↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/116

23 こっから本編

 武器は高い。質のいい鉄を沢山使い高度な技術で作られているからだ。そんな高価な武器を山田は三本購入した。ウルカとネコロ用に剣2本、ベアーネ用に槌一本。


 その結果が何を意味するのか、それは換金した120万と、傭兵ギルドからの”護衛される依頼”の報酬20万、合計140万がどっかに消えてしまったという事だ。もっとも今回の場合は、武器屋の金庫の中だが。



 あと防具は更に高い。なので防具については保留状態が続いている。


 皮鎧等の安い防具もあるが完全に気休めだ。じっくり見せて貰ったがハイエナなら兎も角、餓狼王に噛み付かれたら一溜りも無さそうだった。


 下手に動きの邪魔になる位なら、当面はマッパで十分だろう。それに森の中を何時間も動き回るのだ、下手な鎧を着込めばそれだけで消耗してしまう。


 ハイエナに苦戦していた頃と違い、防具が必要な場面は、餓狼王などの強敵が相手のなので今の三人にとって、高品質の防具以外は付ける意味が無くなっていた。





 武器購入後は、残ったお金で調理道具を購入し一路我が家へ。


 そこで案の定二十人に増えていた雑種と、涙ながらに土下座するウサギの子、ラネットに迎えられる事になる。



「ラネットが必要と考えたなら気にする必要はないよ、今後も気にしないで連れてきていいから」


 すいませんと謝罪を繰り返す彼女に、どのみち見捨てると罪悪感で死にそうになるので、雑種の子は受けれる方向にした山田は、その旨を伝えた。


 しかし言葉を聞いたラネットが、顔を赤くしてモジモジし始める。


「それは・・・もしかして私の・・・ため、ですか?」


「そうだよ」


 保護する度に心を痛めて謝罪していては、流石に可哀想だからと山田はラネットのために、気にしないよう言っておく事にした訳だが。


 その言葉の趣旨はほんの僅かだけ、違う方でラネットへと届いた。



(やっぱり・・・私の為に雑種達を保護してくれてるんだ。昨日もそう言ってたもんね・・・こ、ここ、告白の時に)


 そんなラネットの頭の中では、昨日の告白の場面が鮮明に再生される。思わずにやける口元を手を当てて隠すと、山田を伺い見る。


(でもいいのかな、こんな大変な事、私の為にさせちゃって・・・)


 山田は増えた子達を見ても、不満も不安もなさそうな様子で、負担など全然無さそうな余裕を感じさせ、まるで山田自身が望んで雑種達を受け入れているかの様な錯覚すら覚えた。


 もちろん申し訳ない気持ちはある。自分への好意の表れとして色々やって貰っているが、流石に甘え過ぎでは無いかとも思う。


 これ以上好意の前借をしていいのだろうかと思う反面、周りの子達を見捨てるなんてしたく無い。もんもんとアレコレ思考を巡らした結果、彼女は一つの答えに辿りついた。


(よし!やって貰った分は、利子を付けてお返しをすればいいよね。か、返す量が多すぎて、い、一生掛かっちゃうかもしれないけど・・・。でもヤマダさんは喜んでくれるだろうし、私も・・・)



 最終的にラネットはそう結論付け、きっとお互いうぃんうぃんに違い無いと判断すると、その後も遠慮せず子供達をその毒牙にかけ続けたのだった。







 その日の夕食は焼肉。この家で初めて行われた調理は、焼肉だった。


 樹海木製の皿に盛られた鹿肉を、うまうま言いながら雑種達と平らげる。その後は留守番組の作った工作品を見みた後、全員で眠りについた。





 翌朝は昨日に引き続き、鹿肉をおいしく頂くと、ギルドで許可証を貰い逸る三人と共に狩りへと向かう。



 樹海に入るなり、三人は自分の武器を取り出すと、楽しそうに調子を確認しだした。


「あたいの剣つよそう!」


「うむ良い剣だ、使ってやらんでもない」


 素直に嬉しそうなウルカに、上から目線のネコロがブンブン得物を振り回している。


 そして一人だけ離れた場所で、ブオン!ブオン!と豪快なスイング音を響かせるクマが居た。


「ベアーネ、ホントにそんな物で大丈夫か」


「はい、私は足が遅いので、長い武器の方がいいです」


 そう言いながらベアーネが槌を振るうと、二メートルはある柄が、ブオオンと空気を震わせ振り回された。



 取り敢えず、武器に付いては準備が出来たので、これで当面は結果を残していきたい。



「ヤマダ狩をはじめよう。いますぐ」


 武器を振り回すのに飽きたのか、鼻息も荒く興奮したようにウルカが詰めかける。見るとベアーネもネコロも目をランランと輝かせ、まだかまだかと訴えかけている様だ。


 なんか興奮しすぎて失敗しそうな気がするので、取り合えず様子見として樹海の浅い部分の探索から始める事にした。





 探索すると早速の五匹の魔獣が到来、三人は直ぐに戦闘へと駆けだした。


 ネコロが駆け出し先頭の一匹を狩ると、魔獣達は二匹づつ左右に散開し囲い込もうとする。ネコロは即座に左に飛ぶと、散開中の魔獣を更に一匹刈り取る。


 そこへ追付いたウルカが、右に動いた魔獣二匹に襲い掛かり、一振り二振りでその二匹を始末する。最後の一匹も既にネコロの剣で地に伏しており、発見から十数秒で魔獣達は全滅した。


