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2 ・・・なでぽ

 


「中に居る者へ告げる、大人しく出てくるが良い!」


 ローランドの発したその大声は、バスの中にも容易く響き、中の者達―――修学旅行帰りの高校生達と引率の教師、そしてバスの運転手の鼓膜をシッカリと震わせた。


「ど、どうします?」


 定年間際のバスの運転手は、フロントガラス越しに注がれる、大勢の騎士の鋭い視線に委縮しながら背後を振り返ると、その視線の先に居る中年の教師にそう訪ねた。


 自分ではどうしていいか判らない。


 そんな思いから出た問い掛けだが、当の教師も困った様に頭を抱える。


「ど、どうするって聞かれても・・・どうしよう・・・」


 顎に手を当て首を捻る中年教師は、ソワソワと視線を彷徨せ、ウンウンと唸りを上げるばかり。


 その間にも車外からは再度大声が響き、数分もしない内に、バンバンと車体が叩かれ始める事態へと陥る事になる。



「困った、これは困ったなぁ・・・」


 この期に及んで尚、そう呟き首を捻るばかりの教師を目にし、一人の女子生徒、比沢麗香は、教師が無駄に状況を悪化させているとしか思えなかった。


 焦れったい。そう感じた彼女は、遂に我慢できずその口を開く。


「先生・・・取り敢えず出て、話を聞いた方が良いんじゃないですか」


「そ、そうか、そうだな。じゃ・・・比沢ちょっと出てみてくれ」


「え?・・・な、なんで私が!」


 教師の発言が突飛過ぎて、言葉の意味を理解するのに数瞬を要し、理解した瞬間には思わず彼女は叫び声を上げていた。


「ここは責任者である先生が出るべきでしょ!」


「あ、いや。こ、こう言う時は女の方が相手を刺激しなくていいんじゃないか?」


「なに言ってるんですか、相手は訳の分からないコスプレ集団ですよ、武器だって持ってるし」


「だから、だからだよ。余計に刺激するのは不味いんだ、まずは君が出て敵意が無い事を示して欲しいんだ」


 比沢の非難めいた声を無視し、教師は臆面も無く身勝手な持論を展開すると、一心に比沢へと事の対応を求めてくる。


 その余りに無責任な姿に、彼女の中で目の前の教師の評価が一瞬で下落した。


(あり得ない、なんなのこのダメ教師!)


 お前が行け!そんな思いで睨みつけても、教師はひたすら言い訳を続けているだけで、一向に自ら動く様子が見られ無い。



「比沢、頼む!」


 仕舞いには頭を下げると、パチンと手を合わせて拝みだす始末だった。


 頑なに責任から逃れんとするその様子に、埒が明かない、そう判断した彼女は教師に見切りを付けると、車内で席に座るクラスメート達へと視線を走らせた。


「もういいわ! 男子、誰か代わりに出なさいよ」


 大人の男がダメなら男の子。


 そう思い男子に呼びかけるも、誰一人立ち上がる者は居ない。


 其れ処か目が合う端から、視線を逸らされていく。


 普段は煩い男子達が皆して顔を伏せると、借りて来た猫の如く静かに縮こまっていた。



(なんなの、学校じゃ威勢のいい事ばっか言ってるのに!)


