第六話 退学の回避
郷田の父は、電車を乗り継ぎエイアイケー本社の前まで来た。
会社の中に入って受付まで行き、受付嬢に声をかけた「社長に会いたいのだが」と話した。
受付嬢は、「お約束は、していますか」
「いや」
「お約束してから、もう一度、来社して頂けますか」と話すと郷田は怒り出した。
「直ぐに社長を出せ。話しがあるんだ」と怒鳴った。
困った受付嬢は、「少し、お待ち下さい」と言い、社長秘書に連絡を入れて指示を待った。
しばらくして、社長秘書から連絡が入った。受付嬢は、「今、社長は不在で、夕方の五時には戻ってきます。もう一度、五時にお越し頂けますでしょうか。社長が遭うそうです」と話した。
「不在か」と言って、仕方なく郷田は会社を一旦出た。
郷田は喉が渇いたので、コンビニに入り、飲み物を買おうとした。
とりあえず、カードを差し出すと定員が「このカードは、取り扱いできないようです」と話した。
「そんなはずはない」と郷田は言ったが定員は「やっぱり、使えないようです」と言った。
郷田は、現金を渡して飲み物を買った。「何故だ、カードも使えないのか」と思った。そして、コンビニを出た。
郷田は「現金がいるな」と思い、銀行のATMでお金を引き出そうとした。
「このキャッシュカードは取り扱いできません」とエラーになった。銀行員に聞くと「口座が停止されています」と話し、お金を引き出せなかった。
「理由を聞くと、エイアイケーのサポートに聞いてください」との回答だった。
「なんだと、カードも使えないのか。そうか、カードにはAIチップが内蔵されているからか。これでは、生活も、ままならないではないか」と郷田はショックを受けた。
郷田は、仕方がなく夕方まで待つしかなかった。
結局、近くの公園で五時まで待つことにした。
郷田は考えていた。
「AIチップが拒否ということは、機械に関連するものは、全て使えないということか」
「ん、銀行口座も停止だと言っていたな。ということは、私は破産するのではないかぁ」
「生活もままらなくなる。相当、やばい。早く、AIチップの拒否を解除してもらわないといけない」と思っていた。
考えているうちに時間になり、再度、郷田は会社を訪問した。
受付嬢は、「はい、ご案内します」と社長室に案内した。
社長室に入り、俊介と郷田が面会した。
「こちらへ、お座り下さい。私は立花といいます」と俊介は言い、郷田はソファーに座った。
「私は郷田だ。早速だがAI機能が拒否していると聞いた。どういうことなんだね」と上から目線で話した。
「はい、お客様の個人番号を凍結させて頂きました」
「なんだと、どうしてだ」と郷田は怒り出した。
「郷田さん。あなたを犯罪者として扱ったのです。ですから、凍結させて頂いたのです」
「なんだと、なんで、わしが犯罪者なんだ」
「そうですか、わからないようですね。それでは、愛斗、五十嵐先生、入ってきて下さい」と二人を呼んだ。
すると、隣の部屋から二人とアンナが入ってきた。
「五十嵐さん、なんで、ここに。それに、こいつは誰だ」
「この子は、先日、郷田さんが退学にしろと言った生徒です。ねぇ、神崎くん」
「はい、校長先生」
「あ、昨日の件か。だからどうだというのだね」と郷田が言った。
「郷田さん、あなたは息子さんが言ったことを聞いて無実の彼を退学にしろと言ったのですよ」と五十嵐先生が話すと郷田は、「無実だと…」と言った。
「しかも、息子さんは、彼を退学処分にしないかわりに彼の彼女に対して脅迫したのです。彼女を自分の女にして、もてあそぼうとしたのですよ。郷田さん」と五十嵐先生が話した。
「なんだと、わしの息子を侮辱するのか」と郷田は怒り出した。
「郷田さん、息子さんは同じ方法で何人もの女の子を傷をつけた。これを犯罪と言わず、なんだと言うのかね」と立花社長が言った。
「そんな、デタラメな」
「いいえ、郷田さん、本当のことです」と五十嵐先生が言った。
「郷田さん、あなたが無実の罪で彼の退学を行うのであれば、私は、彼の退学を阻止しますよ」と立花社長が話すと「あなたとこの子は、関係ないだろう」と郷田は怒鳴った。
「いいえ、私は彼を小さい頃から息子のように思っています。できるのであれば、私の娘、美香と結婚してほしいぐらいです。それだけ、私は彼が可愛いと思っているからですよ。お分かりですか」
「息子が、嘘を言っていたと言うことかね。五十嵐さん」
「はい、そうです。郷田さん。今まで、あなたは取り返しのつかないことやってきたのですよ」
「郷田さん、当社としては、この事実を持ってAI機能を停止させて頂きました。おわかりですか」と立花社長が言った。
