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8 クマはしつこい

始め主人公に水泳用のゴーグル付けてましたが、描写がくどいので消しといた。

 山田は風下に向かって走り出す、直ぐに数名の騎士が進路を塞いでくるが、怯む事無くスプレーを向ける。


「ぎゃあああああああああああああ」


 スプレーの効果は覿面で、喰らった二人の騎士が兜を掻きむしって悶えだし、直ぐに両隣の騎士達も目に刺激を受け堪らずに蹲た。


「い、いかん毒だ!」


 包囲を抜け出す山田と、崩れた騎士の様子を見た騎士隊長の口から焦りの声が漏れる。


 山田の予想外の動きに予想外の切り札、このままでは予想外の結末なりかねない、彼は険しい表情でマーグスに振り返る。


「マーグス様!」


「已むを得ん、好きにせい!」


「全員!スキルの仕様を許可する!」


 瞬間、騎士達が自らのスキルに魔力を注ぎ込み腕を掲げると、そこから風の刃が水の槍が魔力の衝撃波が山田へ走る。


 山田が突然背中を殴られる衝撃に転倒すると、その周囲に魔法が殺到し、木々を様々な属性が抉って行く。


「ま、魔法かよ!」


 木に身を隠しながら立ち上がり、背後を確認すると魔法が飛び交う中、何人もの騎士が距離を詰めて来る。


「くそ、騎士道はどうした!」


 悪態を付いても状況は好転しない、相手が風上に居る以上クマスプレーは使え無いし、何より射程が違う、山田は覚悟を決めると木影から飛びし、逃走を再開する。


 木々に隠れながら森を走る、逃げ足なら勝っているが引き離せない、背後を気にして攻撃を避けながらの逃走は、鎧を着た騎士たちを引き離せない程遅かった。


 山田の敏捷の値は確かに騎士達より高かったが、身体の値は大きく騎士達に劣った、そしてそれはスタミナという形で現れ、時を追う毎に彼我の距離は徐々に近づいて行く事になった。




「よし、あと少しだ!」


 騎士の中で一番足の速いカーニは、山田を射程に捉えつつあった。


 スキル攻撃に依る足止めは既に途絶えていたが、スタミナの切れかけた


「しね!」


「ぎゃーーーー!」


 雄叫びを上げながら、彼の頭上を騎士が飛び越えて行った。


「はえ?」


 思わず振り向いたその先には、後続の仲間達を振り払う、巨大なフォレストベアの姿があった。





「ゴアァァァアーーーーー!」


「ぬおーーーー」


 獣の雄叫びと、騎士の悲鳴があがったる、それはマーグスを護衛しながら後方を走る、騎士隊長の耳にも届いた。


「な、なにがあった」


 流石の異常に足を速めると騒動の場に駆けつけた。


 そこには命を落とし横たわる騎士達と、それらを足蹴にするフォレストベア、それを取り囲み必死に応戦する部下達がいた。


「な、こんな浅い所に!」


 それは、山田の実験で山の魔獣を狩り過ぎ獲物が不足したため、腹を空かせて山道近くまで彷徨って来たフォレストベアだった。




 本来ならフォレストベアが、この規模の騎士団相手に喧嘩を売る事は無いが、空腹の苛立ちや連日の騎士達の出す騒音、獣除けの不快な臭いや止めのスプレー缶の破裂した爆音でフォレストベアは今、興奮状態になっていた。


