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61:皇居勤め(初日)です(アンジェリカ視点)

※一方その頃……時間軸としてはアリシアが採用されたのと同じくらいとなります。

 てっきり登用試験的なものが待ち構えているものだと思っていたのですが、簡単な質疑応答だけで合格が出てしまい……職場(厨房)に案内をする前にという事でキッチンメイドが着る為の制服を渡されたのですが、どうにも怪しげな魔法が使われている形跡があるのですよね。


(偽装されているようですが…ベルザでも使われていた肉の枷の一種でしょうか?)

 どうやら下着に怪しげな細工が施されているようで……こんな物を履いていたらいざという時に動きづらいですし、採用担当官が離れている(他の人に呼ばれていた)隙に似たようなデザインの下着とすり替えて(収納から取り出して)おく事にしましょう。


(背中が丸見えなのですが、この辺りに穴を開けて紐を通して…強めに縛っておけば誤魔化せそうですね)

 誇張していても良い事が無いので布を巻いて胸を潰しているのですが、用意されている衣類が男性使用人の物の流用だったので無理やり詰めておけば良い感じに布地(サラシ)を隠してくれるのかもしれません。


「これで…大丈夫でしょうか?」

 軽く動いて調子を確かめてみるのですが、問題がないようなのでこれで良しとしておきましょう。


(それにしても、いくら紹介状があるからといって…こうも簡単に潜り込めるものなのですね)

 登用方法がザルすぎて首を傾げたくなりますし、細工に対する警戒を怠っている事が気になってしまうのですが……。


「いやーごめんごめん、ちょっと人手が足りなくて…だから君みたいな可愛い子が来てくれて助かったよ、ただでさえ人が減っていっているのに欠員が出ちゃって天手古舞さ」


「それは…お疲れ様です、ご期待に添えられるように微力を尽くします」

 首を傾げている間に採用担当官が戻ってきたのですが、元は仕入れ担当だったとかいうやや軽い感じの男が馴れ馴れしく肩や腰に手を回しながら話しかけて来まして……スキンシップが過剰すぎて眉をしかめてしまいました。


(どうやら風紀や治安も終わっているようですし、アリシアは…大丈夫なのでしょうか?)

 少し抜けているところが可愛いといえば可愛いのですが、何をしでかすのかがわからないところがあるので心配しかありませんし……変な人間や魔物達を引き付けるようなフェロモンでも出ているのではないかと思う時があるのですよね。


(私も…アリシアを性のはけ口にしているという点では同じなのかもしれませんが)

 側にいてくれるだけで身体が疼いてしまいますし、他人がアリシアに手を出しているところを見てしまうと腸が煮えくり返るような怒りに支配されてしまい……いくら必要な事(聖氣の調整)だからといって、色々とやり過ぎてしまっているのかもしれません。


(聖勇者という使命があるお方なのでそういう事への警戒心が強いのか異世界では貞操概念が固いのかはわかりませんが…それ(妊娠しない)がこれほど辛くなるなんて思ってもいませんでした)

 アリシアは出されても出来ないという安心感から身を任せてくれている節があるのですが、私達の間に子供が出来てくれたらどれほど幸せな事だろうと思う時がありまして……なんてアリシアの事を考えていたのがまずかったのだと思いますが、ギンギンに漲ってしまった下半身がお仕着せの衣類を大きく押し上げてしまいました。


「って、え、お前…チ〇コ()が生え…てか、俺よりデカい!?」


「ええ…女顔なのでよく勘違いされますが」

 別に「よく勘違いされます」と言っただけなので女性とも男性とも言っていませんし、下手に誤魔化しても墓穴を掘りそうだったので自信満々すぎるアリシアを参考にしながら言い切ってみたのですが、どうやら男性器の大きさが格の違いみたいな文化でもあるのか負けを認めたような顔をしながら馴れ馴れしい態度をひっこめてくれて……それでも「これだけ可愛ければいけるか?いやしかし俺にはそっちのけは」とか頭を抱えながら自問自答に陥っているのは呆れるを通り越した馬鹿馬鹿しさがあったのですが、変なボロを出してしまう前に気を引き締め直した方が良いのかもしれません。


「それで、職場に案内してくれるのですよね?」


「お、おう…とにかくここが、俺達の職場となる第5厨房だ!」

 そうしてキッチンメイドとして雇われたからには職場である厨房へと案内されたのですが、一言でいうとグチャっとした薄暗い場所でして……。


「ここが…物置のようにも見えますが?」


「物置に見えるくらい色々な物があるだけで…それを片付けるのもお前の仕事っていう訳だ」


「そう…ですか、それで…料理人の方はどこにいるのですか?もしかして部屋の隅で寝こけている人がそうなのですか?」

 見た感じだとキッチンメイドの服装をしている顔色が悪くて今にも倒れそうな女性が5名、酒瓶を抱えて部屋の隅で寝転がっている料理人が1名いるだけで……どう考えても皇居に詰めている数千人の料理を作る為の人員が揃っているとは思えませんでした。


