影の殺人者
天音 空を待ち受ける者とは.....
僕は日本軍に入隊した、ある男の運命を変えるために........……
「はぁー。」
「どうしました?先輩?」
「いや、なんでもないよ。」
「そうですか?ならいいんですけど…………」
僕の名前は『天音 空』
今年で21歳になる大学4年生だ。
僕には2つ下の後輩がいるのだが、その後輩が僕のことを慕ってくれているのだ。
そんな後輩に心配をかけないためにも気を引き締めないとな。
僕は今日から陸上自衛隊に入隊し、とある男を監視・保護する任務に就くことになっている。
そのとある男は僕の大切な人でもあり、命に代えても守らなければならない存在なのだ。
そして今は入隊式に向かう途中であり、これから1年間お世話になる駐屯地へと向かうところである。
「ところでさっきのって溜息だったんじゃないですか?」
「えっ!?あぁ、違うんだ!ちょっと考え事してただけだから!」
「そうなんですか?まぁ、それなら良いですけど……」
危なかった〜。危うくバレるところだったぜ。
この子は勘が良いというか鋭いんだよな〜。
そんな会話をしながらしばらく歩いていると、ようやく目的の場所へと到着したようだ。
「ここが陸自の駐屯地なんですね〜」
「そうだね。やっぱり大きいよね〜」
目の前にある建物は、パッと見でも分かるほどに大きかった。
「それじゃ中に入りましょうか!」
「うん。行こうか!」
2人で駐屯地の中に入ると、そこには大勢の自衛官達が居て、僕らの方を見てきた。うわぁ……なんか注目されてるし恥ずかしいな……。
「君達新入隊員かな?」
1人の男性自衛官が話しかけてきた。
見た目的には30代後半くらいだろうか? 身長は180cm以上あり、体格も良いことからかなり強そうである。
「はい!そうです!」
「そっか。俺は第12旅団所属、久瀬 智也だ。階級は3尉で、君達の教育係を担当することになった。よろしく頼むよ。」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
「ふむ。元気があってよろしい。」
良かった。優しそうな人みたいだし安心したよ。
「とりあえず着いてきてくれるかい?色々と説明があるからね。」
「分かりました!」
こうして僕らは久瀬さんの後について行きながら駐屯地内を歩いて行った。
それからしばらくして、目的地に到着したのか久瀬さんが立ち止まった。
「まず初めにここで行う訓練について説明するね。」
久瀬さんの説明によると、ここでは基礎体力の向上を目的としたトレーニングを行うらしい。その他にも、武器の扱い方などの基本的な戦闘技術を学んだりもするようだ。また、座学に関しては自衛隊に関する法律や法令などについて学ぶことになるようである。
「まぁ、ざっとこんな感じかな。何か質問はあるかい?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました!」
「そうか。それは良かった。それじゃ早速始めようか。」
それから僕達は久瀬さんの言う通りの基礎トレーニングを始めた。ランニングをしたり腕立て伏せをしたりなど、様々な運動を行った後、次は射撃場へと向かった。そこでは実際に銃を使用して的を狙う練習をした。その後、今度は銃剣を使った模擬戦を行い、その後は休憩を挟んで再び筋トレなどをして1日が終わった。
「お疲れ様。明日もまた同じ時間に集合だ」
「ではそろそろ寮に案内するか」
久瀬さんに連れられてやって来たのは大きな建物だった。
入り口には『陸士隊舎』と書かれている。
「ここが男子棟で、こっち側が女子棟になっている。基本的にはどちらも共同生活だが、個室が欲しい場合は希望すれば用意されるはずだ。あと、食事の時間なども特に決まっていないから自由にしてくれて構わない。それと、基本的に外出する場合は許可が必要になってくるが、その申請も忘れないようにな。」
