暴動-6
喫茶店に移動したコウキとナオ。
コウキはモーニングセットを注文し、ナオはコーヒーを注文した。
「それで、男の話なんですけど」とナオから口火を切った。
「はぁ~」とため息をつくコウキ。
「なんで、ため息つくんですか?」
「いやさ、飯の前にそういった類の話は聞きたくないと思ってさ」
「じゃあ、いつだったら良いんですか?」
「え? それは、え~っと」
「答えられないなら話しますね」とナオは話を続けることにした。
「はい」
「例の男なんですけど、他にもターゲットが居るとは思いませんか?」
「下見してれば、そう言う考えにもなるとは思うけど。今回の被害者だけがターゲットだったら?」
「私も最初はそう思ったんですけど。一度、成功したらもう一度やらないかなって」
「別の標的で?」という問いにナオは頷いて答えた。
「お待たせしました。モーニングセットとコーヒーです」と注文した品を持ってきた店員に「Thank You.」と礼を述べるコウキ。
トーストとゆで卵のモーニングセット。トーストにバターを塗りながらコウキは口を開いた。
「ナオちゃんの言う通りだとして、次のターゲットの目星はついてるの?」
「それを一緒に考えて欲しいんです」とナオは答えながら、捜査資料のデータが入ったタブレット端末を机に置いた。
「ふぉれも? (訳:俺も?)」トーストを口に加えながら返事をするコウキ。
「当たり前です」
「私が一番怪しいと思っているのは、この北信会です」
「ふぉくしぃきゃい?(訳:北信会?)」
「はい。というか、食べ物を口に入れながら喋るのはやめてください」と注意されてコウキは口にトーストの最後の一口を加えたまま「ぎょめんにゃはい(訳:ごめんなさい)」と謝罪した。
「で、その北信会が何で次のターゲットだと思ったの?」
今度はゆで卵の殻を破りながら、質問した。
「はい。北信会は新宿で急成長している半グレグループです。動きの激しいグループが狙われるのではないかと」
「成程ね・・・・・・」コウキはそう答えると、ゆで卵を口に入れる。
「それで、次に狙われるのもグループのリーダーではないかと」
「んああ~」とゆで卵を飲み込んでからコウキは「でも、そう言う大きい組織だとリーダーの動きは掴みにくいんじゃない?」と言う。
「それがそうでもないんです」
「どういう事?」
「これ、見てください」とタブレット端末を指さすナオ。
「サウナ?」
「はい、このリーダー、大のサウナーで週に三回、新宿にある会員制のサウナを訪れる事が分かってます」
「その機会を狙うってか? 犯人の男がこの情報を知っているとは限らんぞ」
「コウキさん。警察が手に入れている情報なんてものは、調べようと思えば調べられるんですよ」
「そうなの?」
「はい」ナオは自信満々に答える。
「偉く自信満々に答えるね」
「そうですか? それで、今日なんですけど」
「例のサウナに姿を現す?」という問いにナオは頷く。
「じゃあ、その推理に頼って行ってみますか? サウナに」
「はいっ」嬉しそうに答えるナオであった。