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62:謎の地下室とまさかのエンカウントですわ!

 (わたくし)の華麗なる活躍によって採用担当官を穏便に黙らせた後、ノアさんの感覚を頼りに皇居内をウロウロとしているとあちらこちらで呼び止められてしまったのですが、ディーターさん(偉い人?)とかいう上級使用人っぽい人の名前を出したら皆さん何とも言えない顔をしながら引いてくれました。


「近衛騎士団の…あいつのお手つきかよ、つー事は…やっぱり手を出したら不味いよな?」


「不味いっていうか、ディーターっていうとあれだろ?他人の女は横取りするのに自分の女に粉をかけられたら怒鳴り散らして剣を抜くっていう…しかも一生ネチネチと粘着されて事故死に見せかけて殺された奴がいたっていう噂だぞ?」

 とかどういう人なのかと思ってしまうくらいには評判の悪い人でしたし、そのような人物を雇い続けている事に対する疑問が大きくなっていくのですが、とにかく今はそれよりですわ!


「そういう訳で…急いでおりますので」

 軽く頭を下げながら困った顔をしている彼らの間をいそいそと通り抜けるというファインプレーをみせたり恥も外聞もなく草木の間に隠れたりしながら後宮に居る人達をやり過ごしていきまして……意外と「こんな所に部外者が居る訳がない」と思い込みすぎていると見つからないものですし、良い感じに立ち回れているような気がします。


『う~ん、むしろよけいに大事になっているような気がするんっすけど…ああ、そこを右っす』


(あら、右…ですの?何となく奇妙な感じがしているのは左っぽいのですが)


『ふっふーん、それはわざと魔力的な痕跡を残して感覚の鋭い人を誘導するっていう作戦っすね、で、す、が…本職の目は誤魔化せないんっすよ』

 なんていうやり取りをしながら私の目から見たらどこからどうみてもごくごく普通の倉庫っぽい建物にやって来たのですが、ノアさんが居なければ一生探し回る事になったのかもしれません。


(餅は餅屋ということでしょうか?)


言葉(餅屋?)の意味はよくわからないんっすけど、嫌な予感もするんで気を付けてくださいね』


(わ、わかっておりますわ…っと)

 メイドの標準装備が裸エプロンというよくわからない恰好だったので「よし」と捲り上げる袖がなかったのですが、とにかく気合を入れ直してからノアさんに教えられたとおりの手順で床板を外しまして……ムワっと漂ってくる甘ったるいような媚毒の臭いと微かに混じるゼブルスの瘴気に眉を顰めてしまったのですが、どうやらアタリを引いたようですわ。


(空間が…というより、魔力が拡張されているのでしょうか?)

 まるで地下室から魔力の経路が張り巡らされているような感じがしまして……とにかくここまで来たら「ちょっと迷子に」なんていう言い訳もできないので不意打ち防止のインペール(聖銀製の細剣)を取り出しながら地下への階段を下りて行くのですが、何が待ち構えているのかとドキドキしてしまいます。


『これは…凄いっすね、何かの実験室っすか?』

 警戒しながら降りて行った先にはベルザの地下空洞にも生えていた奇妙な植物が生い茂っていたのですが、赤黒く輝いている果実から漂う甘い腐臭に息が詰まりそうで……床には大規模な魔方陣が描かれていたりとどう考えてもこの場所で怪しげな儀式が行われていたという痕跡しかありませんでした。


(どう…なのでしょう?この魔方陣を読み解く事が出来れば何をしていたのかがわかりますのに…って、この魔方陣…何となく読み解けるのかもしれませんわ)

 熟れた果実から魔力供給を受けている魔方陣には模様みたいな光が浮かび上がっていたのですが、何かしらの意味がある図形なのではと目を凝らしていると言語チートが反応しまして……。


「えっと、魔力を整えて…ポーションを?じゃ、ないですわね、エリクサー…的な万能薬でしょうか?を…生成する?」

 文字として認識できたとしても意味のある羅列として並べ替える必要があったのでとんでもなく読みづらかったのですが、どうやら回復薬のような物を作ろうとしていたようで……てっきり集めて来た魔力でゼブルスの封印を解こうとしているのだと思っていた私は首を傾げる事になったのですが、そんな物が部屋のど真ん中にあったので宰相の考えている事がわかりませんわ。


『アリシア、あれ、あそこ、左前方の棚の後ろを見てみるっす!』


「ちょ、ちょっと、何ですの?いくらチート能力があるといっても集中していないと読み解けませんわ」

 なんていう事を考えているタイミングで声をかけられたので集中力が途切れてしまったのですが、言われた場所を見てみると植物が絡みついている円柱形の結界の中に女の子の人形が入っている事に気が付きました。


(もしかしてこれがノアさんの?)


『そうっすよ、これがあればようやく…僕も自由の身っす』

 なんて事を話しながら急かされるように近づいてみるのですが、30センチくらいの人形はノアさんをデフォルメ化した後にゴスロリ衣装を着せてみたという感じの物でして……いつも着ている全裸寄りのサッパリとした格好も似合っているといえば似合っているのですが、こういうゴテゴテとしている格好をしていても意外と可愛らしいのかもしれません。


『ち、違うんっすよ?これは僕の趣味とかじゃなくてあの陰険女(宰相)の…とか言っている場合じゃないんで、ほらほら、サッサと回収するっす』


(と、言われましても…って、意外と簡単に壊れますのね)

 絡みついている植物はともかく結界の方はどうしたものかと思っていたのですが、インペールで軽く小突いてみるとパキリとヒビが入りまして……叩き割ること自体は難しくないのかもしれません。


(今更なのですが、これを…壊しても大丈夫なのでしょうか?叩き壊した瞬間に警報機が作動するとかではありませんのよね?)