「いやー…あの人もそうなんだけど、メインの料理長は…どこだろう?適当な部屋でお気に入りと一緒にくんずほぐれずのお楽しみ中じゃあないかな?」


「それは…前任者が消えたくなる気持ちもわかりますね」

 キッチンメイドなので料理人の手伝いとかの雑用をするものだと思っていたのですが、人手が足りなさ過ぎて普通に料理を作らされているようですし……上級使用人に当たる料理人はギリギリまで適当なところでお楽しみ中なのだそうです。


「まあ…今は騎士団が出払っているからな、居た時はもうちょっと厨房にも人が居たんだが…」

 つまり作らないといけない人数が減って監視の目も緩くなったのでサボり癖が出てきたという感じのようで……そういう気の弛みが前任者の失踪(魔物に食べられた?)という形で出てきたのかもしれませんが、いつまでもグチグチと言っていても仕方がないので厨房の片付けと食材の把握からしていきましょう。


「それで…いつまでに何人前の料理を作ればよいとかは決まっているのですか?」

 皇居に詰めている貴族達や上級使用人達の料理を作っている厨房は別にあるのでノルマ自体はきつくなさそうなのですが、そちらに人員や資金が取られているのだとしたら状況としてはトントンといった感じでしょうか?


「あ、ああ…この惨状を見てそういう言葉が出て来るというのが心強いよ、まずは…そうだな」

 山積みになっていた調理器具一式を持ち上げ整理整頓を始めたら驚かれてしまったのですが、案内をして来た男性には「そういやこんな顔をしておきながら男なんだよな」とか妙な納得のされかたをされてしまい……とにかく一通り片付けてから酒瓶を抱えて寝転がっていた料理人を蹴飛ばしておいたのですが、逆切れをして殴り掛かって来たのを返り討ちにすると「は?なんで枷が動かねーんだ?上の人間には逆らえない筈だろ?」とか言っていたのはどういう意味なのでしょう?


「さあ?よくわかりませんが…サボり過ぎて降格していたのではないですか?」

 適当な事を言いながら酔っ払いには野菜の皮むきをさせておきましたし、他の料理人達も徐々に帰って来たのでなんとか作らないといけない料理に取り掛かる事が出来たのですが、これが毎日となるとなかなか骨が折れますね。


(言えばやってくれるだけ完全な悪人と言う訳でもないのかもしれませんが…だからこそ根が深い問題とも言えるのですよね)

 彼ら(戻って来た料理人)も最低限の料理を作らないと罰されてしまう立場ですからね、厨房が良い感じに回っているのならそれでよしといった感じで変な妨害をしてこなかったので助かりました。


「なあ、俺達が作るよりカーニス(偽名)に任せた方が効率がいいし…明日から全部あいつにやってもらった方が良いんじゃないか?」


「まったくだ、任せるどころかお前にだったら掘られてもいいぞ!」


「ふざけた事を言っていないで…それより火加減が強すぎです、それだと火が通りきる前に焦げ付いてしまいますよ」

 「ヘヘヘ」と笑う料理人達を睨みつけたり宥めすかしたりしながらなんとか必要な料理を作らせる事が出来ましたし、一度身内認定されたらこういう馬鹿話しが出来るくらい打ち解ける事ができたのですが……こんな調子では先が思いやられてしまいますね。


(切っ掛けが男性器の大きさというのが情けない話ではあるのですが)

 とにかく、料理を作ったからには配膳する必要がありまして……。


「それじゃあ料理が冷めてしまう前に手分けをして…この台車を使えばいいのですか?」


「ああ、俺らが配るような連中は腹に入れば良いっていう感じの奴らばかりだからな…適当に積んでくれ」

 厨房の人手が少なすぎるので全員で配りに行くのですが、そうなると当然監視の目が緩む事となりますし……調べ物をするには絶好の機会が訪れたという事なのでしょう。


(それではまず…魔物が飼育されているという宿舎に向かう事にしましょうか)

 どのような種類が居るのかを確かめる必要がありますし、暴動を引き起こす事が出来たら混乱を助長させる事が出来るのかもしれません。


 そういう訳で皆が嫌がる魔物達の配膳係を率先して勝ち取り宿舎に……というのも烏滸がましい環境下で魔物達が飼育されている畜舎のような場所にやって来たのですが、飼育係に料理を届けに来た事を告げてから配膳をするフリをしながら調査を開始する事にしましょう。


(とはいえ…皇居内に手こずるような強敵(魔物)は居ないようですね)

 種類としてはゴブリンやオークや肉人形……変異種などの魔物が居るには居るのですが、皇居に詰めている連中が管理できるレベルで民衆の暴動などに対応できる程度の種類が集められているといった感じなのかもしれません。


