暴動-8
翌日、コウキとナオは新宿歌舞伎町へと来ていた。
「ナオちゃん、なんでここなの?」コウキは説明を求める。
「ここは、北信会と対立しているグループがいるんです」
ナオはそう答えながら、歌舞伎町を闊歩する。
「対立ねぇ~」
「はい。対立です」
暫く歩くと、ナオは立ち止まり「ここです」と一軒のキャバクラを見上げる。
「キャバクラじゃない。何? 接待してくれるの」
「しません。それより、ここが敵対グループのアジトなんです」
「ほぉ~」と吞気な返事をしていると、中からパンっ! パンっ!と銃声が聞こえてくる。
「ナオちゃんっ!!」
「はいっ!!!」
二人は中に入る。その間にも銃声が聞こえる。
突入すると、部屋の中は血に染まり複数の人間が死んでいた。
あまりの凄惨な現場にナオは言葉を詰まらせる。
奥からガシャっと誰かが逃げる音が聞こえた。
「逃がすかよ!!」コウキは奥に向かって走っていく。
コウキは逃げ出す男の姿を目撃する。コウキからすると子供のように見えたその男はコウキに向かって発砲した。
「危ねっ!!」
間一髪で避けるコウキは追跡を続ける。
積みあがったビールケースを蹴飛ばしながら、裏口を出ると男はバイクに跨りそのまま走り去っていった。
「クソっ! 逃げられた」コウキが悔しがっているとナオが出てきた。
「コウキさん・・・・・・」ナオは首を横に振って、中の人間の安否を伝える。
全員の死亡を。
「にしても、大したスキルだよな。一人で銃を武器に全員を殺せるんだから」
鑑識捜査員の作業を見ながらコウキはナオに告げた。
「そうですね。でも、行く先々で出会うって訳ですから。今度も」
「どうかな? ここまで大ぴっらにやったら相手も控えるんじゃない?」
「そうですかね。私だったら、調子づいちゃいますけど」
「調子づいちゃうね・・・・・・」
コウキは男の正体が子供なのではないか。そう考え始めていた。
「コウキさんは犯人の顔を見たんですか?」
「見たと言えば見た。チラッとだけど」
「チラッとだけですか? どんな顔でした」
小さいスケッチブックをカバンから取り出すナオはスケッチしようとする。
「どんな顔って。チラッとしか見てないから何とも言えないよ」
「それでも何か特徴があるでしょ?」
「特徴。特徴ね。強いて言えば、子供っぽい顔だった」
「童顔って事ですか?」
「いや、違う。本当に子供っぽい顔」
「子供がバイクなんて運転しないですよね?」
「ナオちゃんの思っている子供と俺の思っている子供は違うと思うわ」
「どういう事ですか?」説明を求めるナオ。
「年齢で言えば17~19歳って所の子供」
「17~19ですか? 子供っていう年じゃないと思いますけど」
「ナオちゃんも年くってくれば分かるよ」
そんなのが分かる年の取り方はしたくないそう思うナオであった。
「で、小僧なんだけどさ。一度にこれだけの人間を殺せるってのは普通じゃないと思うんだけど」
「やっぱり、犯人は銃を扱うのに手慣れた人間ですよね。そうなると、自衛官とかが疑わしいですよね」
「ナオちゃん、良いところを突いてはいるが不正解だな」
「どういう事ですか?」
「俺は素人による犯行だと思ってるよ」
「素人だと、ここまでの犯行は出来ないんじゃないですか」
「それができる遊びが勇逸あるんだよ」
「遊びですか・・・・・・」
コウキが何を言っているのかさっぱり分からず首を傾げるのだった。