 すでにヒビが入っているので手遅れ感が半端ないですし、この人形を確保した後は逃げ出したら良いだけで……とかいう訳で「えいや」と叩き壊して人形を回収すると警報機が鳴り響き……ませんでした。


「セーフですわ…とにかくこれを、どうしたらいいのでしょう?」


『えっと、人形に首輪をつけてくれるだけで良いっす、後は徐々に意識を移していきますんで』

 いきなり両方の意識をONにしたら混線してしまうようでして……因みに人形(本体)から抜け出して動いている(幽体離脱している)のがノアさんという存在だったのですが、人形を取り戻す事が出来たら結界の内側でも動く事が出来る実体が手に入るのだそうです。


「わかりました、それじゃあ…なのですが、寂しくなりますわね」

 なんだかんだと五月蝿かったりお節介だったしていたのですが、離れ離れになってしまったらこういう風に気軽にお喋りする事も出来なくなってしまいますわ。


『僕からしたらようやく能天気なアリシアから離れられるんでせいせいするんっすけど…まあ、それでも…感謝はしているっす』


「あら、ノアさんが感謝なんて…明日は槍かなにかが降ってきそうですわ、それに…ふふん、私に任せていただければなんとかなるものですわ」


『おー…こういう時に堂々と自分の手柄にできるのがアリシアらしいといいますか…とにかくあんまり馬鹿な事を言っていないでさっさと移し替えておいて欲しいっす』


「わかっておりますわ」

 照れ隠しのような感謝の言葉に鼻高々と胸を張っていると呆れられてしまったのですが、ノアさんからしたら長年の宿願といった感じだったので勿体ぶらずに首輪を移し替える事にしまして……。


「ここにこうしてっと…って、これで本当に大丈夫ですの!?」

 取り付けると首輪から黒い影が溢れて人形を包み込んでしまい……真っ黒い球体が人の姿を形作ったかと思ったらノアさんをそのまま大きくしたというような女性が現れました。


(ボンキュッボンではありませんが…これがノアさんの真の姿という事ですのね)

 今までが10代のノアさんだとしたら目の前に居るのは20代のノアさんでして……成長に合わせて髪の毛が伸びているので完全なメカクレ状態で鬱陶しそうに前髪を弄っていましたし、人形の時に着ていた衣類が弾け飛んで全裸になってしまったのですが、とにかくこれでノアさんの完全復活ですわ。


「問題なし…っすね、くっそ、今までは人形を人質にとられていたからいいようにこき使われていたっすけど…これでようやくあの性悪女に目にもの見せてやれるっすよ!」

 ただ大人びたといっても口調がそのままだったのでやや拍子抜けしたと言いますか、ギャップに苦しめられる事になるのですが……。


「それは楽しみ、肉体を手に入れた程度でお人形さんがどうにかできると思い上がっているなんて」

 なんて肉体を取り戻したノアさんが復讐心を燃やしておりますと、当の本人(リッテンベルン宰相)が地下室に降りて来ていたので驚いてしまいました。


(まさかのご本人登場ですわ!?と、いうより…宰相の後ろにいる人って!?)

 人形の結界を叩き壊したので様子を見に来てもおかしくはないですし、そもそもこの部屋自体がリッテンベルン宰相の私室みたいなものなので私達の方が部外者なのですが、肉塊を連れている猫背で灰白色(かいはくしょく)のリッテンベルン宰相の後ろには略式の王冠であるティアラを被って襟首までピッタリと絞まった純白のローブのようなマントを羽織っている女性が続いていたので目を丸くしてしまいました。


ウィズベリア(リッテンベルン宰相)…と、なんでこんな所(怪しげな地下室)に女帝がいるんっすか!?」

 確信が持てなかった私の代わりにノアさんが驚いていたのですが、リッテンベルン宰相より少しだけ背の高い(170ちょっと)……全身を覆うマントを身に着けているので体形まではよくわからなかったのですが、見えている部分から想像するとやや不健康ともいえるような痩せ方をしている女性がミレーヌ・ド・ザインブルグであり、狂ったザイブルグ帝国を統べる悪の女帝という事になるのでしょう。


(この方が…って!?)

 艶やかな黒髪をきっちりと編み込み後頭部の辺りで丸めたシニヨンとかいう髪型には隙が無かったのですが、どこかぼんやりとした表情やトロンとした赤色の瞳は恐怖の帝国を率いる女性としてはややミスマッチな印象を受けたのですが……流石にこの状態でただの迷子と言い張る訳にもいきませんし、それ以前に剣を抜きながら叩きつけてきた圧力が尋常ではありませんわ。


(ぐっ、とう…に、な、なんですの…この威圧感は)

 皇帝として存在感といいますか、世界が塗り替えられていくような圧力に後ずさってしまい……膝を屈して頭を垂れたくなるような精神汚染にも近い圧力に対して気合で踏ん張る事になるのですが、のんびりと会話をするという状況でもないですし、脱出する為の通路(階段)は2人と1体(肉塊)に塞がれてしまっているという絶体絶命のピンチに冷や汗をかいてしまいました。

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