 比沢は内心で憤るものの、状況は余り悠長にしていられる環境では無くなりつつあった。


 外の連中が痺れを切らしたのか、車体を叩く音もガンガンと大きくなっていくばかりである。


「―――もうっ情けないわね! いいわ私が出る!」


 もう時間が無いと判断した彼女が、憤りに任せて運転手にドアを開けさせようとしたその時、座席から一人の男子生徒が立ち上がった。


「まって比沢さん!・・・僕が出るよ」


 掛けられた声に比沢が振り返ると、狭いバスの通路を男子生徒、斉藤貴志が歩いてくる。



 比沢の印象としては何時も正論を振りかざし、いい人ぶった発言が目に付く、いわゆる優等生。


 正直口ばかりで、いざとなったら何も出来ないと思っていただけに、こんな状況で本当に名乗り出る正義感を持っているとは、正直予想外だった。


「・・・悪いわね、斉藤君」


「いや気にしなくていいよ。正直言うとこの緊張感、僕がもう耐えられないだ。何かしないとおかしくなりそうだよ」


 そう苦笑いを浮かべ、バスを降りる斉藤を見送った比沢。


 車内に残る気まずそうな表情の生徒達や、如何にもほっとした表情を浮かべる教師の顔へ視線を流すと、何やら良く分からないモヤモヤが心に広がった。


(・・・別に悪びれる積りは無いけど、どうにもスッキリしないわね)


 そんなどこと無く後ろめたい気持ちを抱え、外に出た斉藤の背中へと視線と送ること数瞬。


 意を決っしてバスを降りると、彼女もまた外の世界へと飛び出したのだった。





 良く分からない乗り物から人間が出て来る所は、離れた場所で待機するクルーゼスの目でも確認する事が出来た。


「やっと出て来たか」


「ふむ・・・随分と若いようですな」


 マーグスの言う通り、出て来たのは随分と若い男だった。


 そのすぐ後に出て来た女もこれまた若い。


 二人はローランドへと向き合うと、何やら話し合っている。


 すると女の方が一度中に戻ったと思うと、中の者達を連れ出して来る。


 見ていると中からは、ゾロゾロと何人もの人間が現れた。ゾロゾロゾロゾロ・・・何人も。



「お、多いな・・・」


「確かに・・・魔方陣にこれ程の容量は無い筈なのですが」


 その人数の多さに、二人は揃って首を傾げる。


 今までの召喚は、呼び出されるのは多くても数人程度だったのだ。


 それが今回は、訳も分からぬ乗り物と共に三十人程の人間が現れている。


 クルーゼスとしては大漁なのは有り難い事だが、その反面、安全面での不安も脳裏を掠める。


(仮にスキル持ちが数人居たとして、コレだけの人数が暴れだしたら少々厄介か・・・事は慎重に運ばねばならんな)


 本来であれば武力を背景に、強引に服従を迫る処だが、流石に今回は勝手が違い過ぎる。


 下手に暴発させ、折角召喚した奴隷達は失っては元も子もない。


(先ずは様子見だな・・・ここは穏便に丁寧に、接触は慎重を期して行うべきだろう)


 そんな思いを胸にクルーゼスが視線を飛ばすと、丁度振り向いたローランドと視線が絡む。


(・・・分かっているな、ローランド)


 胸中に浮かべたその問い掛けに、ローランドから心得ておりますとばかりに意味ありげな頷きが返る。


「ふ、さすがはローランドだな。言葉無くとも、何時も俺の言いたい事をくみ取ってくれる」


 頼りになる腹心の自信に満ちた表情を確認したクルーゼスは、小さく笑みを浮かべると、安心して事の推移を見守る事にしたのだった。





(どうやら殿下も退屈して居られるご様子・・・ここは手早く事を運ぶとしよう)