「はい!分かりました!」
「よし、それじゃ今日はこれで解散だ。ゆっくり休んでくれ。」
「「はい!お疲れさまでした!!」」
久瀬さんが去った後、僕は後輩と共に自分の部屋へと向かうことにした。ちなみに後輩も同じ階である。
「やっと終わったね〜。まさかここまでキツイとは思わなかったよ……」「私もです……正直もう動きたくないです……」
後輩は既にヘトヘトといった様子だった。
まぁ初日だから仕方ないか。
そんなことを考えているうちに、どうやら部屋に辿り着いたようだ。
「ここが僕たちの部屋か〜。思ったより広いね。」
「ですね!あっ、先輩!机の上に紙が置いてありますよ!」
「ホントだ。えーと、何々?『この度は入隊おめでとうございます。本日から貴方方は自衛官としての第一歩を踏み出します。そして、これから多くのことを学ぶことでしょう。しかし、決して無理をしてはいけませんよ?貴方方の身体と心を大切にして下さいね。それでは良い自衛官ライフを!』だってさ。優しい人だな〜」
「そうですね!良い人みたいですし安心しました!」
本当にそうだな。これからお世話になるんだから良い人であってほしいよね。
「とりあえず今日は色んなことがあったし、シャワー浴びたらすぐに寝るか〜」
「はい!賛成です!」
ふと、寝ているときにこの自衛隊に入った理由を思い出した(そうだった、あの男を見つけなければ)
ここで、あの男について説明しておく。彼の名は船井拓也俺を変えてくれた人だ。
俺の家は代々続く旧家で、親父は会社を経営しており、かなりの金持ちであった。そして、俺はそんな家の長男として生まれてきたのだ。俺は昔から勉強やスポーツなど様々な分野でトップの成績を取っており、周囲から期待されていた。
そんな俺は、小さい頃から将来は父親の跡を継ぐための勉強をしていた。最初は楽しかったが次第にいやになっていった。
そんな時にそばにいてくれたひとが船井拓也だ。俺のいとこであり、よき理解者だった。
一人っ子だった俺の兄のような存在だった。いつも優しくて一緒に遊んでくれたり、時には叱ってくれたりもしてくれた。
俺は彼に憧れていたし、尊敬していた。いつか彼と肩を並べて歩けるような人間になりたいと思っていた。
だが、彼は突然行方不明になってしまった。2023年の当時、ニュースでもかなり大きく取り上げられていて、寝込むほどショックだった。
彼は自衛隊に入っていた。.....今は2020年だ、大きな代償と引き換えに、タイムリープしてきたのだ。
2023年になる前に失踪した理由を突き止める、そして失踪を阻止する。そのために、ここに来た。
「ふわぁ〜よく寝た」
昨日の疲れもあってか、ぐっすり眠ることができた。
隣を見ると、まだ後輩は眠っているようだ。
「朝ごはん食べに行こうかな」
朝食を食べ終えた後、僕らは久瀬さんのところに向かった。
「おはようございます!」
「おっ、来たな。早速訓練を始めるぞ」
久瀬さんの後に続いて駐屯地内を進んでいく。
「着いたぞ。ここは演習場だ」
目の前には開けた土地が広がっていた。
「ここでは主に近接格闘術の訓練を行う。まずはこの木剣を持ってくれ」
渡されたのは長さ80cmほどの木製の剣だった。
「それじゃあ今から君たち2人の相手を務める。まずは君からだ」
久瀬さんがそう言うと同時に、僕は構えをとった。
「ほう。いい姿勢だ。それじゃ行くぞ!」
そう言ってこちらに向かって走り出した。
次の瞬間、僕の視界から一瞬にして消えたと思うと、腹部に強い衝撃を感じた。
「うッ!?」
そのまま僕は後ろに吹き飛ばされてしまった。
「痛ってぇ……」
「今のを避けられなかったか。まあ今後に期待だな」
「次お前だ」
今度は後輩の番だ。
後輩は剣を構えると、一気に駆け出して行った。