 そんな見境の無い獣が、追い駆けっこ中の隊列の伸びた騎士達の横っ腹に吶喊をしかけたのだった。


 不味い事に森での追撃のため、全員の武器が剣しか無い、この手の大物相手には盾と槍が必須である。


 山田の足止めに、際限なくスキルを使用したため、ソレすらも殆ど使えない。


 視界の悪い山中、行き成り不意打ちを喰らった騎士達に、瞬く間に被害が拡大していく。


 武装も隊列も地形も、騎士にとって不利な状況だが最大の足枷が別にあった。


「死んで時間が経つと鑑定できぬ」


 そんな理由で付いて来た、マーグスである。


 木々の生い茂る山林では、下手な隊列は組まず散開し、木々を盾に撤退なり全周囲からの遊撃なりを行うのだが、マーグスが居る以上全力で彼を守らねばならない。


 仮にここに居る全ての騎士と比べてさえ、その価値はマーグスが勝る、故に騎士達に取れる戦術は一つしかなかった―――マーグスも守るための密集形態。


 しかもこのフォレストベア、逃げる相手を積極的に追いかける厄介な習性があり、下手に少数の護衛をつけてマーグスを逃がすと、突然矛先をマーグスに向けかねないので、先に逃がす選択も選べなかった。




「カーニ、俊足を持つお前なら、フォレストベアも追いつけん。野営地へ戻り大物用の装備と、動ける者を全員連れて来い」


「うっす。追いかけられたら村へ? それとも砦へ?」


「村だ、可哀想だが殿下を危険に晒すわけにはいかん。その後、野営地へ戻れ」


「了解っす」


 カーニは、既に脱いだ鎧をその場に捨てて走り出すと、わざとフォレストベアの鼻っ面を掠めるコースを描き、野営地へ向け消えていった。


 フォレストベアは剣を構えた騎士と、走り抜けた騎士を見比べるが、結局はその場に留まったままだった。


「・・・残念、追わないか」


 騎士隊長は苦笑し呟く、追って欲しい時には追わないあるあるであった。


 ちなみに追って欲しくない時には追うあるあるもある。





 騎士達はマーグスを庇うように陣形を組み、フォレストベアと応戦するが、木々が邪魔でうまく陣形を運用できないため、どうしても被害が増えてしまう。


 そかし、その上でフォレストベアは満身創痍となり、次第に追い詰められていく。


 結局の所騎士達の実力は高く、この様な状況であっても勝利は確実だったのだ。


 問題は被害の多さにある。


(森に入った騎士40の内、残ったのは23人か・・・これは問責かな)


 自嘲気味に笑う騎士隊長は最後のひと押しをするべく、部下に細かい指示を出していく。


 そしてその様子を、山田は非難した木の上から眺めていた、彼がなぜ逃げずに一連のやり取りを眺めているかというと、情報社会で生て来た彼が、クマの習性についてかなり詳しかったためだ。


 死んだふりは効かない。


 くまは逃げると追ってくる。


 以上二つの情報により、逃走より樹上への一時避難を選択していたのであった。


(やっぱり木の上が一番だよな、クマは木に登れないし。・・・登れないよな?)


