2話 村での存在
2話 村での存在
俺の1日は妹達の笑い声で始まることが多い。
長女のララと次男のレグは歳が1つしか違わない為か非常に仲が良く、俺とララの様にキャッキャする間柄でも無い(といっても俺とララも5歳程度しか離れていない)のでララとレグは朝っぱらから喧しい。
俺は父に似て寡黙で言葉数が少ないので尚更かもしれない。
俺は朝が弱いので基本的にいつも1番最後に起きる。
というか起こされる。
ララとレグに。
まず父が朝早くから畑に向かい、母がそれを見送る。
そのあとララかレグのどちらかが起きて2人で遊びつつ飽きたら俺を起こしに来ている、らしい。
母から聞いたので定かでは無い。
「「にいちゃー、おきてぇ!」」
2人が俺の耳元で叫ぶので耳がキーンとなるがもはや恒例なのでダメージは少ない。
「はいはい」
「はいはいっかい!でしょぉ」
気怠げに返事を返すと母さんの真似をしたララが注意を飛ばしてくる。
(そんなとこまで似なくていいのに…)
母さんに良く似た桃色の髪の毛にキリリとした目の形、そして母さんがよく俺に言う言葉を真似し出したらそれはもうこの時だけはとてもうざい。
しかも母さんよりもキンキンと響く声なので相まって良く無い。
「かあちゃは?」
「かあちゃはねぇ、ウフフどこでしょー」
ララは非常に不愉快な疑問だけを残して走り去って行った。
「レグ?」
いつもはレグも一緒に去っていくのだが何故かモジモジとしたレグが横に居たので問いかける。
「にいちゃ、きょうも、もりいく?」
「きょうはやすみ」
上目遣いなんてどこで覚えてきたんだコイツと思いながら首を振ると途端にパァーッとした笑顔になったレグ。
「じゃああそぼ!」
そう言って俺の手を強引に握りどこぞに連れてこうと歩き出したのでしょうがなく着いていく。
「お腹すいたぁ」
「レグも!」
なんでレグが朝ごはんを食べていないのか疑問に思いつつもレグに連れられて食卓へと向かうと俺の分の朝食ともう一人分が机に置かれていた。
「レグもまだなの?」
「にいちゃとたべたい!」
そう言われてしまっては頷かないわけにもいかないので俺とレグは席についた。
今日の朝食は牛乳とカエル肉のベーコンと目玉焼きとパンだった。
俺は転生する時に目立つ事が嫌だったので条件として特別扱いしない事とした。
だからてっきり田舎の貧乏農家か街で一般人的なのに転生すると思っていたのだが、開拓村の農家のそれも何個もの畑を任される豪農の様な扱いの家に生まれるとは思わなかった。
俺自身それなりに環境改善に着手したがそれでも自力がなければ出来なかっただろう。
そんなこんなで異世界転生して、出身地ランダムにした割にはいい生活が送れている。
閑話休題
「レグ食べ方」
「だってぇ」
俺には前世の記憶があるので食器の使い方程度に苦戦することは無いが、レグはまだ2歳なのでフォークの持ち方がグチャグチャだ。
それに加えて皿や口の周りにも食べカスが散らかっていて見た目も悪い。
俺はそんなレグに注意を飛ばし、指導をしてやる。
言葉足らずになるのは父の影響もあるので腕や指を使って丁寧に教えてあげるとレグはとても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「あー!レグずるい!」
そうして2人で朝食を食べすすめていると食卓の扉が盛大に開き、ララが怒ったと体で表しながら指差してきた。
「ララ、うるさい」
「だってぇ!」
たたたっと走り寄って喚き散らすので注意するとレグを指差しながら非難の声をあげる。
(何考えてるかわからんなこのくらいの歳の子は)
俺はララとレグのやり取りを無視しながら朝食の続きを楽しんだ。
◼️
朝食を食べたあとはレグの冒険(家の周りと父の畑周辺の散策)に付き合い、昼ご飯を家に帰り食べてからララも合流して村の広場にやってきた。
「にいちゃ…」
広場にやってきたのだが、絶賛2人にしがみつかれて動けません。
というのも、幼い時から森へと入っていたので俺はあまり人間関係に興味がなく知らなかったのだが、村にはガキ大将なる輩がいるらしい。