「はぁああ!!」
しかし久瀬さんは難なくそれをかわすと、回し蹴りで後輩を吹き飛ばした。
「くぅ……」
「まだまだだな。」
「それじゃあ最後に模擬戦をやってみよう」
2人は距離を取ると、同時に動き始めた。お互いの動きをよく見て攻撃をかわしつつ、隙を見て攻撃を仕掛けている。しばらく攻防が続いた後、先に仕掛けたのは後輩の方だった。勢いに任せて振り下ろした一撃が見事に当たると思われたが……
ガキン!「え?」
久瀬さんはその攻撃を剣の側面を叩いて逸らした。
「終わりだ」
久瀬さんが突きを放つと、後輩の喉元ギリギリで止まった。
「ま、参りました……」
「よし、今日はこれで終了だ」
「ありがとうございました!!」
「「お疲れ様でした!!」」
「おう、おつかれ。しっかり休んで明日に備えろよ」
「「はい!」」
「後輩は先に戻ってて、俺は久瀬さんと話があるから」
「え、あはい、わかりました......」
「天音、話ってなんだ?」
「久瀬さんは船井拓也さんのことを知ってますか?」
その名前を聞いた途端、彼の表情が変わった。
「なんだあいつか、知ってるも何も私の親友だが」
「やっぱりそうですか!実は俺、拓也さんの従兄弟なんです!それで、久しぶりに会いたいなと思って!」
「そうなのか?なら今度連れてくるよ」
「本当ですか!嬉しいです!」
「あぁ、楽しみにしているといい。それじゃ私は戻るよ」
「はい!また!」
こうして、俺は2日目を終えた。
翌日、朝早くから僕たちは招集がかかった。
「これより、射撃訓練を開始する!全員位置につけ!」
どうやら銃を扱う訓練らしい。
「まずは基本中の基本である、的に当てることから始めるぞ」
そう言って久瀬さんはライフルを手渡してきた。
「これが、本物の拳銃……」
手に持つとそのずっしりとした重さを感じることができた。
「おい、早くしろ」
「す、すみません!」
慌てて構えると、久瀬さんの合図とともに引き金を引いた。
パン!! 乾いた音が鳴り響くと同時に、的の中心付近に穴が空いた。
「なかなかいいじゃないか。次はもっと遠くを狙ってみてくれ」
「はい!」
その後も次々と撃ち続けていく。
「ふぅ、結構撃ったな。そろそろ休憩するか」
「はい!」
「そういえば船井と会いたいって言ってたな」「はい、そうですね」
「今から会わせてやろうか?」
「え、良いんですか!?」
「あぁ、今から私の部屋に来なさい」
「はい!分かりました!」
そして部屋に入るとそこには……
見慣れた顔の船井さんがいた。
「あれ、なんでここにいるんだ?」
「船井さーん!!!」
思わず飛びついてしまった。
「うぉっ!?なんだよ急に」
「久瀬さん、一度二人きりにさせてください」
「分かった。10分経ったら戻ってくるぞ」
「はい、お願いします」
久瀬さんは出ていった。
「タイムリープしてきただろ」
「どうしてそれを.....」
「お前の顔見ればわかるよ。それに、そんなこと出来る奴なんて限られてるだろ」
「はは、確かにそうかも」「....俺の失踪を止めに来たんだろ」
「そうだよ。2023年に失踪するのを阻止すれば、未来は変わるはずだからね」
「そうか、でももう遅いかもしれないぞ」
「どういうことだ?」
「俺は2023年の1月11日に、何者かによって殺された。俺はループしてるんだ」
「何をしても無駄だった......これで8回目だ」
その時、久瀬さんの声が聞こえた「もうそろそろいいか」
「後で、またゆっくり話そう」「わかりました」
その日の夜はよく眠れなかった。延々と渦巻く感情が自分にまとわりついてくるような気がした。
第一章完
あとがき 運命はループするを見ていただきありがとうございます。始めての小説なので拙い部分もありますがご了承ください。好評でしたら次も出るかもしれません!!
見てくれてありがとうございます!!




