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◆レンカリオ編【4_15】八歳のワタシは村娘を守るため殺人偽装をするらしいわ


 さて――まだ八歳よ。……長いわね、八歳パート。

 なにかと説明することがあるから仕方ないとはいえ、ごめんなさいね。

 でもまあ、今回はすぐ事件に入るから許してくれると嬉しいわ。


「――レンカー! レンカー!」


 自室で仮眠を取っていたワタシは、ノロイの声に跳ね起きたわ。


「なに? ゴスメズが動いたの?」


 あンの性欲魔人……ノロイ達の影響で体調が悪いくせにどんだけよ。おちおち仮眠も取っていられないじゃない。

 こっちはねぇ、アンタを警戒するせいでここンとこずっと睡眠不足なんだからね。


「違うノロイー! 動いたのはトゥマだぁーノロイー!」

「……え? トゥマがもう動いてくれたの?」

「そうだぁーノロイー! ゴスメズが村から攫って監禁していた娘を、長男のトゥマが逃がしたーノロイー! 娘は屋敷の裏の温室に隠れてるーノロイー! 見張り番はまだ気づいてないーノロイー!」


 語尾の口癖を言う度にピョコピョコと跳ねるノロイが可愛らしく、つい頭を撫でながら答えてしまう。


「そう。状況説明、感謝するわ。ありがとう。もし見張り番が気づくようだったら、憑りついてしばらく昏倒させておいてほしいの。お願いできる?」

「まっかせろだぁーノロイー!」


 ノロイを見送り、ワタシも寝室から書斎へ移った、

 トゥマ……。もうそろそろ動いてくれるとは思っていたけど、まさか今夜とはね……。決断が早く、フットワークも軽い。さすがだわ。

 時刻は夜も深まった二十三時。この時間なら寝ている者も多い。

起きているのは、門番と見張り番が数人、朝食の下ごしらえをする使用人が三人、それから領主であるゴスメズ。

 夕方に振り出した雨も本降りに変わっている。これなら視界も悪く、痕跡も残りにくい。

 ああそうか。雨が本降りになったから今夜決行したのね。

 本当、さすがはトゥマだわ。九歳とは思えない手腕よ。

 それに引き換えワタシときたら……いえ。反省はあとよ。

 とにもかくにも今は、温室へ急行だわ。


「その前に、ポーリー、テルト、ミルダを呼ばなくちゃ。――ソーサラーカードの出番ね」


 なーんてそれっぽいこと言ってみたけど、あらかじめ魔術文字を書き表しておいたカード状の紙よ。

 使う度にいちいち書いてたんじゃ効率が悪いから、暇を見つけてはちまちま作っているのよ。

 使うカードは『』。任意の相手へ一方的に呼びかけることができるわ。ただし、会話はできないし、効果範囲も屋敷内が限界ね。


「《ポーリー、テルト、ミルダ。緊急事態よ。至急、わたしの部屋に来なさい。『瞬間移動』のカードの使用を許可するわ》」


 『瞬間移動』のカードは読んで字のごとく。使う者のイメージ次第でどこへでも移動できるわ。ただし、使用者の体力がごっそり減るから注意よ。


「お呼びでしょうか、領母レンカリオ様」

「レンカリオ様~、テルトも参りました~」

「来てくれてありがとう、二人とも。『瞬間移動』は体力を使うわ。ドライフルーツでも食べて」


 陶器製の菓子器に入った、色とりどりのフルーツを勧める。


「ミルダが来ないわね。畢竟ひっきょう、来られないということよね。……そういえば今夜は、キサ義姉さまと明日の朝食の下ごしらえをする係だったかしら」


 ポーリーとテルトを見遣れば、二人は首肯した。

 ワタシは新しい『呼』のカードを取り出した。


「《……OK。動き方が決まったわ。三人ともわたしの言う通りに動いてちょうだい。もちろん、よりよい考えがあれば遠慮なく言って? ああ、ミルダはそのままキサ義姉さまのそばにいていいわ。指示はちゃんと聞いていてね? いまからわたしは――》」


 手早く段取りの説明を終えた。

 今度は『瞬間移動』のカードを取り出して使う。


「『瞬間移動』発動。ヘルブン家の温室内へ」


 と、口に出す必要はないけど、まあ雰囲気よ。言葉にすることは、イメージする上でも大事だし?