 昔のアニメでは確かそうだったような、と頭を捻っているとついにそしてその時が訪れる――――――終局の時間が。





 この日の騎士達の不幸は、殺害対象の予想外の実力、見通しの悪い森への侵入、フォレストベアとの不意の遭遇戦、不適切な装備、護衛対象の存在、そして―――


「ゴガァアアアアアアアアアア!」


「うぎゃーーー!」


「ばかな!もう一匹だと!」


 フォレストベアを追い詰め始めたその時、横合いから一回り大きなフォレストベアが騎士達に襲い掛かった。




 ―――この日、騎士達に降りかかった最後の不幸は、


 山道を挟んだ反対側の山中からも怒れる獣が下りて来た事だった。




「慌てるな! 直ぐに応援が来る。それまで防御を固めて、時間をかせげ!」


 騎士隊長は大声で怒鳴り、命令へ集中させる事で騎士達の士気を保つ。




 しかし彼は、彼等は、理解していた、フォレストベアがここに現れた意味を。


 新たなフォレストベアの身体に残る刀剣やスキルと思われる傷、そして野営地の方向からやってきた事から、そこで戦闘があった事を意味している。


 もしフォレストベアが野営地から逃げて来たのなら、騎士達を認めた途端に別の方向へ逃げ出すだろう、しかしフォレストベアは騎士達に突っ込んできた。


 それは即ちフォレストベアが暴れ足りない事を、野営地の騎士達が全滅させられた事を、残酷な現実として彼等に突き付けていた。





「こ、小僧、加勢せい!」


「え?なにそれ。うそでしょこわいんだけど」


 突然のマーグスの要請、余りの理不尽さに思わず山田の方が狼狽えてしまう。


「俺の事を殺そうとした癖に調子いいだろ」


「今はそれ処ではあるまい、このままでは貴様の身も危うかろう!」


「逃げる自信はある。だいいち助けた後どうなる、今更あんたらの世話には怖くてなれないだろ」


 山田的には最早彼等と行動を共にするなんて有り得ない選択だった、どの道逃げるなら加勢するだけ無駄である。


 マーグスもその辺りに理解が及び、やむなく妥協案を出した。


「わかったわい、お主の自由を、マーグス・パラティオンの名に懸けて誓おう。この場を切り抜けたら、何処へなり消えるがよい」


「嘘臭い」


「ふん、お主と引き換えらる程、儂の名誉は安くは無いわい」


「・・・・・・・・・わかった」


 正直山田はその言葉を信用できなかったが、爺さんが死んで口封じ出来たとしても、俺が犯人として捜索される可能性は十分ある、死体が見つからない以上手配ぐらいはされる筈だ。


 ならば事実上の国との和解であるこの提案に賭ける価値は十分あった。


 自分がこの世界について何も知らない現状を鑑み、下手な口封じより和解の可能性に山田は掛けた。





 恐る恐る騎士達に合流するが、思っていた以上に山田の事は眼中になかった。


 どう参戦しようか悩むも、山田では掠っただけで死んでしまうので、マーグスの傍らで戦況を観察する事にする。


 現状は宜しくない、騎士達は頑張っているが見る間にその数を減じ、反面クマの方は凄い元気。


「なにをしておる、あの毒は持っておらんのか!」


「え?あ。あるわ」


「はよ使わんか!」


 そういえばクマスプレーがあったかと思い出す、道理で助力を頼むはずだと納得し、ポケットからすっかり忘れていたクマスプレーを取り出す、しかしそこで違和感、本来あるべきノズルの部分が無くなっている。


(デカすぎて、頭の部分だけポケットから飛び出してたからな・・・)


「何をしておる!」


「・・・ごめん壊れた」


「ばかもんがー!」


 マーグスに怒鳴られながら、無くなったノズル部分を探しその辺を見渡すが当然見つからない、大分激しく動き回ったのだ、何処で落ちたかなんて分かりようも無かった。


 もう一人で逃げるか真剣に悩みだした時、騎士団長が静かに言葉を紡ぐ。




「お逃げ下さい、マーグス様」


 見ると既に騎士隊長以外は倒れ伏しており、彼が眼光鋭くフォレストベアと睨み合っている状態であった。


「そやつに乗り、砦までお戻り下さい。フォレストベアの注意は、私が命に掛けても引き付けてみせます」


「お主・・・」


 山田としても考えなかった訳では無いが、爺さん一人担いでも多分走れるがクマの習性を考えると、逃げ出した此方が狙わねかねない危険な作戦でもあった。


 しかし事ここに至っては、危険だなんだと言っても居られない、騎士隊長が健在な内に勝負に出るしかなかった。


「小僧、マーグス様を貴様に託す! 必ずや殿下の元へお連れしろ!」


「お主の献身は決して忘れぬぞ・・・・・・はて、名前なんじゃったかの?」


「いいからお逃げ下さい!」


 騎士隊長は何処か哀愁を感じさせる声色で叫ぶと、一気にフォレストベアとの距離を詰める。


「我が最後の忠義、マーグス様が逃げ切る時間は必ず作って見せる!」


 フォレストベアの繰り出した鉤爪を、騎士隊長のスキル”衝撃”を乗せた剣が弾く、両者の力に耐えきれず、鉤爪が砕け剣が半ばから折れた。


 腕の痛みに怯むフォレストベアの眼前を鉤爪が舞い、痺れる腕に顔を顰めた騎士隊長の剣が―――マーグスの胸に突き刺る。


「あ」


 それは誰の声だったか、元凶たる騎士隊長か、剣が刺さったマーグスか、間近で見ていた山田か、又はその全員―――そこにはクマも含まれていたかも知れない。


 なんにせよ、間の抜けた呟きと時間の止まった世界の中、三対の視線に見つめられながらマーグスは地面に崩れ落ちた。


「こ、小僧っ! 貴様何て事を!」


 知らんがな、山田は心の中で突っ込んどいた。


 騎士隊長の叫びで時間は再び動き出し、フォレストベアが背を向け山田へ怒鳴り散らす騎士隊長の頭へ、背後からカプリと齧り付くと彼の命はあっさり散った。




 騎士隊長をガジガジ齧るクマと、俺の視線が交錯する。


(コレってヤバくない?)


 ノズルの取れたスプレーでも投げるかと、そっとポケットに手を伸ばす。


(・・・いや、戦闘力は遠く及ばないが、クマの動きは十分見た。速さに関して俺の方が上だし、こいつに飛び道具は無い。逃げ出した俺にコイツは―――決して追いつけない)


 そう結論付けるとゆっくりと腰を落としていく、目指す先は山道、都合が良い事に下り坂だ。


 勝ったな、山田はそう心で叫び神経を集中する、大気の流れを感じフォレストベアの呼吸を盗む、そして鼓動さえも聞き分け、奴の意識の隙を付く。


 そんな気分でフォレストベアを観察していると、明らかに奴の注意がそれた、山田の足元へ視線を落とすと不思議そうに首をかしげている。


 今! 全力で振り返り地面を蹴る、フォレストベアの視線の先など気にしない、走るその事だけに意識を集中し全力を傾けた。


 そして山田は走り出した瞬間「ドシャーー!」盛大にこけた。




「な!」


 倒れた上体を起こし足元を見ると、ズボンにマーグスがしがみ付いている。


「ウソだろ!じじぃ!」


「逃がさぬぞーーー!」


 マーグスも伊達に高レベルでは無い、じじぃとは思えぬスペックで山田に迫った。


 倒れた山田の服を鷲掴みにし、まるでゾンビの如くズリズリ体の上を這い上って来る。


「はなせーーーじじぃーーー!」


「はーなーすもーのーかーーー!」


 胸元を掴み、必死の形相で顔を近付けてる来るマーグスを、此方も必死の形相でもって、突き放そうと悪戦苦闘する山田。


 そんな二人の醜い争いを、困った様に眺めていたフォレストベアは、二人の体がいい具合に重なる頃合いを見計らうと、アングリと大口を開けた。


 そして山田にしがみ付くマーグス共々、二人はその巨大な口に噛みつかれたのだった。





 その時の状況を彼は良く覚えていない


 無我夢中の中、スキルを発動させた気がする


 その結果なにが起こり何が変わったのか彼はそれを認識する事は無かった。




 そこは凄惨の事件現場といった様相を呈していた、散乱する死体と広範囲にまき散らされた血溜まり。


 その現場には一人の若者と、一人の老人の身体が横たわっている


「いっ!ぐぅうううう」


 唯一生き残った男が、苦痛に呻きながらも、のそり身を起こした。


 脇腹の辺りが焼ける様な痛み発し、全身至る所がズキズキ疼くなか、痛みを堪えゆっくりと立ち上がる。


「むうう、ひどい目にあったわい」


 周囲を見渡すと惨状、そこかしこに散らばる遺体に、木々を彩るドス黒い血飛沫、漂う不快な臭いは臓物に因るものか。


「やれやれ、先ずは殿下にご報告じゃの」


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・´・ω・)ん?


 なにかおかしい、自分の発言が酷く不自然に感じられ、男の顔に戸惑いが浮かぶ。


「儂の声、こんなか? いやそもそも儂は・・・おれ?」


 違和感そして既視感、前にもこんな事あった気がする、しかし何時だったか思い出せない、男は懸命に以前あった事を思い出そうとし。


「そう、確かステータスを・・・」



 山田公二

 レベル 35


 身体 357

 敏捷 905

 魔力 826



「そう・・・そうだった、俺は山田公二。・・・この感じ、これってあれか」


 山田は嫌な予感を感じつつ、ステータスに有る、山田公二に意識を向けると。



(山田公二+マーグス+合成+鑑定)

 レベル 35


 身体 357

 敏捷 905

 魔力 826



「ま、まざってる・・・」


 ますます自分が変な物になった気がして、山田は膝から崩れ落ちた。


 あの時フォレストベアの牙は、山田の胴体より先にクマスプレーを破損させ、中身を一気にぶちまけさせた。


 口内でデスソースを喰らったフォレストベアは、堪らず二人を吐き出すと一目散に森の中にその姿を消し、山田の命は助かったのだった。


 ふと傍らに息絶えたマーグスの遺体が目に入る、マーグスの記憶を持つ今の山田にとっては、微妙な気分になる光景だった。


 気づくと山田の手は、無意識の内にその頭に触れていた。



 レベル 1


 身体 1

 敏捷 1

 魔力 1



 それは死んだステータス、死んだ人間のステータスは生まれた状態に戻る、生まれて積み重ねた全てがなくなってしまうのだ。


 宗教家によれば、ステータスと言う祝福の対価として、死後その内に築いた全てを神に捧げるのだとか、つまり―――死ねばリセットなう。


(デスペナはお金やレベルの減少どころかデータの初期化、一からやり直しのハードモードだ・・・もっともセーブや復活が無い世界なら関係無いか)


 取り合えずは野営地でも目指すかと、山田は痛む体に顔を顰めながら歩き出した。





 野営地へ戻ると想像通り、こちらも惨状だった。


 山田は近くの丸太に腰を下ろすと、周囲に散乱する騎士達を見渡し深いため息を付いた。


「困った事になったのう、騎士をこれ程失う事になるとは・・・・・・・・・いや、ちがうだろ。なんで俺が困らないといけないんだよ」


 精神が侵食されてる気がして、慌てて頭を振ると、マーグスの記憶を追い出していく。


 所詮は記憶、されど記憶、その量と大きさ次第では容易く人の心理に影響を与えて来るのだ。


 恋愛小説を読むと、しばらく心が乙女になるアレである。




 確かにマーグスの記憶は役に立つ、社会情勢、ステータスやスキルに関しての研究、幼い殿下を膝に乗せ読んだ本の数々、悲しくも美しい若き日の甘酸っぱいロマンス。


「あの頃はワシも若かったのう・・・・・・・・・はっ!や、やばい。自分を強く持たなくては」


 しかし強く意識し、自分の記憶と他人の記憶の境が曖昧になると、途端に厄介になる、まるで精神への汚染であった。


「俺は山田。俺は山田。俺は山田。俺はYAMADA」


 山田は座り込んだまま頭を抱え、念仏のように繰り返し自分に言い聞かせた。




「取り敢えず城へは戻った方がいいよな?・・・いい訳無いか、殺されるのがオチだ。遠くに逃げるしかない」


 方針を決めた山田は、まず自分のカバンを見つけ出すと、その中に必要なモノを詰め込んでいく。


 拾えるだけ物資を拾うと、金も大事だと見つかるだけの硬貨を拾い集めた、散乱している騎士の武器も拝借したが、鎧は重いし目立つので捨て置く事にする。


「先ずはこの領から逃げ出さないとな、領越えさえすれば一先ずは安心だ」


 マーグスの記憶から、この領から出さえすれば何とかなりそうだと判断した山田は、鞄を担ぎ上げると振り返る事無く山道を下り始めたのだった。

主人公は精神が入り混じったのでは無く、他人の記憶に因る精神への影響を受けているだけです。


犬派の人間を椅子に拘束し、ネコネコランド(仮)のビデオを、48時間ノンストップ視聴させると猫派になるのと同じ。


現代日本でもよくあるよくある。

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