暴動-11
「出てぇ~コウキさん」
一階に着いたナオはそう言いながら、真向かいのビルに突入する。
ビルの階段を急いで登っていき、目的のフロアに辿り着いたその時!!
パンっ! パンっ! パンっ!
乾いた銃声が部屋の中から聞こえる。
勢いよくドアを開けると、そこには複数の人間が血を流して倒れていた。
その中には、葛飾の護衛をしていた警察官も混ざっていた。
「貴方、何してるの!!」ナオはデリバリースタッフの男を怒鳴りつける。
男は答える事なく銃をナオに向け、銃を撃った。
ナオの頬を掠め、頬から血が流れる。
「死ね」
男はナオの眉間に銃口を向け、引き金を引く。
「危ないっ」
コウキがナオに覆いかぶさるようにして、抱きついて倒す。
「コウキさんっ!」
「お待た」そう言って、コウキの手にはナオに取り上げられた拳銃が握られていた。
「ヘイヘイ。大人しくしな」コウキは拳銃を向けながら立ち上がる。
「おもちゃだろ? それ?」
「どうかな? 試してみるか?」
「試すまでもない」男は銃を撃った。
だが、コウキは間一髪で躱して、パンっ!と男の手首目掛けて発砲した。
「グアっ!」男の手から銃が転げ落ちる。
「ここまでだぜ。ベイビー」
コウキは男に近づき、眉間に銃口を当てる。
「それは、どうかな!!」
なんと、男は閃光弾を使った。
急に眩しくなり、二人は目を覆う。その隙に、男は銃を拾いあげ逃げた。
光が落ち着き、コウキはゆっくりと目を開ける。
「ナオちゃん」
「はい。コウキさんは大丈夫ですか?」
「大丈夫。ナオちゃんは?」
「目がチカチカして」
「それは俺もだ」
「男は?」
「逃げた。らしい」焦点の合わない目を擦りながら、コウキは部屋を見渡す。
やはり、男の姿はなかった。
「ナオちゃんの綺麗な顔に傷つけちゃってくれて」
「あ、ありがとうございます」
コウキはお世辞だよ。と言いたいところを我慢して、話を進める。
「奴さんは、どうだ?」
倒れてる葛飾の脈を確認すると、脈があった。
「うっ」と言いながら、目を開ける葛飾。
「うわっ!」
コウキは驚いて尻餅をつく。
「防弾チョッキを着ていてもダメージはあるもんだな」
「防弾チョッキ、来てたのかよ。悪運の強い奴だな」コウキが感心していると、「コウキさん。こっち手伝ってください」と救護活動の手伝いを願うナオ。
「ああ、悪い。悪い」
コウキはすぐに救護活動に当たる。
その間に、葛飾はビルを出ていった。
それから葛飾の行方は警察でも掴めず仕舞いであった。
「あれから三日。葛飾はどこに行ったんでしょうか・・・・・・」
ナオはコウキの事務所でコーヒーを飲んでいた。
「それよりも春川君も行方知れずってのが、気になるな」
「そうですね」
あの後、春川夏輝の保護者から提供された本人の写真で面通しをしたナオから春川の犯行であることが証明された。
「多分、葛飾は春川君を追っているだろうな」
「彼の身が危険なのは分かってます。でも、どうしたら・・・・・・」
「彼自身で喧嘩を売ったんだ。自分で何とかするだろうよ」
「そう言う問題でしょうか?」
「そう言う問題だよ。さ、俺達は依頼された仕事をしよう」
コウキはナオにそう言い放ち、自分の仕事に取りかかるのであった。