 頭の中で弁解するワタシの鼻孔を、薔薇のがくすぐった。

 すかさず『消音』のソーサラーカードを発動させる。

 だってほら、温室へ逃げ込んだ少女の目の前に、いきなりワタシが現れたりしたら、びっくりさせちゃうじゃない。

 もし仮に少女が悲鳴を上げたとしても、この雨音なら紛れるとは思う。けど……念のため、ね。万が一があったら困るもの。

 暗がりに目が慣れてくる。ワタシは温室内の出入り口付近にいた。

 周囲を見回したけど、少女の姿はなかった。逃げ隠れをしている身だもの、すぐ見つかるところにいるわけがないか。

 それなら、この辺りかしらね。

 花と葉が生い茂る薔薇の低木。その根元に少女は膝を抱えて座っていた。

 年齢は十五歳。くっきりとした目鼻立ちと燃えるような赤毛を持つ少女だった。


「――ひゃあっ。ああっ……あああっ、いやああ……っ」


 少女は驚き慄きはしたものの、悲鳴は上げなかった。とてもじゃないけど上げられなかった。

 それほどに衰弱していた。その姿は擦り切れるようだった。

 わかっている。知っている。

 ろくに食事も与えられず、窓のない、朝か夜かもわからない暗い部屋に閉じ込められていたんだもの。衰弱して当然よね……。

 ワタシは努めて微笑んだ。

 虐げられ、怯え切った少女が少しでも安心できるように、極上の笑顔を強く心がけた。

 でないと崩れてしまうから。

 ああクソ……ほんっとうにクソだわ……。

 こんな……こんな惨い……。クソクソクソクソっ!

 ワタシはなんにも、なにひとつ、まったく、少しもわかっちゃいなかった――!

 自分に反吐が出る!

 でもそれは……、ひとまず後回し……。いまやるべきことを見失うわけにはいかない。


「あなた、ベニニね。よく逃げ出してくれたわ。そしてよくここへ逃げ込んでくれたわ。怖かったわね。あなたのことはわたしが守る。安心して?」

「――……ぁ、あなたも、あたしをたすけて……くれるの……?」

「ええ。わたしはレンカリオ。あなたを逃がしたトゥマお兄さまの妹よ」


 少女――ベニニの顔からワタシへの怯えが消えた。

 しかし、すぐに別の恐怖を思い出す。

 ベニニは細い腕で自分の体を抱いた。


「ぁ、ぁたし……村に、家に帰りたかったんだけど、あたしが帰ったりしたら、みんながお咎めを受けるんじゃないかって思って……元の場所に戻らなきゃって……。けど、でもぉ……あんなのはもういやで……もういやなの……! もういや……!」