 クルーゼスの様子から、彼なりにその内心を察した積りのローランドは、奴隷達を見渡すと威圧的に声を張り上げる。


「私はローランド、今からお前達の検分を行う。従う分には危害を加えん!」


 ざわざわと奴隷達の驚きや否定的な小声が聞こえるが、ローランドは無視して言葉を続ける。


「だが逆らえば相応の処罰は覚悟してもらう!」


 言いながら腰の剣を引き抜くと、その切っ先をガツンと石床に打ち付けた。


 その音と鋼の輝きに息を飲んで静かになった奴隷達を見渡すと、三度声を張り上げる。


「まずはスキルを持つものは申告せよ!」



 ―――しかし奴隷達はお互いに目配せするだけで、誰も名乗り出るものは居ない。


 まさか一人も居ないのか? ローランドが不安に思った矢先、最初に出て来た男が手を上げると困った様に口を開いた。


「あのローランドさん・・・スキルって何ですか?」


 その言葉に今度は騎士側に騒めきが広がった。





 ローランド達が奴隷を調べる間、クルーゼスとマーグスは離れた位置からバスの観察を行って居た。


「殿下、恐らくあれは乗り物ですな、車輪が付いておりますぞ」


「車輪?、あれは車輪なのか。だがあんな大きな鉄の箱だぞ、まともに動くとは到底思えんが」


「見た目ほど重くは無いか、何か特別は仕掛けが有るやもしれませんな・・・儂としてはアノ点滅していた光が怪しいと思うのですが」


 そう言いつつウインカーを指さすと、何気ない様子でマーグスは乗り物に向かって足を進めだした。


「そうだな、お前が言うならそうなんだろう。だから今は、此処で大人しくしいような」


 その右腕を掴み、そこを基点にクルーリと半回転させると、じじいを元の位置に戻すクルーゼス。


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


 訪れる良く分からない沈黙。


 二人は半眼を浮かべ、何とも言えない表情で見つめ合い。


 その周りを非常に居心地悪げな、護衛の騎士達が取り囲んでいる。



 そんなしょうも無い空間に、騎士達をかき分けローランドが姿を現した


「殿下、いささか問題が生じまして」


 ローランドが神妙な様子で状況を説明すると、聞いて居たクルーゼスの口からは、思わず失望の溜息が漏れだした。


「あれだけいて全員スキルが無いのか?」


「いえ、どうもステータス自体を知らない様で」


 ステータスを知らない? クルーゼスとローランドの視線がマーグスに向かう、そういった事はこの老人が専門だった。


「ふむ、幾つか予測は立てられますが、実際に観た方が確実でしょうな」


 暫し考えてマーグスが出した結論は「儂が直接調べる」であった、だがそれはマーグスと彼らの接触を意味する。



「ローランド、問題ないか?」


「動きは全員新兵以下ですので、騎士を傍に控えさせれば問題無いでしょう。もっとも殿下はスキルの確認が済むまで、ここでお控え頂く事になりますが」


 分かっているとばかりにクルーゼスが肩を竦めると、マーグスとローランドは連れ立って生徒達の元に向かった。





 二人が生徒達の元へ足を運ぶと、彼等はバスの側面を背して固まっており、それを騎士達が半円状に包囲している。


 ざわざわ小声で不平を漏らしつつも、特に逆らう様子も無く大人しくしていた彼らの様子に一つ頷くと、ローランドは大声を張り上た。


「静かにしろ! これよりお前達のステータスを調べるにあたり、マーグス殿より説明がある!」


「うぉほん。儂がマ―――


 その言葉に合わせマーグスが数歩前に出て騎士達の中から姿を現す、が周囲を固めて居た騎士達が慌てて追従し、マーグスの姿は再度騎士達に埋もれ見えなくなった。



「・・・過保護じゃのう、ちこっと下がらんか」


 やれやれと首を振り、手にした杖で騎士達の脛をカンカン叩き後ろに下げると、改めて生徒達に話しかける。


「儂はマーグス。まぁなんじゃ、おぬし等取り合えず目を瞑って頭の中を覗いてみい」


 そう言われた生徒達の反応は芳しく無い、殆どの者が訝し気な視線をマーグスへ向けて、訳が分からないといった様子で首を傾げている。


「言われた通りにせんか!」


 そこへローランドの怒声が鳴り響き、生徒達が反射的に慌てて目を閉じると、マーグスの追加の説明が入った。


「ステータスの確認は感覚的ものでのう。自分の内面や心の中を探したり思い出す感じで、なんかこーあれじゃ、分かるじゃろ?」


 わかるか!