 二人が笑顔で振り返る所にベアーネが到着。三人は一緒に勝利を喜んだ。



 全然戦い足りない三人は、すぐさま次の犠牲者を探して歩き出した。





 また魔獣の群れだ、今度は七匹。


 又も突っ込んだネコロが先頭の一匹を切り裂くと、追加で正面、左右と上から、計四匹の魔獣が飛びかかって来る。


 ネコロは飛び上がり、一瞬で上から来る魔獣の頭上を取ると、これを切り裂きその体を足場に魔獣達の後方へ跳躍する。


 背後を抜かれた魔獣達が慌ててネコロを振り返ると、その背中へウルカが切り掛かり、一振り二振り三振りで三匹の魔獣を瞬く間に始末し、残り二匹もネコロの剣で地面に倒れた。


 喜ぶ二人の下へベアーネが到着すると、三人は共に勝利を喜んだ



 三人は獲物を求めて更に進む。





 魔獣の群れが現れる、その数実に十五匹。


 戦闘は何時もネコロの突撃から始まる。数度の戦闘で感覚をつかんだ彼女は、戦術を回避より攻撃重視に切り替え、魔獣の群れに飛び込むと瞬く間に数匹の魔獣を切り裂いた。


 襲い来る牙の嵐を最低限の動きで掻い潜ると、すれ違いざまに魔獣達を切り裂いていく。


 ネコロを取り囲む魔獣へ、ウルカが背後から襲い掛かると、一振りで数匹が倒れ、二振りで更に数匹が息絶える。


 そのまま足を止め、飛びかかる魔獣を剣で数回撃ち落とす頃には、全ての魔獣が躯を晒す事になった。


 剣を掲げて勝利を叫ぶ二人へベアーネが合流すると、三人で手を取り合い喜びあった。



 更な獲物を探す二人の後ろから、ベアーネがとぼとぼと付いていく。



 ・・・いかん、ベアーネが堕ちる


 二人に合わせて喜んで見せているものの、彼女の瞳から光が消えている。ウルカもネコロも、はしゃぎ過ぎて気付けていない。


「よし、練習はここまで。中層へ向かいます」


 山田は慌ててそう宣言すると、皆を連れて急いで中層へ向かる。


 正直今となっては、三人の力は表層では過剰戦力といえる。せっかく山田と言うバックアップが有るのだ、狩場を中層辺りへ変更する事にした。







 中層に至るまでに、魔獣の数も強さも大きく上がり、ベアーネの出番も増えて来る。とくに硬い魔獣にはベアーネの槌が効果的に作用し、彼女の瞳にも光が戻ってきた。


 そんな調子で暫く狩りを続けていると、突然ケモ耳をピクリと振るわせた三人が樹海の一角を振り返る。


 山田が何事かと視線を向けると、ガサガサと下生えを踏みしめ餓狼が、何十と言う餓狼が薄暗い木々の間から姿を現してくる。


 しかし三人はそれらを気にする事なく一点を見続け―――そしてアイツが現れた。



 三人にとって初めての強敵。―――餓狼王、二号が。


 二号と三人の浅い因縁の対決が、今始まる!


 そしてサクっと終わった。



 前回同様序盤で舐めプをして、雄叫びと共にこれ見よがしの突進して来た所に、ベアーネの飢狼盾ミサイルを喰らい、足の止まった所を、ウルカとネコロにザクザク刺されての幕切れである。