 すすり泣くベニニ。彼女の心中に、暗闇で過ごした恐怖がよみがえるのが、ワタシにもよくわかったわ。

 瞳は底の見えない崖下を覗き込むように暗く、自らを抱く腕は力を込めるあまり白んでいたもの。

 その悲しい瞳を、その白んだ腕を、その痛々しい涙を目の当たりにして、ワタシはベニニを掻き抱かずにはいられなかった。

 雨に濡れた冷え切った体。でも、たしかに温かい。

 震えているのは、寒さだけじゃないわよね……。


「レ、レンカリオさまっ! ……ぁ、お洋服が、きれいなお洋服が汚れてしまい、ます……!」

「構いやしないわ。そんなもの」

「え? ……あっ」


 痩せた背中を優しく撫でながら、ワタシは袖口でベニニの涙を拭った。


「大丈夫よ。あなたを苦しめる嫌なことはもうおしまい。もう、おしまいなんだから」

 ワタシは二枚のソーサラーカードを取り出した。そのうちの一枚、『筋力増強』のカードを発動させる。

「ちょっと失礼するわね。……よいしょっと」

「え? あっ、ひゃわわっ⁉」


 ベニニを横抱きにして立ち上がった。


「レ、レンカリオひゃまって、パ、パワフルなんですね……」

「ええ、まあね」


 年相応の純真な反応。……よかった。心は壊されていない。……って、バカ。心が壊されなければいいってもんじゃないわよ、ワタシの馬鹿。


「ベニニ。これからわたしの部屋へ行くわ。あなたを助けるための段取りを色々と組んでいるのだけど、結論から言うとあなたは家族の元には帰れない。それでも……」


 それでもいいかしら――なんて訊くのは、ワタシがワタシの罪悪感を薄めたいがための質問よね。

 ……ハッ、情けないわ。恨まれ、憎まれる覚悟を持ちなさいよ……馬鹿ワタシ


「構いません、レンカリオさま」


 ワタシの逡巡を悟ったベニニが、強い瞳で言った。

 聡いわね……。村への咎を危惧してここへ逃げ込んだことといい、この子は鋭く聡い。

 そして、


「家へ帰らなくても、いまのこの生活が終わり、村と家族に迷惑がかからないのであれば」


 ――覚悟がある。


「あなたを見習うべきね……」

「……へ?」

「ごめんなさい、ベニニ。そしてありがとう。あなたが覚悟を持って臨んでくれるのなら、わたしは全力であなたを守るわ――!」


 もう一枚のカード、『瞬間移動』を発動させた。



 自分の部屋に戻ったワタシは、待ち構えていたポーリーとテルトに指示を出す。

 二人は即座に動いてくれた。

 一方、ベニニは大いに困惑していた。


「……え? ……えっ? ここ、ドコ……?」

「わたしの部屋よ。魔術で移動したの」

「まじゅつ? って、あの、貴族様がドレイを作る時に使う……?」

「まあ、そういう認識しかされないわよね……。それとは違う魔術だから安心して」


 コテンと可愛らしく首を傾げているベニニの手を引き、ソファに座らせる。

 まずは『洗浄』のソーサラーカードを使って、泥にまみれたベニニの身を清めようかしらね。ついでにワタシ自身も。


「じっとしているのよ、ベニニ。――『洗浄』発動」

「ふぇ? ひゃっ! あ、泡があわあわって⁉ わっ、わぁ~! 服も体もきれいになっちゃった!」

「まだ動いちゃだめよ? 続けて――『止血』発動」


 手足の泥汚れが落ちたことによって現れた、擦り傷や切り傷。『洗浄』のカードには消毒の効果もあるから、そのまま出血する前に『止血』のカードで応急手当をした。


「これはあくまで『止血』であって治癒ではないから注意するのよ。一見、治ったように見えるけどそうじゃないの。ただ傷口を塞いだだけ。皮膚の内側は傷んだままだし、失われた血液も戻らないわ」


 以前試したけれど、『治癒』と書いたカードは発動しなかった。試行錯誤の上、発動にいたったのがこの『止血』だった。

 瞬間移動なんてものができておきながら、治癒はできないなんてどういう理屈よ。まったく……。

 異世界ファンタジーなんだったら、傷も病気もガンガン癒せなさいよね。


「……レ、レンカリオさまは、女神さまなんですか?」


 脈絡もなくトンチンカンなことを真顔で訊ねられ、ワタシはしばしの間、ベニニと見つめ合った。

 笑うところかしら? でもそれにしちゃ、表情が真剣よね……。

 女神みたいな力があるのに今日まで私を助けてくれなかったんですか? とかいう高度な嫌味だとしたら秀逸だし、喜んで受け入れるんだけど……ウーン?