 大半の生徒と騎士はそう思ったが、異世界に理解のある一部の生徒は、マーグスの的を得ない説明を独自に解釈し、日頃のイメージトレーニングの成果を遺憾なく発揮すると、ステータスの開示を成功させたのだった。



「み、見える!なんか見える!」


「マジか!これマジか!」


「なんだこれ。見える?思い浮かぶ?変な感じ」


 先ずは数人が驚嘆のそして歓喜の声を上げ、数人が成功するとそれを見た者にも伝播し、全員がステータスを見る事が出来る様になるのに然程時間は掛からなかった。




 ステータスを見る事に全員が成功した後は、マーグスが一人一人にスキルの”鑑定”を使い、結果を記録係が記帳していく流れになる。


「一人ずつ調べて行くからのう。ほれ、先ずはお主からじゃ」


 指を指された生徒がおずおずと進み出ると、頭を下げさせその頭にマーグスが手を乗せる。頭に触れるという条件を満たし、マーグスの鑑定が発動する。


「ほうほう、なるほどなるほど」


 ニヤニヤと楽しそうに人の頭を撫でる老人と、その様子を真剣な表情で見守る騎士達、そこはある意味異界であった。


 そんな状況に内心では不満を持ちつつも、武器を持った騎士達を刺激したく無い面々は、大人しく列を作り指示に従っている。


 それは人々の精神に見えない苦痛を与え、知らぬ間に鬱屈とした淀みをその身に蓄積させていく。


 そんな負の感情を、心の許容を越えて溜め込んだ人間は、時に信じられない様な事をしでかしてしまう。


 ―――そして事件は起こった。




 人の頭を撫でる老人、その様子を無言で見ていた生徒達の中に、静かな悪意が溢れ出す。


「・・・なでぽ」


 ぼそり、誰が呟いたのか分からないその発言に「ブフォッ!」一部の生徒が空気を吐き出して答える。


「なんだなんだ?」と周囲の目が集まると、彼等は咄嗟に口を押さえると肩を震わせながら顔を伏せた。


 その動きに不審なモノを感じた周辺の騎士達も、表情を隠しぶるぶる震えている生徒達に注目し始める。


「おい! 一体なにがあった」


「いえ、グフッ、べつに、な、なにも」


「噓をつくな! さては勝手にスキルでも使ったか」


「ゴホッ、違います、急に気分、が悪くなって」


 呟いた人物に怒りを覚えながら、湧き上がる失笑を必死で堪える苦行に晒される幾人もの生徒達。


 更に、その様子を見て失笑を誘発される周辺の生徒の出始め、今まさに一人の愚劣な悪意が多くに人々に多大な被害をもたらしていた。



「なんじゃおぬしら、勝手にスキルを使いおったのか?」


 そこに騒ぎを聞きつけたマーグスまでもが加わり、検査のため並んだ列の前方は混沌とした雰囲気に包まれてしまうのだった。




 そんなしょうもない騒ぎの外、並んだ列の後方でも一つの事件が起ころうとしていた。


 生徒の一人、井口真治は自分のステータスに目を向けて居た。


 井口真治

 レベル 1

 風


(ステータスってこんだけかよ。てかレベル低すぎだろ、あり得んて。それに風ってなんだ、やっぱ風魔法か?)


 スキルは使おうと意識を集中させると理解出来るらしいが、モノによっては危険だから許可が出るまで待てと言われている。


 悶々としながら待って居ると、彼の耳に列の前方でスキルを使った等と言う声が聞こえて来る。


「なんだ、誰かスキルをつかったのか」


 井口は生徒や騎士の、やいのやいのを眺めながら興味深そうに呟く。




 その隣で同級生の、田場と加根元も声を潜めて話し合っていた。


「俺らも使うか?」


「これって使って大丈夫なんかよ?」


「いや知らんけど。加根元、試しに使ってみろよ」


「はぁお前が使えよ」


 井口は二人のそのやり取りで、誰かに使わせて見ればいいと思い至り、その候補も直ぐに脳裏に浮かんだ。


「おい、山田に使わせてみようぜ」


 そう声掛けると、田場と加根元の二人は井口の視線の先を辿る、そこに居たのは気の弱い一人の男子生徒、山田公二が居た。


 三人は視線を合わせると、ニヤニヤとした笑みを浮かべ、山田の元へ足を運んだ。




「よぅ山田、なんかスキルは出たかよ」


 三人は山田を取り囲むと、首に腕を回すと周囲に聞こえない様に小声で話しかける。


「え、うん。い、一応僕にも、合成ってスキルがあるみたい」


「合成?なんか地味そうだな」


「いいじゃん安全そうで」


「よーし使え」


 井口は山田の返事を聞きくと、すぐさま使うよう促した。


「え、でも―――」


「いいから、使えって」


「たのむよ、山田ー」


「一回だけ、一回だけだから」


「う、うん」


 当然山田は渋ったが、三人に取り囲まれたまま執拗に頼まれると、断り切れずに結局スキルを使う事になった。



 山田公二

 レベル 1

 合成



 ステータスを出しスキルの合成に意識を集中すると、合成の使い方が何と無く分かって来る・・・気がしてくる。


 山田は先ず、合成がどんなスキルなのか調べようとするが、井口達はせっかちだった。


「まだ?なにしてんの?」


「山田くーん、早くー」


「じゃ10秒以内な。いーち、にー、さーん」


 外野に急かされ山田はスキルの確認もそこそこに、合成を行うための素材を焦って探すが、手ごろな物が見つからな無い。


「はーち、きゅーう」


 カウントの圧力に押され、焦って素材を探す山田の視界にステータスが映る。


(あれ、これって素材判定なんだ)


 感覚的にそう感じた山田は焦るままに二つの素材、ステータス欄の”山田公二”とスキル”合成を”の二つを合成させた。


 ―――そして山田公二の意識は、そこで”消えた”。




 井口達が取り囲む中、突然山田が膝から崩れ落ちる。


「お、ちょ、おま、ちょまて」


 行き成り倒れ込んだ山田を、井口は咄嗟に支えると、ゆっくりと床に寝かせた。


「うそだろ、スキルってマジやばいじゃん」


「し、死んだとかないよな」


 田場と加根元もオロオロしだし不吉な事を言い出す、井口は直ぐに呼吸を確認した。


「な、なんだよ、生きてるじゃねーか」


「びっくりさせんなよ」


「でも、これって大丈夫なんか」


 これは問題になるので? 三人の脳裏に武器を持ち周囲を取り囲む騎士の姿が浮かぶ。


「言っとくけど、俺見てただけだからな」


「俺も関係ない。そもそも井口が言い出したんだし」


「はぁお前らも面白そうに笑ってただろーが!」


 そんな責任の擦り付けを行う三人に騎士達が近づいて来る。


「どうした、何があった」


「え、いや。コイツ急に倒れちゃって」


 井口の口からでた咄嗟の言い訳に、騎士は呆れたように溜息を付く。


「こいつもか。気分が悪くなったり倒れたり、お前らどれだけ貧弱なんだよ」




「何事じゃな?」


 そこに騎士を従えマーグスが加わる。


「は、この者が突然倒れまして。もしやスキルを使ったのかも知れません」


「なんとなんと」


 騎士の報告を聞くと、焦ったようにマーグスは山田の傍らにしゃがみ込み、容体を調べだした。


 余りに真剣なマーグスの表情に、井口達が冷や汗を流しながらその様子を見ていると。


「スキル無しか。・・・こ奴はもう良い、寝床へでも放り込んでおれ」


 騎士の一人にそう命じると、只の貧血じゃろ、と急に興味が尽きたようにそのまま戻っていった。


 運ばれて行く山田を見ながら井口達は、内心の焦りを隠しつつ、その後は大人しく鑑定の順番を待つのだった。

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