はじめての異世界漁業①
青い空、白い雲、いい天気だなぁ。
雲が流れていくのをぼーっと眺めていた。
急展開でビックリだ。
親父が死んで田舎に帰ったと思ったら、急に変な空間に連れてこられた後、俺は「異世界」に来ている。
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「私の世界に魚食文化を浸透させてください!!!」
そういって土下座する知らない女性、困惑する俺、急に立ち上がる女性。
「時間が無いんです!!!すみません!!!えい!!!」
そういいながら彼女が俺に向けて指をさした瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。
「なっ…!?」
パニックになりそうだったが、不思議と気分が落ち着き、自分に流れ込んだ「なにか」が彼女、いや、「女神」の記憶だと理解した。
女神の特権である「転生魔法」を使い、自分の世界へ魚食文化を広めるため、親父をこの空間に連れてきたこと。
第2の人生と女神の祝福を授ける代わりに、自分の世界に魚食文化を広める立役者となって欲しいと提案したこと。
そして、元の世界の親父の状況を見せ、既に貴方は死んでいるということ。自分には助けることができないと伝えたこと。
そして、自身が死んだ後の世界を見て笑う親父に「俺より向いている奴がいる」と俺を推薦されたこと。
一連の女神の記憶がまるで自分が体験したかのように感じられた。
葬儀の後にお袋から聞いたが、親父はずっと俺の事を気にかけていたらしい。
俺は連絡もしなかったのに、いつか戻ってきたら快く出迎えてやろうが口癖になっていたそうだ。
親父には呆れられていると思った。
大学まで行かせてもらったくせに、すぐに会社を辞め、魚と関係のない仕事で日々を過ごす自分などに価値はないと強く思い込んでいた。
そんな俺でも、あいつならできると心から信じてくれている親父の気持ちが強く伝わってきた。
「悪いが妻のいない世界に興味は無いし、好奇心旺盛なヒロミなら、多分行くって言うさ」
そう言ってガッハッハと笑うオヤジを見て、相変わらず豪快だなぁ…と感慨深くなっていたところ
「理解していただけましたか…?」
「はっ!?」
気がつくと女神が顔を近づけて心配そうにこちらを見ていた。
「その…今見ていただいた通りお父様には断られてしまいまして…
息子であるあなたに私の世界へ来ていただきたいのです…」
なんとも胡散臭い話だが、今の一瞬で彼女が超常的な存在だということは理解出来た。
「ちょっとまってくれ、いくら親父が推薦してくれたとはいえ…」
そう言うと女神は
「時間が…時間が無いんです!!
お父様に断られると思ってなかったので、ここに人を呼べる時間が残りわずかなのです!!」
「そんなこと言われても…!」
「転生じゃないので!転移なのでぇ!どうにか元の世界に戻すこともできますからぁ!!お願いしますぅううう…」
べそかきながら俺にすがりついてきた。
この人、本当に女神なのか…?
「…1日考えさせてくれないか?」
突拍子もない話だが、親父が俺を信頼して託してくれたことはわかったし
女神が本当に魚食文化を広めたいと考えていることも伝わってきた。
「前向ぎに、かっ、考えてくれるということでずが!?」
「あっ…あぁ…」
「やったぁ!!!
じゃあ、明日になったらまたここに召喚しますから!!答えを聞かせてくださいね!」
そういうとまた強い光に照らされ、俺は元の場所に戻っていた。
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そしてお袋にはしばらく海外へ仕事に行くことになったと伝え、親父の友人に挨拶を済ませたあと、女神に召喚されるのを待っていた。
前回同様に光に照らされて女神に召喚された途端、そこには号泣しながらさらに強い光を放ちながら浮いている女神がいた。
「すみませぇぇん!限界です!!心は決まってるみたいなので、私の世界に飛ばしますね!!」
「えっ…」
「また魔力が溜まったら連絡しますから!!街の近くに飛ばすのでどうにかしてくださいね!」
「ちょっ、まっ…え、連絡ってなんな…」
そう言い終わる前に、全く知らない山道に飛ばされていた。
えっ、俺、こっからどうするの?
てか女神の祝福とかどうなったの?
あまりにもブラックな異世界生活が始まった。
適宜編集しますm(._.)m