(もう少し調べてみないと断言はできませんが)

 不自然にならない程度に配膳を行ったり襲い掛かって来た魔物達を殴り飛ばしたりしながら何食わぬ顔で見て回っていたのですが、奥の飼育小屋みたいな感じのところではゴブリンやオークや肉人形に孕まさせられている人達が居るようで……今すぐここに居る魔物達を斬り捨てて慰み者にされている女性達や餌として放り込まれている男性達を助けてあげたくなってしまったのですが、下手な事をしたら痛い目に合うからと怯えきっている人達や諦めきって虚ろな目をしている人達を連れて脱出できるとは思えなかったのでぐっと我慢しなければいけませんでした。


(流石に死にそうな人達は助けて…っと、この人は?)

 反抗する気力も擦り切れてしまった人達が多い中、強い意思が灯った瞳をしている女性を見つけて足を止めてしまい……たぶん元騎士だったり何かしらの役職についていたと思われる女性が魔物達の慰み者にされた上で腕や足の腱が切られて身動きがとれないようにされている姿は筆舌に尽くしがたかったのですが、それでも瞳の奥のギラギラとした意思の強さだけは失われていませんでした。


「どうした?ん、ああ、そいつか…見ての通りだな、もとはといえば騎士団か何かの部隊長だったんだが…他の連中を扇動したり反乱を企てた罪とかでその有様だ、お前もあまり肩入れをするなよ?俺達のような下っ端からしたら明日は我が身だぞ?」


「ええ…そうですね、御忠告感謝いたします」

 警告とも助言ともいえる事を言っていた同僚が台車を押しながら次の配膳先に向かって行ったのですが、彼の興味が別のモノに向いた瞬間を見計らって私は私でやるべき事をやっておく事にしましょう。


「静かに…今枷を外しますので」

 収納魔法から短剣を取り出して近づけば一瞬驚いた顔をされた後に怪訝そうな顔をされてしまったのですが、今はそんな事より取り付けられている肉の枷を……女性に取りつけられているのは魔力を吸い取る肉の枷だったのですが、この手のタイプは核となる部分を潰せば問題がないので助かります。


(酷いですね、色々な所が開いて…内臓も幾らかやられているようですし)

 魔法の制限がかかっているので治療をおこなうにしても限界があったのですが、完全に封じられている訳でもないのでその辺りは小手先の技術で補っておきましょう。


 というより完全に治してしまうと逆に目立ってしまうので必要最低限の治療を施しながら制御部分だけを突き刺し無力化しておくのですが、これで勝手に蠢いたりしなくなったので自由に動く事が出来ると思います。


「次はこれ(特別製のポーション)を…大丈夫です、毒ではありませんので」

 そうして手早く堕胎用の魔法で体調を整えながら小瓶に入ったポーションを口に含ませるのですが、抵抗するように無言で睨みつけられてしまい……身元も不確かな人物からいきなり奇妙な液体を含まされたら警戒もするというものです。


「んぐ、はっ、っと、声、が…何でアタシを助け…って、もしかして…ヴァーナル(反乱軍)とかいう?」

 とはいえこのような状態で縄を解いてくれるような存在というのは限られているので反乱軍の潜入工作員か何かかと勘違いをさせてしまったのですが、否定するべきかどうかを悩んでしまいますね。


「まあ、そんな感じです…武器はコレ(ドワーフ製の短剣)を、コトが起きるまでは隠しておくように…ただ先に言っておきますが、憎しみに駆られて帝国兵を斬り殺したいだけなら大人しくしておいてください…残念ながら貴女が5人10人斬ったところで大勢は代わりません、自己満足の為に助ける事が出来た人間を道連れにするだけです」

 口に含んだポーションを飲み込むと見る見るうちに傷が塞がり魔力が漲っていくのですが、この人がどれだけ頑張っても皇居から脱出する前に物量に押し潰されてしまうのが関の山ですし……そのような冷酷な事実に対して目の前の女性は悔しそうに涙を浮かべながら唇を噛んでいたのですが、それでも自分なりの答えを出してから口を開きました。


「わかって…いるよ、アタシだって犬死はごめんだ…ただ…アタシより酷い目に合っている連中がいる、そいつらの為にポーションがあったら幾つか譲って欲しい…あまりこういう事は考えたくないんだが、そういうのをダシにこちら側につかせる事ができるかもしれない」


「わかりました、あまり数は出せませんが…私達も数日以内に仕掛ける予定なので、混乱に乗じる事が出来るように根回しと救助を…」

 なんて事を話しているタイミングで少し離れた場所からドガガガッ!という大音響と共に光の渦が立ち昇りまして……アリシアのジャッジメント・ディザスターの影響で魔物の宿舎が大きく揺れたのですが、流石に事を起こすのが早すぎませんか!?

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