 ……あれ。じゃあなに? やだ。うそ。まさかこの子、本気で言ってるの?


「いえ、違います。全然そンなんじゃありません本当に」


 思わず素になって答えちゃったじゃない。


「だ、だって、こんな奇跡みたいなことができるじゃないですか! そんなの女神さまですよ!」


 頬を上気させ、興奮気味にワタシの手を取ったベニニ。

 ああもう。お馬鹿ね……。


「わたしが女神なんて上等な存在だったら、あなたをこんな目に遭わせるわけがないでしょう? わたしが女神だったら、あなたがここへ連れてこられたその日に、あなたを救い出して……ううん。もっと前。あなたが連れてこられる前に父を止めていたわ。でも、わたしは我が身の都合であなたを犠牲にしてきた。自分から動くことができたのに、兄が動くことを待っていた。あなたの言う、奇跡みたいなことができるのにね……」


 事実を告げると、ベニニは悲しそうな目でワタシを見た。


「わかったでしょう? わたしは女神からほど遠い矮小な人間よ。……ああいやね。まるで懺悔しているみたいだわ。そんな資格もないのに。やれやれね」


 ベニニがワタシを責めなかったから、その優しさに甘えて調子に乗ってしまった。本当にやれやれだわ。


「ベニニ、よく聞いて。わたしはこのあと、父の元へ行くわ。そこにはあなたを逃がした兄もいる。心優しい兄は父の悪行の数々が許せないのね。だからこそ危ない。父は自分に歯向かう者なら息子だって容赦はしない残酷な人間よ。逃げ出したあなたのことも許さない。絶対に見つけ出すまで諦めない……。兄もあなたも、あなたの家族や村でさえ、どんな目に遭うかわらかない。ここまでは想像できるわね?」


 聡く鋭いベニニは、青ざめた顔で何度も頷いた。


「それを阻止するべく、わたしが父の元へ行く。ベニニ、あなたを殺めたと偽って」

「あたしをあやめたと、いつわる……?」

「殺される前に死ぬ。父の手を逃れるにはそれが一番有効よ。本当に死んでもらうわけじゃないから、誤解しないでよね?」

「えっと……、レンカリオさまが、逃げ出したあたしを捕まえて殺したと、そう領主さまに嘘をつくってことですか?」


 顎下に手を当てる仕草をしながら、ベニニがワタシの意図をずばり言い当てた。

 理解が早い。

 ワタシは嬉しくなり、ついベニニを抱きしめた。


「そう! その通りよ。あなたを殺めることで、わたしは父への忠実と信愛を示す。そして、次期領主には自分が相応しいと言って、兄をこの領地から追い出す提案をするわ。わたしは日頃から父が好む人格を演じてきた。必ず上手くいく……。ベニニ、あなたは兄と一緒に王都に逃れてもらうわ――」


 二人だけじゃない。義姉あねも、キサリティアも一緒に――ね。

 あら、なあに? お前もテキトーなところでキサリティアとトンズラするんじゃなかったのかって?

 ええ、そのつもりだったわよ。王都の叔父の元で行儀見習いをする手はずだって整えていたわよ。

 でも、ベニニが来て気が変わったのよ。

 ていうか怖気づいたのよね。正直に言うなら。

 好色大魔神の父ゴスメズは、レンカリオ(ワタシ)やトゥマが生まれる前から、村に赴いては気に入った娘を連れ帰っていたわ。

 さすがに、子供が幼いうちは自重していたっていうか、ポーリーから窘められていたんだけどね……。

 まあ、そんな奴だから数年で限界がきて、ベニニを連れ去ってきたわけよ。

 たかだか十五の女の子を攫ってきて、離れの部屋に閉じ込めて、好き放題しようとしていたのよ?

