暴動-3
「コウキさん。犯人は半グレの一味なんでしょうか?」
車を運転するナオはコウキにそう質問した。
「そうかもね・・・・・・」
コウキは窓からの景色に目を向けながら、気のない返事をする。
「拳銃なんか盗んでもですよね」
「盗んだから今回の事件が起きたんでしょ?」
「そうですけど。やっぱり、抗争が動機でしょうか?」
「どうだろうね? それを今から確認しに行くんでしょ?」
「はい」
二人を乗せた車は警視庁へと向かうのだった。
橘の取り調べに加わらせてもらうコウキとナオ。
「この前はどうも」と挨拶をするコウキを睨む橘。
「何の用だ?」
「この男性見覚えは?」ナオが死体の写真をみせながら質問した。
「知らんな」
「知らないわけないでしょ?」
「知らない・・・・・・」
「知らないだって」コウキは吞気な事を言う。
「なんでそんな吞気何ですか?」
「え? そぉ?」
「知らないじゃ済まされないの。分かる?」と言うが、橘は「知らない」の一点張りである。
「知らないわけないでしょ!」と机をバンッと叩くナオ。
だが、効果はない。
「ナオちゃん、ナオちゃん」
「何ですか?」
コウキは一旦、外へ出ようというジェスチャーをする。そのジェスチャーに従って、取調室を出る。
「これ以上、聞いても無駄」
取調室を出てすぐに、コウキはそう言った。
「そうでしょうか。もう少し粘れば・・・・・・」
「若いのに粘るのが好きとは大した根性だ。うん」
「バカにしてます?」
「とんでもない。刑事に必要なのは、その粘り強さ!」
「コウキさんは、刑事じゃなくて探偵ですよね?」
「うん、業務委託を受けた探偵よ」
「はぁ」とナオはため息をつく。
「ま、とにかく橘から話を聞くのは辞めて、当の本人達に聞くのが宜しいんじゃなくて?」
「でも、場所知らないんじゃ」
「ワタスは探偵よ。色んな所に情報を張り巡らせてるから、ま、付いて来れば分かるよ」
コウキはそう言って、歩き出した。
「ホント、勝手なんだから」ナオも付いて行くことにした。
二人は池袋のアニメイトに場所を移した。
「こんな所に半グレの連中が?」
「うんな訳ないでしょ。ここに居るのは、彼だ」
コウキの指を指した先にいたのは、Vtuberのグッズを見漁っている高齢の女性であった。
「薫さんっ」
「ああ、あんたか・・・・・・」
「誰なんです?」ナオは説明を求める。
「薫さんは、この街のボスってところかな?」
「ボスなんかじゃないわよ。情報屋よ。情報屋」と自ら訂正する情報屋の薫。
「で、今日来た訳なんですけど」
「殺された半グレの事でしょ?」
「流石は薫さん。もう、お見通しで」
「あんたの仕事を知っていれば誰でも察しはつくわよ」
「それで」
「あの子らは北口の方にあるSHOTってバーに居るわよ」
「どうも」
「ああ、それと」
立ち去るコウキとナオを呼び止める薫。
「何ですか?」とナオが質問する。
「彼ら殺気立ってるから、手土産を忘れずにね」というアドバイスをもらい、二人はSHOTというバーへと向かった。