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 挨拶の後は人々との歓談だ。

 楽団の演奏が流れる広間をパエリエはリカルドについて回る。

 決して離れないようにと言われている。

 そう言ってくれた時に感じたのは心強さ以外なかったけれど。

 人並から舞い出てくるのは華やかなドレスに身を包んだ、同い年くらいの令嬢たち。

 知らず、リカルドの腕に添えた手に力がこもる。

 離れるなと言ってくれたということは、つまり。



「殿下、とうとう正式にご婚約されましたのね」

「意外ですわ、殿下は恋には興味がおありじゃないのかと」

「王宮ではいったい誰がその心を射止めるかともっぱら噂でしたけど」



 令嬢たちに一礼しながら、胸中でパエリエは言葉を継ぐ。

 つまり。



「もっと意外なのは、選んだお相手」

「まさか、ねぇ」

「出身がそのような場所だとは」

 どこから攻撃がやってくるかわからないということ。

 わかってはいても身体がはねた。



「ちっともふしぎではありません」



 横から――安定した声が聞こえる。

「さきほどのスピーチは聞いていただけたと思います」

 リカルドはあくまで穏やかに応じた。

「彼女はただ一人、僕の心が通じる人なのです」

 なんの咎めも批難も交じらない。

「誰もが単なるきれいごとと一蹴した言葉を」

 ただひたすら優しいそれは。

「受け取ってくれた人なのです」

 彼女を、混乱させる。

「……」



「すみません、みなさま方」

 ほらまた。

 パエリエの複雑な表情を悟った彼は早々に手を差し伸べてくる。

「我が婚約者は少し疲れているようです。少々、お時間をいただいても」

 婚約者が背中に添えてくる手に誘われるように、パエリエは踵を返す。

 去り際の礼は、どうにか忘れずにこなすことができた。


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