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63:窮地からの脱出と暴いてしまった真実ですわ!

 まさかの場所で……という程でもないリッテンベルン宰相の秘密の地下室で当の本人となぜこんな所にいるのかがよくわからない女帝の2人組と対峙する事になったのですが、2人と1体(肉塊)が退路を塞ぎながら圧力をかけて来ている(戦闘態勢に入っている)のが不味すぎますわ。


「人形に変わりがないから無事だという事はわかっていたのだけど、まさかこんな所に潜り込んでくるなんて…そっちにいるのはジオルグ鉱山にいた子よね?まさか本当に生き延びて…手引きしたのはそっちの出来損ない?」


「はっ、どうも、従順な犬じゃなくて申し訳ございませんね…代わりと言っちゃあなんですが、今までの借りを百倍にして返してやるんで覚悟するっすよ!」

 呆れるリッテンベルン宰相に向かってノアさんが吼えていたのですが、女帝の威圧に屈して膝をついている状態では負け犬の遠吠えがすぎますわ。


(リッテンベルン宰相も(女帝)の威を借りるなんとやらではあるのかもしれませんが、何とかしないと(わたくし)よりノアさんの方が厳しそうですわ)

 それほど女帝の圧力が強すぎて……というよりドロリとした聖氣が空間を汚染しているのが目に見えているレベルなのですが、流石に実体化したばかりのノアさんでは抗しきれていないのか苦しそうに顔を顰めていますし、この調子ではなかなか厳しいものがあるのかもしれません。


(幽体のままだったら危なかったもしれませんが、ここまで圧力が強すぎたら五十歩百…ぽぉっ!?」

 威圧感だけで押し込まれていた私達目掛けて女帝が近づいて来たのですが、肉厚なツーハンデッドソード(150cmの両手剣)を片手で軽々と扱いながらフルスイングを叩き込んできまして……聖氣の盾で防ごうとしても易々と破られてしまいましたし、インペール(聖銀製の細剣)で受け止めるも威力が強すぎてまともに踏ん張る事が出来ませんでした。


(おっ、もい…ですわ!?)

 リッテンベルン宰相が連れている肉塊が魔力の妨害をしているのだと思いますが、軟弱なメイド服が引き裂かれながら壁に叩きつけられて息が詰まっているとすぐさま追撃が来まして……。


「させ…ないっすよ!って、ひぃっ!?」

 このままでは手痛い一撃を受けてしまうというタイミングで汚泥のような魔力妨害を振り切ったノアさんが近くにあった雑貨類を投げつけてくれまして……女帝は軽く仰け反るように飛んで来たガラス瓶を回避したかと思うと優雅な回転をみせながらノアさんに矛先を向けていたのですが、ノアさんがその横薙ぎの攻撃をおもいっきり地べたに這いつくばるように回避をしていたりと完璧に遊ばれている感じですわ。


(このままではじり貧なのですが…何か物凄い違和感がありますのよね?)

 女帝が仕切り直すように距離を取りましたし、何かあればフォローに入れるようにリッテンベルン宰相達が後方に控えていたのですが、なぜこの人達は一気呵成に攻撃を仕掛けて来ないのでしょう?


(私達を殺したくない…という訳ではありませんのよね?)

 ここで手加減をする必要がないと思って改めて女帝達の様子を見てみるのですが、リッテンベルン宰相はチラチラと部屋の状態や女帝の様子を気にしておりまして……見られている女帝の方は何かを我慢しているような顔をしていますし、物凄い量の汗をポタポタと滴らせていました。


(女帝は…汗っかきなのでしょうか?)

 媚毒が漂う地下室といってもこの程度の動きでバテてしまうというのも可笑しな話なのですが、もしかしたらこれが女帝の弱点ではないのでしょうか?


(気合と根性で威圧をしているのでなければ女帝も何かしらの上級神躯持ち…と、なりますと、もしかして何かしらの制約がかかっているという事なのでしょうか?)

