暴動-10
春川 夏輝は自宅におらず、通っている学校を近所の主婦から聞き出した二人は春川が通う学校を訪れた。
「春川君は欠席しております」そう職員が教えてくれた。
「風邪ですか?」
「だと、思いますけど」
「ナオちゃん」
「分かってます」
ナオは重要参考人として、捜査本部に春川夏輝の事を報告した。
そして、二人は車に乗りながら事件の会話をする。
「コウキさん。犯人は春川って子なんでしょうか?」
「分からん」
「分からん。って、コウキさんが言い出したことじゃないですか。春川君が犯人だって」
「彼が犯人とは言ってないよ。疑わしいってだけ」
「そんな・・・・・・」
無責任なと言いたいナオはグッとこらえて、車を走らせる。
「とはいえ、自衛官を打ち負かす程ってのは気になるよな」
「そうですね・・・・・・」
「ナオちゃんはどう考えてるの?」
「というのは?」
「次の標的だよ」
「そうですね。次の標的は、取り逃がした葛飾ですかね」
「じゃあ、その線で動こうか」
二人は警視庁へと向かった。
警視庁地下の駐車場で車を駐車し本庁に戻ろうとすると、地下玄関で釈放された葛飾と出くわした。
「あ、出たぁ~」コウキは変な声を出す。
「んだ、お前!?」
迎えに来た部下がコウキに突っかかる。
「やめろ」と葛飾は部下を諌める。
「すいません」そう言って、潔く引き下がる部下。
「精々、命を狙われないようお気をつけあそばせ」とコウキは葛飾にそう告げ、警視庁舎に入っていった。
ナオもそれに続いて入り、コウキに尋ねた。
「あんなこと言って大丈夫なんですか?」
「え? 何が」
「何がじゃなくて・・・・・・ もういいですっ」
ナオは怒って先に一人行ってしまうのだった。
翌日、ナオの推理に従い二人は葛飾をマークしていた。
勿論、他の捜査員も警護の為、マークしていたがコウキとナオは違った形でアプローチしていた。葛飾が居るビルの真向かいのビル屋上から監視していた。
「ナオちゃん。俺の銃、返してよ」
コウキは葛飾が居るビルを監視しながら、コウキはそう言う。
「ダメです。第一あんなもの普段から持ち歩いていたんですか?」
「時と場合によるかな。今回、相手がこれ持ってるから」と指で銃のポーズを作るコウキ。
「銃を持っているからエアガンを使わせろは理由になりません」
「じゃあ、俺が撃たれても良いって訳?」
「誰もそんな事言ってないじゃないですか。私だって、丸腰で相手しているんですから」
「え?そうなの!?知らなかった・・・・・・ なんか、ごめん」
「謝ってもらうようなことじゃありません」
「じゃあ、分かった。ナオちゃんの分も買えば文句ないね。じゃ、俺買い出しに行ってきまぁ~す」
コウキはそのままその場から去っていた。
「ホント。何、考えてんだろ?」
ナオはそのまま見張りを続けていると、一台の自転車がビルの前に止まった。
自転車を運転していた男は、フードデリバリーのアルバイトらしく例のリュックサックを背負っていた。
双眼鏡で覗いていたら、男の顔に違和感を覚えた。若い顔立ちの男だったのだ。
「コウキさんに連絡しなきゃ!」
ナオはコウキに通話する傍ら大慌てで屋上から降りていくのであった。