 行動が一号と同じなので先読みされて、完全に三人のコンボの餌食だった。


 残った餓狼も、三人で背後さえ庇い合えば、特に苦戦する事も無く片付いた。



「うーん。やはり動きが分かると戦いやすいようだな。そもそも能力値もかなり上がってるからな」


 ほめれほめれと寄って来た三人の頭を撫でまわし、前回同様死体を傍でお昼休憩を取る。





 午後も相手に合わせ、山田が出たり出なかったりしながら、狩りを続けた。


 鹿はレアらしく全然出てこない、代わりにイノシシが出たので、山田が刈り取り、魔核の牙とお肉を頂いた。


 ちなみにあれ以来、生首は取っていない、時代が追い付ていないのでしょうが無いのだ。


 そして上々の成長と上々の収穫を以て、自前武器を用いた今回の狩りは、大成功の下幕を下ろしたのだった。







 そして街へ帰ると何時ものように換金、買い物、帰宅へと続いた。


 そしてその帰り道、スラムの通りにおいて、雑種達の今後に関わる重大な問題が発生した。



 道端でチンピラを見つけた、又は見つかった。何時もなら特に近寄ってこない彼等が、この日は山田達の下へわざわざ挨拶をしに来たのだ。


「よう、最近結構稼いでるみたじゃねーか」


「俺らにもちょっと、分け前が欲しいんだけどよぉ」


「いいだろー少し位、俺らスラムの仲間なんだしよ」



 どうせそんな事だろうと思ってたけどね。


 さて、どうするか。スラムのボス、ドーベルンにお金を払っているので、こう言う事は無いと思っていたんだけどな・・・


 見るとウルカ達三人も、どうするの?って視線で見上げている。


 追い払うのは簡単だが、今後の事もある。金で解決出来る問題は金で解決する、それが文化人と言うものだろう。


「こっちも食い扶持が多いから余り出せないが、5万エンドルでどうだ?」


「へへへ、今日の所はそれでいいぜ。おっとついでに、コイツ剣も貰っとくか」


 そう言うと、ネコロの剣に手を伸ばす。


「だ、だめ。これはヤマダから貰った私の剣」


「うっせー、よこっせての」


 ネコロが拒否して剣を抱き込み背中を向けると、チンピラが肩を乱暴に掴み、無理やり奪い取ろうとした。


「おらっくそ雑種が!とっととよこへぎゃぶう」


 取り敢えず殴っとくと、チンピラは鼻血を流し、がふがふ言いながら地面に崩れ落ちた。


 それを見たチンピラ二人が、山田に殴りかかって来るが。


「てめー!ごふぉ」


「まっ、ぎゃっ」


 すぐさま二人もウルカとベアーネに殴られ、地面に倒れ伏す事になった。



 ウルカ達三人は基本的に街中では大人しい、雑種として迫害の日々を過ごしていた事と、山田への迷惑を考えての事だ。


 しかしその山田と敵対した相手なら、遠慮は要らないとばかりに手が早かった。



「どうするヤマダ、もっと殴る?」


「そうですね、このまま生かして返してしまうと・・・」


 倒れこんだ二人を見下ろして、ウルカとベアーネがヤクザみたいな事を言ってくる。やっぱ情操教育がなぁ・・・。


「こんな事しやがって、ただで済むと思うなよ!」


 足元で鼻血塗れのチンピラが、怒りまくって怒鳴り立てる。何とか金で解決出来ないものかと、山田は説得を試みた。


「あー慰謝料払うので、ここは穏便にすませて頂けないかと」


「うるせーてめーも、その雑種も、ぶっ殺してぎゃああああ」


 この子達まで殺すとか、取り敢えず地面に着いた手を踏みしめるとグリグリいわす。


「いででででで」


「や、やめーや!」


 見るとウルカとベアーネが山田の真似をして、チンピラ二人の手を踏みつけている。


 情操教育がなぁ。



「あがが、た、たのむ、許してくれ・・・俺達が悪かった」


 二人を見て物思いに耽っていると、旗色悪しと見たチンピラが白旗を上げて来た。


「殺意持った奴を許すとかある?」


 足を上げると、一応話を聞く事にする。そもそも此方としても、余り大事にはしたく無いのが本音なのだ。


「ぶ、ぶっ殺すなんて、よくある脅し文句だろ、ほ、本気にすんなよなぁ」


「カツアゲは本気だったろ」


「わ、わるかった。もうしねーから、かんべんしてくれよ」


 そう言いながらチンピラ達は、徐々に後ずさっていく。逃げたいなら逃げて貰った方が面倒が無くていい。


「もう関わらないなら、行ってもいいんだけど」


「お、おう。もちろんだ、二度とあんたにゃちかづかねぇ」


 途端にチンピラ三人は駆け出し、山田達の下から脱兎の如く逃げ出していく。しかしその足は暫くすると止まり、彼等はこちらを振り返る。



「ちっ覚えてろよ!クソ共が!」


 十分離れた所から、チンピラが叫んで来るが、そこはまだうちの子の射程距離内ですよ?


「ベアーネさん、石を投げてあげなさい」


 彼女の投げた石が足元で弾けると、チンピラ達は悲鳴を上げて、今度こそ本当に散って行った。



 しかしドーベルンの影響は余り大きく無いのかも知れない、シャジィルの言葉もあるし自衛に付いて考える必要もありそうだ。


 家に居る雑種達の強化も脳裏を掠める。しかし自分の都合に合わせて、あの子達の将来を変えるのも違う気がする。


 強化すると成れば、あの子達を危険な樹海に連れて行かなくてはならない。


 戦う事自体嫌いな子も居るだろう、そんな子達に樹海での戦いを強いる事になる。


 いいのだろうか? 樹海で怖い思いさせながら戦わせて合成で強化しくいく・・・そんな鬼畜な所業をあの子達に強いて・・・合成?。


 戦って強化・・・合成で強化・・・それってあの子達を合法的に撫で回せるって事なのでは?


「仕方ない!あの子達の未来の為に、心を鬼にして合成強化するしかない!」





 こうして、合成強化をするなら頭撫で放題。その事実に行きついたこの瞬間、全雑種強化プロジェクトは発動したのだった。

マッパ。


軍事専門用語で防具の類を身に着ていない状態。


けして全裸ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。