そいつは俺より2つ年上の10歳で、村にいる殆どの子供達を纏めているそうだ。
そのガキ大将は村の有力者の子なんだとさ。
何故か俺の隣でララ達と同じ様にプルプル震えている、今知り合った「トッポ」と言う少年から聞いた。
「あいつら大人の目がないところでしか虐めてこないからタチが悪いんだよぉ」
「ふーん」
トッポはしがみついてこないだけマシ。
動きを阻害されるのは怠いが、ララ達は泣かないだけマシだな。
周囲を包囲する様に展開するガキ大将及びその一派を見回す。
何故俺たちがこの様な目に遭っているのかは定かでは無いが、トッポが言うにはララとレグがガキ大将の命令に何故か背いたからだそうだ。
「だってにいちゃと遊びたかったんだもん」
「そうだもん」
ララが目を伏せながら言うと追従する様にレグも言う。
「そうか」
俺は妹達を悲しませる輩に対して怒りを覚えた。
前世では兄弟というものが居なかったので今世でララとレグが居てくれて楽しい日々を送れている。
怠いと思うこともあるが嫌いになる事はない。
そんな可愛い妹達を悲しませるコイツらに生きている資格があるのかとふと疑問に思った。
(ないな…、幸い人の目は無いし、やるか)
俺は妹達の手を離し、2人を抱き合わせ目をつぶらせる様に手を当てた。
「いいっていうまで、あけないで」
「「わかった」」
「うん、いいこ」
2人の頭を撫でてあげると2人は言いつけ通り目をこれでもかとぎゅっと瞑った。
それを確認してからふと視界にトッポの姿が入る。
「邪魔」
「う、うん。僕も目瞑っておくね」
トッポはそう言うと妹達を守る様に抱きしめて目を瞑った。
「おいおい!ママごとなら俺たちも入れてくれよ!」
「ゲハハ!まあ俺たちはそんなお子ちゃまでも無いがな!」
「うるさい黙れ」
ガキ大将の取り巻きが喚き立てたので静かに口封じする。
物理的に。
地面に転がっていた石を【投擲】で思いっきりぶつけた。
「あぎゃっ」
「ぐぅ」
2人の脳天にクリーンヒット。
「おい何をするんだ!」
「うるさい」
「おぐっ」
背後にいたヒョロ長い奴がもの言いながら近寄ってくるが振り向きざま股間に右ストレートを叩き込み黙らせる。
「なんだコイツ!やっちまえ!!」
「うわー」
ガキ大将が周りを取り囲んでいる少年少女達に命令を出す。
「ふぅ」
が、それも1分保たなかった。
木の棒を持つ輩もいたが、なんのスキルアシストも無くただ振り回すだけの様だったので殴って取り上げ、【棒術】のアシスト込みでガキ大将以外をボコボコにした。
周囲には死なない程度に打ちのめされて這いつくばる子供達。
これで俺が大人だったらもしかしたら事案だったかもしれないが、ララ・レグ・トッポが虐められている現場に憤慨した兄である俺が戦ったなら喧嘩のうちに治るだろ。
バレたらの話だけどな。
「おい、こっち来い」
俺は呆然と立ち尽くすガキ大将の腹に石を投げつけ正気に戻し(腹は抑えて痛そう)呼びつける。
怯えた表情で寄ってきたそいつの頭を殴りつける。
「次泣かせたら」
そう言って持っていた木の棒を半分に折る。
「わかった?」
涙でぐしゃぐしゃの表情を浮かべながら千切れんばかりに首を縦に振るガキ大将。
「それと言うなよ?」
何を言っても首肯しそうだったので黙っておくように言うと案の定首を縦に振っていた。
ふと何か気になりガキ大将のズボンを見ると股間部分にシミが広がっていた。
見なかったことにして、妹達の元へと戻り「まだあけちゃダメ」と言ってからトッポごと立たせてその場を後にした。
遠くから鳴き声の様なものが聞こえたけど、気のせいだろ。
◼️
帰り道にはララとレグの表情は明るくなり、いつもの喧しい声量で楽しそうに話していた。
隣には何故か一緒にトッポも歩いている。
「今日は災難だったけど、ほんとありがとう!」
「どこまでついてくるの?」
「うぇえ?何言ってるのさ?」
トッポも俺が反応しない事をいいことに?延々と隣で喋り続けていたので釘を刺そうとすると心底驚かれた。
「?」
「君の家の隣に住んでるんだけど僕」
「え?」
ちょっとだけ、周りにも目を向けようと思ったある日の帰り道だった。




