見映-5
それから一週間が流れた。
コウキも仕事に慣れてきて、余裕が出てきた。
仕事中に少しの間サボることができるくらいの余裕ができ、社長の呉井を監視できるようになった。
「アタミさん。これ、今日中にお願いできますか?」
「はい。了解しましたっ」コウキは元気よく返事をしながら仕事を引き受ける。
すると、そのタイミングでナオから着信が入る。
「はい。もしもし? アタミです。あ~お世話になっております」と席を外しながら電話に応対する。
人が来ない非常階段に移動し、「どうしたの?」と本題を切り出した。
「これから少し会えませんか?」
「今から? まだ仕事、終わってないんだよねぇ~ 夜でも良い?」
「夜ですか?」
「急ぎの話なの?」
「はい・・・・・・」
「どんな話?」
「実は、コウキさんが潜入している企業の社員が殺されてました」
「ほぉ」
「それで、その方がどういった方かを調べて欲しくて・・・・・・」
「分かった。調べとく」
「ありがとうございますっ!!」ナオは電話口でお辞儀する。
「で、その人の身元情報を教えて」
「はいっ。かくかくしかじかで・・・・・・」
コウキは必要な情報を聞き出すと、仕事に戻った。
「被害者の名前は、響生 音さん。ね」
コウキはデータ入力の傍ら、社員名簿に該当の名前を検索する。
「出てきたっ」指をパチンっと鳴らして、喜ぶ。
彼女は入社して五年になる社員で、特段変わったような経歴をもった人物でもなかった。
「喜んでる」と同僚の山戸は、隣に座って仕事する道祖に声を掛ける。
「ああ、喜んでるね」と答える道祖。
「何、あったんだろ?」
「さぁ?」
「気にならないですか?」
「ならない」と一蹴された山戸はムッとするのだった。
そんな事、つゆ知らずコウキは社員情報から響生音の情報をスマホにメモしていく。
「アタミさんっ! 何、喜んでいるんですか?」
山戸から声を掛けられたコウキは「うわっ」と驚いて椅子から転げ落ちる。
「ごめんなさぁ~い」山戸は驚いたコウキに謝罪する。
「い、いえ大丈夫です」とよろけながら立ち上がるコウキはふぅ~っと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
「でも、あんなに驚くなんて思ってもみなかった」
「ああ、怪談を聞いていたものですから。ほらっ」
コウキは片耳イヤホンを見せる。
「もぉ~ 仕事中に怪談を聞かないでくださいっ!!!」
「はい。すいません。以後、気をつけま~す」
コウキと山戸は二人、ゲラゲラと笑うのだった。
仕事を終えたコウキはナオが待つ居酒屋へと向かった。




