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7話 学校

7話 学校


ウルフォード伯爵領には大小様々の街や村がある。


ジャビ村は村にしては大規模になっているが、街と呼ぶには人口が足りない。


ウルフォード伯爵領【領都:ノイトラージュ】には先代伯爵肝入りで作られた【領都学校:トライゼン】がある。


トライゼンは6歳以上の子供が入学でき、最大で15歳迄となっている。


そんなトライゼンには伯爵領に住む他貴族の子女や有力な商会の子女、村や街の有力者の子女が入学する事が多く、一般人の子供が入学することはあまりない。

あまり無いだけで、トライゼンの入学試験に合格できれば入学自体は可能だ。


この国にはいくつもの貴族が領地を持っているが、学校を作っているのは片手の指で足りる程度しか存在しない。


なので他の領地からトライゼンに入学する貴族の子女も多くいる。


その為、学生寮やその他の施設がノイトラージュには数多く存在する。


そんな学生寮の一つ【ルーカス】にテグスは入寮した。


「はぁー、やってらんないよぉ」


自室として与えられたルーカスの201号室。

広さは6畳程度で、備え付けのベッドと机と本棚があるだけの簡素な部屋になっている。


数日前にジャビ村を馬車で出て、2日掛けてノイトラージュに到着。

ノー勉のまま入学試験を行い、次の日には合格が発表され編入という形でトライゼンに入学した。


現在他の学生はトライゼンで授業を受ける時間帯だが、テグスは学生としての準備を何もしていなかったので授業に出る事が出来ない。


その為制服や教科書などが揃うまでは自室待機となってしまった。


ジャビ村では【瞑想】やその他のスキル取得を目指す事が1日の大半を占めていたので意外とやる事があった。


しかし自室待機を命じられているので【瞑想】しか出来る事がなく、他のスキルに至っては広いところでしか出来ないので【瞑想】が飽きればやる事が無い。


スマホかゲームがあれば時間を忘れて暇つぶしが出来るのだがとどうしても考えてしまう残念なテグスは与えられたベッドの上でウダウダと愚痴っていた。


コンコン


ところがそれも終わる。


時刻はお昼を少し回った頃。

部屋のドアをノックする音がしたので変化を望んで応じた。


「はい」


「テグス君、制服だけ用意できたので午後からの授業の見学なら出来るけど行くかい?」


扉を開けて外に出ると寮監のミライドが制服と思われる黒い服を手に持って立っていた。


「はい、行きます。暇なので」


「ふふっ、そうだと思った」


何がおかしいのか笑いながら制服を渡してきたので少し時間をもらって着替える事にする。


(なんだこの某魔法学校の様な制服は)


エクスペリアームスしたくなる黒い制服に腕を通していき、ローブを羽織れば入寮する前にチラリと見た学生と遜色ない服装となった。

当たり前か。


「うん、似合ってるね」


うんうんと頷くミライド。

そうかなぁと思いながらも色合いはかなり好きなので照れる俺。


「じゃあ行こっか」


ミライドが先導する形で寮を出る。


寮を出るとトライゼンの街並みが広がる。

古き良き石造の城塞都市を思わせる様な街並みを歩いていると目的地にはすぐについた。


まあ言っても学生が住む寮と学校の距離感ならこんなものだろう。

徒歩10分も経過してないと思う。


学校の入り口には守衛さんが哨戒任務についており、守衛さんは腰帯に剣をぶら下げでいた。


「彼らは騎士なんですか?」


「そうだよ、伯爵肝入りの学校だからね」


「へぇ〜」


街並みを歩いている時から気になった事があればミライドに質問をしているが、口癖の様に伯爵をヨイショしているので相当好かれているのだろうな、伯爵は。


「さて、ここが午後の授業を行う訓練場だよ」


「授業が訓練?」


「一応伯爵は軍務のお方だから、常在戦闘のお心を持つ素晴らしいお方なんだ」


俺が思っていた学校とはちょっと違う様で少しだけ楽しみになった。


「おーい、テグー!」


「ん?」


ミライドと訓練場の視察を行なっていると俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。


(この学校で知り合いなんて数人しか居ないが…)


「やっぱりテグだ!久しぶり!」


「ランスか、元気にしてた?」


村のガキ大将ことランスが駆け寄ってきた。


手紙では近況報告を受けていたが久しぶりに見ると随分体格が良くなっている。


「ランス、なんかデカくなったね」


「これでも一応学年主席なんだよ、おれ」


「それってすごいんじゃない?」


「そうか、ランス君はジャビ村の出身だったね」


俺とランスが旧交を深めていると隣でことの経緯を見守っていたミライドがしたり顔で話に入ってきた。


「ミライドさんお久しぶりです!テグは俺たちのリーダーだったんです!」


「「リーダー?」」


ランスが嬉しそうにミライドの話に乗っかるが俺もミライドもランスの言った「リーダー」という単語に疑問系を持った。


声がハモった疑問をさらに感じたミライドがコチラを見るが、俺だってランスの言っている事がよくわからない。


「なんでテグス君まで疑問系なんだい?」


「ランス、俺リーダーなんてしてないでしょ?」


「勉強教えてくれたり、戦い方教えてくれたりしたじゃん」


「何言ってんだこいつ」と言わんばかりに不思議そうな顔を浮かべてランスがそう言う。


(確かに泣き疲れたから学校入学したい奴らに勉強教えたり、冒険者に憧れた奴らに訓練付けたことはあったけど、それでリーダーになるのか?)


昔ガキ大将だったランスをボコボコにし、冒険者と関わりを持ってから自分の世界だけで無く周囲の存在にも目をかける様になった事で、当時のランスがたまにつるむ知り合い程度の仲になった事があった。


それから何度も顔を合わせていき一緒に遊ぶとかは終ぞ無かったが、入学準備に付き合ったりとそこそこの交流は確かにあった。


あれで俺は彼らのリーダーになっていたようだ。


「いつのまに…」


「本人が知らぬ間にリーダーに抜擢されることとかあるんだね」


俺が戦慄してる横でミライドは面白いものを見たと楽しそうな表情を浮かべている。


「それでなんでテグがここにいるの?」


「父さんからの命令で入学するコトになったんだ」


「じゃあ!テグは俺の後輩になんの!?やったぁ!」


ランスはその体格をふんだんに使用して喜びを表していた。


「ミライドさん、俺はランスの後輩?」


「ランス君は最高学年だからそうなるね。テグス君は1年生に編入だよ」


「ひゃっほーい」と声をあげていたランスだったが俺が1年生に編入すると聞いて喜びが限界突破した模様でついには肩を組まれた。


「おっと」


まあその腕を捻ってやったんだけどね。


「いて、いててて」


ランスは痛がりながらもニヤケ面はそのままだった。


「そういえばランスはなんでここに?」


「あっ、やっべ。ミライドさんがいるってことはルーカス寮だよね?じゃあ今夜晩御飯食べに行こうよ!約束ね!」


と、言うだけ言って爆速で後者の方へと戻っていくランス。


「えっと…」


「彼にも授業があると言うことさ」


そう言ってミライドは胸元から懐中時計を取り出して見せてきた。


「後数分で午後の授業が始まるね。ランス君の教室は遠いから間に合うといいね」


ニヤニヤと笑うミライドはおそらく相当人が悪いと思う。


「さぁ僕らも行こうか。あっちで先生がこっちを見てるから、紹介するよ」


ミライドが校舎の方を指差すと十数人の人影がこちらを見ていることに気がついた。


「まぁゆっくり行きましょう」


俺がそう言うとミライドは笑って頷いた。







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