 私の場合は胸の感度がとんでもない事になっていたり聖乳が溢れてきたりととんでもないデメリットがありますし、女帝も力を振るう代わりにかせられた何かしらのデメリットがあるのかもしれません。


(それなら…なんとかなるかもしれませんわ)

 上手く逃げ延びたらスタミナ面での問題が見え隠れしている女帝達が追いかけてくる事もないと思いますし……。


「どうするっすか?正直この状態だと僕が打てる手も…相変わらず陰険女はやり方が汚いっすね」

 なんて事を考えていたら起き上がって来ていたノアさんがコソコソと話しかけて来たのですが、妨害されている状況だと得意な影魔法も目くらまし程度ですし、上級神躯持ちに対する決定打を持っていないので出来る事が少なすぎるのかもしれません。


「そう、ですわね…」

 私は考えるフリをしながら近づいて来ていたノアさんの手に触れるのですが、ビックリしたように腕を引かれてしまい……その手をギュッと握りしめながら念じてみました。


(ノアさん、聞こえていますか?)


『…なんっすか?』

 小声で喋ったとしてもこの距離ですからね、聴力を強化されていたらこちらの作戦が筒抜けになってしまうのですが……なんとかなったようですわ。


(よかった、パスが繋がったままですわ)

 伝心(テレパシー)、相性のいい人としか繋ぐ事が出来ないのですが、ノアさんとは首輪時代の経験があるので接触しながらだと伝わるようでして……という事で手短に作戦のイメージと戦略を伝えておくのですが、たぶん初手必殺技で突破しようとしたらいくらなんでも女帝達に止められると思いますし、私の腕前(剣術)だと正面突破で押し切るのも難しそうなのですよね。なので準備段階の部分をノアさんに頼ろうとしたのですが……。


『構わないっすけど、こっちはアリシアみたいな出力馬鹿っていう訳じゃあないんで、それ相応の準備時間を貰うっすよ?』


(それは…なんとかしますわ)

 2人……というよりこの場合はリッテンベルン宰相でしょうか?この部屋(怪しげな実験室)では戦いたくない理由があるようですし、時間稼ぎをしようと思えば乗って来てくれる(相手も休憩したい)可能性が高いのかもしれません。


 とかいう訳で女帝の圧力に屈したように俯いてしまったノアさんの準備が終わる前に聞きたい事を聞いておく事にしたのですが、まずは何から聞いておくべきなのでしょう?


「そういえば…鉱山では今度会った時(生き延びたら)にお話をしましょうとか言っておりましたが…あれはどういう意味だったのですか?」

 私が剣先を下ろしながら声をかけると警戒していた女帝も息を吐き出しながら構えをといてくれまして……リッテンベルン宰相は女帝の様子や私達の様子を窺いながら肉塊に指示を出して退路(上への階段)を塞ぎにかかっていたのですが、そのまま襲い掛かって来るといった感じでもないので時間稼ぎに乗って来たという事なのでしょう。


(逃がす気はないけどお話くらいなら…と、いう感じでしょうか?私達にとっても休憩が挟まるのは好都合ですわ)

 女帝の体力が回復したら襲い掛かって来るのかもしれませんが、とにかくノアさんのチャージ時間を稼ぐ必要がありまして……。


(バレないようにだからなのか時間がかかりそうですし、ここはじっくりといかせてもらいますわ)

 出来たら時間稼ぎ中に異変を察したアンジェリカが駆けつけて来てくれたら良かったのですが、この地下室には魔力や気配を遮断する仕掛けが施されているみたいなので望みが薄いのかもしれません。


「さあ…そんな事を言った憶えはないけど?」

 そうして休憩中の女帝を休ませるためにリッテンベルン宰相が口を開いたのですが、彼女は堂々ととぼける事にしたようで……正直に話してくれるとは思っていなかったのでこの件に関してはスルーする事にしましょう。


「まあ…いいですわ、ではかなり根本的な疑問なのですが…なぜお2人はゼブルスの復活を…蘇ったら大陸が大変な事になるっていう事はわかっておりますのよね?蘇らせた自分達だけは無事だなんていうのは幻想で…ふぅっはっはっは!なんて高笑いをしている間にプチって潰されるのがオチですわ」 

 ゼブルスの名前を出した途端、女帝の気配が強くなって言葉を詰まらせてしまったのですが……なんとか自制してくれたようですし、とにかく破滅願望でもなければそのようなモノを復活させようとしている意味がわかりませんわ。


「そんな事…」

 全部わかっていると言いたげなリッテンベルン宰相がイラっとしたのがわかったのですが、どうやら宰相達も好き好んでゼブルスの復活を目論んでいる訳でもないようで……こんな状態でもぼんやりとしている女帝もおかしかったですし、もしかして何かしらの理由や事情があるのでしょうか?


ノルニス(狂った火竜)も徐々に狂っていったようですし、女帝もゼブルスの影響を受けてしまった…という私の予想が当たっていたという事なのでしょうか?)

 逆上せたようにポタポタと汗をかいている女帝の様子を眺めながらそんな事を考えていたのですが、会話が途切れたタイミングで襲い掛かって来られても困るので適当な質問を続ける必要がありますわ。


「そもそもなのですが、どのような理由があっても多くの人から…この大地から魔力(マナ)を吸い上げるのはどうかと思いますし、ただでさえ大変な事になっているところに灰色の(麻薬)まで撒き散らすなんて…そんな物をばら撒いたりしたら帝国がボロボロになってしまいますわ」

 とにかくノアさんの動きを悟られない為にも言いたい事を捲し立てているとリッテンベルン宰相に睨まれてしまい……。


「魔力についてはわたしの独断…灰の方は知らないし、そもそも何も知らない癖に好き勝手…」


「何も話してくれないのではありませんか、伝える努力を放棄し好き勝手な事を言わないで欲しいものですわ!」

 私が胸を張りながら言いきったら何かしらの地雷を踏んでしまったのかリッテンベルン宰相が1メートルくらいの杖を構えまして……お喋りタイムはこの辺りで終了なのかもしれません。


(少し言いすぎてしまったのかしら?ああもう、正直者すぎる自分自身が小憎らしいですわ!)

 リッテンベルン宰相の動きが再戦の切っ掛けとなって女帝も構えなおしたのですが、そんなタイミングで準備を終えたノアさんがパンと手を叩くと妨害を乗り越え部屋いっぱいに暗闇が広がりまして……目くらまし目的の影魔法なので攻撃力は皆無、それでも流石に何かあるのではと女帝達の足が一瞬だけといっても止まりました。


「出来たら長引かせてって言ったっすよね?なんで怒らせているんっすか!?」


「そんな事を言われても困り…ひゃっ!?」

 私はその隙を逃さずジャッジメント・ディザスターのチャージを開始しまして……影魔法による遮蔽効果に守られながら聖氣を集めているとおもいっきりノアさんに引っ張られたのですが、妨害しようと突っ込んで来た女帝の一撃(突き)が私達の居た場所を貫いていきました。


(ギッリギリっですわ!それにチャージ時間が足りませんが…貫く程度ならこれくらいで十分!)

 魔法使いタイプのリッテンベルン宰相は目くらましの魔法に突っ込んでくるという蛮勇を見せずに後方待機を続けていますし、肉塊は影魔法の吸収を行いながら通路を塞ぐ役割に徹していますし……出入り口さえ塞いでおけば袋の鼠で一網打尽と考えているのかもしれませんが、出入口が一つしかなかったら新しく作るだけですわ!


「そういう訳で…ジャッジメント・ディザスターですわ!」

 いくら悪人といっても情状酌量の余地(ゼブルスの呪い?)がありそうな女帝に向かって必殺技を放つのが躊躇われたので天井に向かって打ち込むのですが、至近距離にいたせいで余波に煽られた女帝がよろめきまして……引き裂かれた純白のマントの下から悍ましい肉の下着(触手下着)に苛まれている痛々しい姿が露わになってしまいました。

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