表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/63

 夕暮れ時に染まる空。

 泣き疲れ、居酒屋をふらりと出た彼女を呼び止める声があった。

「お帰り、パエリエ」

 足を止め、パエリエは男をまじまじと見る。

「ようやくわかったようだな、お前の居場所はここなんだよ」

 いやになるほど見た、濡れ羽色の瞳。



「シェンデルフェール……」

「もう戦いは終わった。私と来なさい」

「……あたし」

 差し出された手を取ろうとして、惑う。

 白くなめらかな手が何事か訴えるように見える。 

 彼が、大事にしてくれたから。

 パエリエはかつての主に、向きなおる。



「行かない。あなたとは」

 シェンデルフェールは口元を歪め、笑う。

「まだクズのようなプライドを纏っているのか。では」

 漆黒の闇が目の前に広がりなにかと思えば。

「これでも、そう言えるかな」

 シェンデルフェールが退き、部下らしい男が現れたのだった。

 男に抱えられた、ぐったりと青ざめた小さな身体を見て、パエリエはさっと青ざめた。

「コリンヌ!」



 きっと、パエリエは彼らを睨む。

「その手を放しなさい!」

 その一声で、かろうじて意識を取り戻したのか、現行犯の手からどうにか口を出し、コリンヌは叫ぶ。

「パエリエさま……だ、めっ。逃げてくださいっ。……こいつらの真の狙いはきっと――」

 うっと声がして、コリンヌが静かになる。

 腹を突かれて気を失ったのだ。

 ぷつん、と、パエリエの中でなにかが切れる。

 靴を脱ぐと、勢いをつけて男に投げる。

 それは顔面に命中し、その隙にとびかかろうと構えた。

 コリンヌを助けなくては――。

 その時。

 がんと頭に衝撃を受ける。

 背後を捕らえられ、動きを封じられた。

「たわいないわ。如才ないお前でも、所詮は女。背後が完全に隙だらけだった――連れていけ」

 勝ち誇ったシェンデルフェールの笑みを見たのを最後に、パエリエの意識は暗黒に覆われた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