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特殊スキルで転落していく人々  作者: 豚煮豚
物の声が聞こえる俺はギャンブルにおいて最強だった

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「お客様、もう賭けることができるチップがありませんよ」


「……な、な、なんで……なんでなんだ……」


「残念だな。これからはちゃんと自分の身の丈を知れよ」


 ブラックジャックを終えた俺は思考が停止しそうになっていた。


 ブラックジャックなんて運の要素がほとんどのゲーム。


 それに一度も勝つことができなかったのだ。

 全ての選択肢を間違えてしまった。

 そんな、無様な俺は隣の席の男に慰められる。

 クソ!……声が聞こえていればこんなことにはならなかったはずなのに……


「もしお客様が望むのであれば借金をすることもできますが、いかがいたしましょうか?」


「……た、たのむ、それで頼む……」


「バカ、そんなことをする余裕なんてお前にはないはずだろ。あんまりここでアコギなことするなよ?」


 俺は借金をしようとした。


 しかし、隣の席の男がそれを止めた。


 なんだよ、俺は金を借りるって言ってるのに……


「すっからかんになっただけだろ?まだやり直せるさ。だから、今日はもう帰れ」


「……な、そんなぁ……」


「では、お客様を出口まで案内させていただきます」


 放心状態だった俺はカジノスタッフに無理やり席を立たされる。


 なんで、これが聞こえなくなって。


 なんで、俺の金が……なんで……


「……ひ、ひっぐ……うわぁ……なんでだ……うわぁぁぁ……!!」


「ちゃんと真人間になってやり直せや。まだ若いんだからな」


「お客様、こちらです。本日は誠にありがとうございました」


 チクショー……


 チクショー!!


 なんなんだよ本当に……


「では、またのご来店をお待ちしております」


「……」


「まぁ、もう来なさそうですね」


 俺は廃れた酒場に一人取り残された。


 どうすればいいんだよ。


 全財産使ったんだぞ?


 もう仕事もなくなるかもしれないんだぞ?


 それに、物の声も聞こえなくな――


(ダイヤー!泣かないで!)


「はぁ……?」


(ダイヤー!お金よりも大事なものがあるよ!笑って~)


 なんなんだよ……


 なんで今になって……


 チクショー……


(あぁ!もっと泣いちゃった!)


「ひ、ひっぐ……あぁ、そうだな……そうだったよな……これでよかったんだ……」


(ダイヤ!!僕たちはみんな、ダイヤのことが大好きなんだよ!!だから大丈夫なの!!)


「……ありがとう……本当にありがとう……」


 よかった。


 みんなの声がまた聞こえるようになってよかった。


 お金なんて必要なかったんだ。


 あぁ……でも、まだ立ち直れそうにはないよ。


 ―――――


「はぁ……めんどくせーな」


(ダイヤ!おはよう!今日もガンバってね!)


「あぁ、ガンバるよ」


 それから数日が経った。


 当たり前だが、仕事はクビになっていた。


 それに、やっぱり金はどこにもなかった。


 もうすぐで家賃の更新があるが、待ってもらうことになりそうだ。

 それがダメなら、どっかに引っ越さないとな。

 安いところに引っ越さないといけないな。


「で?前の仕事はどうしてクビになったの?」


「まぁ……それはその……」


「言えないような理由なの?なるほどね」


 面接に来たが、面接官の態度は冷たい。


 俺の経歴なんてなんにもいいところがないからな。


 それに、ここは俺には少し高めの場所だ。

 今の俺には届かない場所だ。


(ダイヤ!まだ大丈夫!絶対になるとかなるはず!)


「そうだといいな。まぁ、ガンバってみるよ」


(やったー!ダイヤが前向きだと嬉しい!)


 先に引っ越し先でも見つけておこうかな。


 ここで暮らしていくのはもう止めた方がいい気がする。


 別の場所で、また新しい気持ちで頑張りたいと思っていた。


「お!お主!久しぶりだなぁ!」


「あ……ジジイ……」


「ジジイとはなんじゃ、ジジイとは!どうじゃ?アレから、ブラックジャックは勝てたか?」


 街を歩いていると目の前にあの例のジジイがいた。


 なんだかフランクすぎて普通に話しているが、そんな関係じゃない。


 俺はこのジジイを恨んでいるはずだった。


「負けたよ。まぁ、でも、いいよ」


「そうか!それならよかったわい!」


「そういえば、そういえばどこで俺の特殊スキルのことを知ったんだ?そんなのお前にわかるわけがないだろ?」


「お前とはなんじゃ!ワシにもソウギという名前があるのじゃ!」


 名前すら知らない男に着いていってたんだな。


 まぁ、バカな人間だよ。


 それも仕方がないかもしれないがな。


「で、ソウギさん。どうして俺のスキルのことを知っていたんだ?」


「まぁ、ワシはそういう特殊スキルを持っておるんじゃ。そういうことにしておくれ」


「そういうこと?」


「そうじゃ。だって、特殊スキルもなしに人の秘密がわかるなんてあり得ないじゃろ?他人の秘密というのは常にその人物と神のみぞ知るものじゃからなぁ」


 よくわかんねぇけどまぁ、いいか。


 本当はもっと言いたいこともあるような気がした。


 しかし、今はこれでいいや。


「また聞こえるようになったじゃろ?わかるぞ?」


「わかるんだな」


「まぁ、今度からは悪いこととかせんようにな。もし仮に悪いことをするにしてもちゃんと覚悟を持ってするんじゃぞ?」


「ダメだろ。悪いことはしちゃ」


「そうかもしれんな!ホッホッホー!」


 変な笑い方をしながらソウギさんは去っていく。


 なんか不思議な出会いだったなぁ。


(あの人神様みたい!!)


「たしかに、神様みたいだったかもな」



他にもたくさん同時連載してます!

もしよかったらみてみてね?

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