 そんなのキツイじゃない。たまんないじゃない。

 元一般人ごときの精神力で、見て見ぬふりできるわけないじゃない。

 だからシフトチェンジしてやったのよ。

 ワタシは残る。トゥマとキサリティア、それからベニニを王都へ逃がすってね。

 そのために色々と手を打ってきたわ。

 ジュジュとノロイが集めてきたゴスメズの悪行を、トゥマの耳に入るようテルトに芝居を打ってもらった。

 ベニニのことは四六時中警戒していたわ。ゴスメズに触れられないように、毎晩見張ってた。ノロイ達にゴスメズの体調を悪化させて、手を出す気を起こさせないようにもした。

 でもそれだけじゃ足りなかった。貞操だけ守れればいいってもんじゃないことくらい、ちょっと考えればわかることなのに……。

 ベニニをこんなに痩せ細らせ、心に傷を負わせてしまった……。


「――レンカリオさまは一緒じゃないんですか? どうして?」


 真っ直ぐに問われ、ワタシは目をしばたいた。

 なにがどうしてなのかしら?


「レンカリオさまはご自分を責めていましたけど、あたしを救ってくださいました。一番いい方法じゃなかったのかもしれないけど、いま、あたしを救ってくれたことに変わりはありません。レンカリオさまはお優しいです。領主様とは違います。領主様のように酷い方なら、ここに残るのもわかります。きっと楽しいのでしょうから……。でも、レンカリオさまは苦しそうです。ずっと。あたしのような身分の低い者を心配して、心を痛めてくださっています。そんな人がここの次期領主になるなんてよくありません。トゥマさまやあたしが逃げ出せるのなら、レンカリオさまも逃げ出せるんじゃないんですか? それなのに、どうしてあたしを殺す嘘までついて……、どうしてあなたがそんなに守らなくちゃいけないんですか? まだ、こんなに小さいのに……」


 ああ、そういう〝どうして〟ね……。


「……怖いからよ」

「怖い?」

「ええ。わたしだって最初は、こんなに家とっとと逃げ出してやるつもりだったわよ。でもベニニ、あなたが来て怖くなったの。父の非道はずっと耳にしてきたけど、目の当たりにしたことはなかった。聞くと見るじゃ大違いっていうのは本当ね。あなたを見て、知って、初めて人々の苦しみが心に滲みた。そうしたら、自分だけ逃れるなんて怖くてできなくなったわ」


 そう。怖いから。怖気づいたから。決して正義感なんていう上等なもんじゃねーのよ。

 残って呪いに殺されるのなんてもちろん怖いわよ。けど、ゴスメズに虐げられる人達を見捨てて自分だけが助かるのも怖いのよ。

 だから残る。理由はそれだけ。


「あたしのせいで……」

「違うわ。どうしてそうなるのよ。あなたのせいじゃない。わたしは、わたしの恐怖のために残るの」


 ただただ自己中心的なだけよ。


「それにたぶん、わたしにはできるから。今夜みたいに、あなたを守れるその力があるから。だからやらなくちゃならないのよ」


 転生したのも、転生前と同じように呪いが見えたのも、魔術に用いる魔術文字がなじみのある漢字に酷似しているのも、そのためなのかもね。


「……ありがとうございます、レンカリオさま。あたしを救って、守ってくださって」

「やめて。わたしがやってきたことと、やらなかったこと、それを知らないからお礼なんて言えるのよ」

「そんなことありません」


 ベニニは微笑んで言った。強い目をしていた。

 ワタシはなんだか、見透かされているような気分になった。

 ベニニはもう一度同じことを口にした。


「そんなことありません」

「わかったから。その、ありがとう……」


 少し話し過ぎたわね。

 ワタシは、ベニニに食事と仮眠を取るよう言った。食事はテルトに用意してもらっているし、仮眠にはワタシのベッドを使ってもらう。

 ……と、その前に、とても頼みにくい、とても申し訳ない頼み事をしなくちゃだわ。


「ベニニ。髪を一房もらえるかしら?」

「はい。――はい?」

「ごめんなさい。殺人偽装に必要なのよ」



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