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第3章 チャーミングな人 ①

 グランメール王家に仕える者は国民から広く募ることになっている。

 階級は不問。

 王室の素養や教養も就職後身につける見込みがあれば応募時にはそれほどでなくともかまわない。

 最重視される審査項目は忠誠と熱意である。



「エントリーナンバー三番、コリンヌ・プティです‼ よろしくお願いしまっす!」



 面接会場に設定された、王宮の応接室。

 清潔に束ねたモカブラウンのお団子を勢いよく下げる彼女を見て、執務机の面接官エルネストは頷いた。

 元気のいい少女がきた。

 皇太子の婚約者の側仕え面接オーディションである。

 愛しい婚約者に専属の世話係を置いてやってほしいというリカルドたっての希望で実現した。

 曰く、我が婚約者はあの通り男性には厳しいが女性には優しい。

 そのへんが攻略難の点ではあるが、強気をくじき弱気を助く尊い彼女の魅力であって中略。

 信頼できる同性がそばにいることは右も左もわからない宮廷生活の支えになるのでは。

 と八割ののろけを被せた要請を述べてきたわけで、よって今この会場には、我こそはという年代階級様々な女性たちが一堂に会していた。



「プティさん。ではまず志望動機からお聞きしても」

「はいっ!」



 コリンヌと名乗った少女はきりりと頼もしい返事をする。

 これは期待できそうだとエルネストが内心で呟いた直後。

「それは」

 少女の頬がふにゃりと緩んだ。

 うっとりと手を組み合わせると、詩の暗唱のように語る。



「あのすてきな方のおそばに、いたいからです」



 テーブルにつっぷしたいのを、エルネストはかろうじてこらえる。

 本日何人目か。

 皇太子に近づきたいという不届き志願者は。

 リカルドが眼鏡を取ったら超絶イケメン王子というのは国民全員が知る公然のひみつとなっていたりする。



「そう。わたしとあの方は運命の糸で結ばれてしまったのです」

「あの、世界一イケメンの――」

 だがコリンヌの言葉には冷や汗を禁じ得ない。

 それにしても露骨すぎないか。

 とても尊敬していてとか、敏腕な殿下をお支えしたいとか、せめて他の志願者のようにオブラートに包むくらいしてもらいたいものだ。反応に困る。

 皇太子には婚約者がいると知っていると信じたいが。

 そもそもの応募要項にその婚約者の側仕え募集の旨は明記してあるのだし。

 口元にペン先をあてがった時、興奮したコリンヌの絶叫が響いた。



「あたしをサイテーカレシから救ってくれた、パエリエ様のおそばに‼」



 ことと、と止まったペンが手を離れ転がる。

「皇太子殿下との婚約披露の宴、かけつけた時には満席で出席はできなかったんですけど。王宮の外から見たんです。バルコニーから会釈するあのオレンジの百合のような髪。夏の太陽のような瞳の輝き。あの時のあたしの師匠だ! 間違いないって!」

 


「あたしをパエリエ様のおそばに置いてください! お願いします!」


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