暴動-2
「銃と弾が無くなってるですって!?」
捜査一課長のハルト クルミが言う。
「はい。橘の供述によりますと・・・・・・・」
部下の刑事がそう報告をする。
現場検証をしている時に、橘は部屋から銃一丁と弾が入ったボックスが無くなっていることを供述したのだ。
クルミは頭を抱えて、自席で報告書を作成しているナオに視線を向ける。
「ナオちゃぁ~ん」
「はいっ!!」元気な返事で返し、ナオはクルミの元へと駆け寄る。
「どうされました?」
「どうされましたじゃないわよ。部屋から拳銃が無くなっているんですって」
「そんな、まさか・・・・・・・」
「そのまさか。で、心当たりは?」
ナオは少し考えてから口を開いた。「二人で追跡している時に何者かが部屋に侵入し、盗まれたとしか・・・・・・・」と申し訳なさそうに発言した。
「全く。応援を待ってればこんなことには」
「すいません」
「いや、あなたが悪いとは思ってないわ。悪いのはあの探偵よ」
「ヴェックショッン!!!!!」盛大なくしゃみをするコウキであった。
「無くなった拳銃を探します」
「そうね。ナオちゃんに任せようかしら」
「課長、事件ですっ」別の刑事が報告する。
「どこで?」
「池袋です」
「池袋か。あいつの事務所があるわね。よしっ、ナオちゃん、向かって」
「はいっ!!」ナオは敬礼し、刑事から詳細な情報を聞き、現場に向かった。
池袋の事件現場はサンシャイン通りから少し離れた路地裏で起こった。
一足早く現場についていたコウキは被害者を見て、手を合わせるのだった。
被害者は銃殺されていた。胸を一発で撃ちぬかれていたらしく、胸元は血に染まっていた。
「ひでぇな・・・・・・・」コウキの感想はそれだけであった。
暫くして、現場に臨場したナオと合流したコウキは、第一発見者のメイドから聞いた情報を伝えた。
「誰か倒れていると思い、見に行ったら死んでいた。と・・・・・・・ 他には?」
「さぁ? 彼女も気が動転していて、それ以上は聞き出せなかった」
「そうですか」使えない奴だとナオは思った。
「銃声は聞いてないらしい。多分、聞き込みしても同じ結果だろうな」
どうして、そんなことが分かるのか? そう言いたかったが、ナオは口を噤んだ。
「被害者の身元は?」
「ここら辺を取り仕切っている半グレの兄ちゃんだ。名前は知らない」
依頼を受けたコウキが現場に来て最初に行ったのが、被害者の身元確認だ。だが、被害者は免許証の類は持っていなかった。が、顔には見覚えはあった。
探偵稼業をしていると、少し裏の世界にも顔を通じてしまう事もある。そんな時に知ったのだ。この男が池袋を根城にする半グレの頭目であることを。
「その半グレの拠点は分かるんですか?」
「そこまでは知らない。生活安全課にでも聞いたらどう?」
知っているみたいな感じを出す癖に、何も知らないコウキに少しイラッとする。
「コウキさん。今回の事件なんですけど、もしかしたら・・・・・・・」
ナオは橘の部屋から銃が消えた事を伝えた。
「え? てことは何? 今回の事件で使われたのが盗まれた銃だって言いたいの?」
「はい」
「マジか・・・・・・」
「マジです」
「何とも短絡的な・・・・・・」
「そうでしょうか。タイミングとしてはバッチリだと思いますが」
「分かった。その線で捜査しましょ」
こうして、コウキとナオの捜査は開始された。