お主のことは小さいころから知っておる。

 オムツを替えたことすらあるのじゃぞ?どうだ?お主の前でこんな嘘を着くわけがないじゃろ?信用してくれたか?」


「……そうですね。じゃあ、着いていってみます」


 この人の言う通りではある。


 たしかに嘘かどうかがわかる僕のまでこんなに大胆に嘘を着くわけはない。


 でも、こんなときに限ってスキルは発動してくれない。

 本当に信用していいのかはまだわかってない。

 けど、話を聞くだけならいっか。

 知り合いなのは間違いなさそうだし。


「あの、どんな話をするんですか?」


「そう焦るな。内密にしたい話だからここでは話せん」


「内密に?」


「お主の人生を逆転させることができる話じゃ。聞きたいじゃろう?」


 え?


 僕の人生を逆転させる?


 僕は急に興味が沸いてきた。

 だって、こんな人生にはもうこりごりだったからだ。


他にもたくさん同時連載してます!

もしよかったらみてみてね?

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