たまごの国の日和子
なろうラジオ大賞5参加作品です。
使用ワードは「たまご」。
私、星野日和子。高校2年生!
ある晩部屋で寝ようとしたら、急に明るくだだっ広い空間に放り出されて…
そこには、5歳児くらいの大きさの、ハンプティ・ダンプティみたいなたまご人間たちがいて、めちゃくちゃシリアスにどうやってここを出るかを話し合っていたの。
黙って聞いていたら、バトルロワイヤルが始まっちゃってもうびっくり☆
私、どうしたらいいのー?!
…みたいなことが起こったわけだが、状況に一切絡めない上にこの場にいる全員に無視されているような状態で結構な時間が経ったので、私はいいかげん飽きてきてしまった。
とりあえず、たまごを全部割ったら私の勝ちって事でいいんだよね。
手近な所に居たたまごを試しに抱き上げてみた。
うん、思ったよりは軽いかも。
当然たまごは暴れたけれど、私はできるだけ腕を高く上げ、力いっぱい床に叩きつけた。
グシャッ。
おお、派手に割れたなぁ。まずは一個目。
でも、割れた音で、他のたまごたちが一斉にこちらを見た。
…バトルロワイヤルやってる割に全員ヒビすら入ってないの何なの?
やる気がないならさっさと割れてよね。私、帰りたいの。
たまごたちは私を共通の敵認定したらしく、こちらに向かってきた。でも、お互いぶつからないようにゆっくりだし、武器は木魚を叩くバチみたいに先が丸い。全く割る気が感じられない。そもそも私、割れないし。
私はゆっくり群がるたまごを千切っては投げ千切っては投げ、あっという間にたまご側は最後の1人となった。
「お前は…お前はいったい、何なんだ…!」
最後のたまごは震える声で私に問うた。聞かれたので、
「私は星野…」と名乗りかけたが、ちょうどその時、最初に割ったたまごの残骸がキラキラと輝きはじめた。そして、
〈進化の条件が満たされました。これより、脱殻した生命体から順次第2形態に移行します。〉
という声が響き、卵の殻の中から子犬くらいの大きさのひよこが現れた。
「ひよこ…?」
私がポカンとしていると、最後のたまごが歓喜に満ちた声で
「やったぞ…我々は、滅びを免れたんだ…!進化の道は示された!星から来たりし進化の女神に感謝を!!」
と叫び、床に思いっきり頭突きして割れてしまった。
「えっ怖…」
引き気味で呟いたら、次の瞬間、私は元の場所に戻っていた。
「マジで意味わかんないけど、まいっか。」
日常に戻った私は、遠く離れたたまごの星で自分が進化の女神として住人達から崇められている事など知る由もなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございました!