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「わぁぁぁ奇蹟だ、これは奇蹟だよ、パエリエ! 諦めていたダイヤエナへの切符が手に入るなんて……!」
数分後、リカルドは賞品の切符を掲げ嬉々として見つめていた。
ごろつきどもは不満そうに息巻いている。
「兄ちゃん、ほんとうに続けないのかい? このつきかたなら、今日は倍はいけそうなのに。一等の品は王妃が使っていたという瑪瑙だぜ」
王妃の胸に輝く本物の瑪瑙を毎日目にしてる王子は、殊勝に頭を下げる。
「いえ、遠慮します。目的はこの切符だったので」
「ちっ。つまんねぇ男だ。これからだってのに」
男たちの舌打ちを聞いているのかいないのか、王子の満面の笑みはパエリエに向けられた。
「ひょっとして僕は案外賭け事に向いているのかな? いやぁ、自分では気付かないところに、才能ってあるものなのかもしれないね」
「悪いこと言わないから、今日きりにしておきなさい」
なぜか溢れてくる笑いを噛み殺しながら、パエリエは彼に伴われ、酒屋の出口に向けて歩き出す。
「アッセンブルを借金大国にしないためにもね」
「ははは。相変わらず手厳しいなぁ」
わりかし本気で助言したのだがリカルドがほんとうに嬉しそうなので。
それを見ていると、なんだろう、小川のせせらぎのような。
かつてない、ほのかな快さが胸に沸き出でてくるので、パエリエは、伝えないことにした。
よくあるビギナーズラックという言葉を。
「行こう、今からなら夕方の便に間に合う!」
代わりに差し出された手を取り、駅前通りへと舞い出る――。