郷田は「うっう」と唸り声を出した。そして、少し間をあけてから、「しかし、これでは私は生活自体できなくなる。こんなこと許される行為ではないだろう」と話し出した。
「当社の停止登録は、国際的に認可されています。これは、犯罪を防ぐためです。ですから、日本政府も介入できませんよ」とキッパリ話した。
「お金も使えない、電気も使えないのでは、私は生きていけなくなる。なんとかしてくれ。頼む」と郷田は言った。
「解除するには、当社のトップであるアイトー・フランクスの認可が必要です。この件も彼は知っています。だから、直ぐに解除できませんよ」
「なんとかしてくれ」と郷田は土下座して頭を下げた。
「郷田さん、まず、お願いする前に謝ったらどうかね。ここにいる愛斗に。それに愛斗は、アイトー・フランクスの友人でね。愛斗が許さないかぎり、アイトー・フランクスも解除しませんよ」と俊介は、愛斗本人がアイトーだと言わず友人と嘘を言った。
「アイトー・フランクスの友人だと」
「はい」
「あ…、愛斗くん、大変、悪かった。許してくれ」とひたすら愛斗に謝った。
愛斗は、「僕は、謝ってすむ問題だけではないと思います」と言うと五十嵐先生が話した。
「郷田さん、あなたは、責任を取る必要があります」と五十嵐先生が話した。
「どうしろと」
「私も、理事の一人です。どう責任を取るか自分で考えて下さい。それに被害に遭った女の子達にも責任をとってください。それに彼にもです」
「わかった。私は理事を辞任しよう。私と息子は責任を取る。被害に遭った子達にもなんらかの責任を取ろう」
「愛斗くんと言ったかな。申し訳なかった。退学はなかったことに」と床に頭をこすりつけて謝った。
愛斗は、「わかりました」と一言だけ言った。
「郷田さん、あなたが責任を取ったら解除します。だから、早く責任を取って下さい」と立花は言った。
郷田は、「わかりました」と言い社長室から出て言った。
「愛斗、アンナ、これで解決だな」と俊介が言った。
「ありがとう。こんな方法があるなんて」と愛斗は言った。アンナは、笑っていた。
「でも、俊介さん。さっき、美香ちゃんと結婚させたいと言うのは冗談なの」
「いや、愛斗、本気だぞ」
「えぇ、本当に」
「本気だよ。お前が美香のこと好きなら結婚させたい。私は、愛斗のことも息子のように思っているからな」
「俊介さん、ありがとう。そう思ってくれて」
「だけど、愛斗、麗花ちゃんとはどうなんだ」
「わからない。今は、単なる幼馴染なのかな。幼馴染から始めようと言われたしね。麗花ちゃんと恋仲になれたらなと最初は思ったけど、今は、仲もいいしね。このままでもいいかな…と思う」
「そうか、お前は、もっと恋愛したほうがいい。恋をしなさい。まぁ、これから、楽しみにしてくれ」
「なにを」
「別に」と俊介は恋の策略を考えていた。
今日はお開きになり、愛斗とアンナは自宅に帰った。麗花には、これから帰ると連絡を入れた。
自宅に着くと麗花が家の前に立っていた。とても心配していたのだろう。
「麗花ちゃん、全部片付いたよ」と話した。
「それじゃ」
「退学には、ならないし、郷田達からは何も言われなくなると思う」と愛斗が言うと麗花は愛斗に抱きついてきた。「良かった」と言いながら。
「心配かけたね」と愛斗は言って、腕を麗花の背中まで回してギュッと抱きしめた。
アンナは、「良かった」思った。
「あぁあ、麗花ちゃん、これは愛斗に恋している感じだね…、あとで麗花ちゃんの気持ちを聞いてみよう」
「でも、愛斗は、わかっていないな。AIの研究対象と思っているのか。友達感覚で好きなのか、愛斗の気持ちは、どうだろうな」とも思っていた。
ただ、最後に俊介が言っていた「楽しみにしてくれ」と言っていたことが引っ掛かった。これも何かありそうだなとも思った。
それから一週間がたって、二人が学校に行くと郷田理事長は退任し、理事としても引退していた。
息子の陽太は退学処分、中田兄弟も退学処分と厳しい処分となっていた。
被害に遭った女の子達には、謝罪と賠償をしたとの噂を聞いた。
愛斗は、郷田を許し、AIブラックリストから削除した。
これで、平和な学生生活ができる環境となって、二人は安心したのであった。
ただ、愛斗のエロゲーオタクという嘘の噂だけは、改善せずにまわりからは、キモいと言われ続けた。
結局、つまはじき状態は変わらず愛斗は友達も出来なかった。
愛斗は、麗花ちゃん、美香ちゃんと仲良くできればいいと思っていたので、気にしなかった。
そして、後日、女の子の編入生と保健室に新しい女性保健医さんが来ることになった。
二人とも学校へ、面接に来ていた時に噂が広まったようだ。とても、綺麗な人だったから噂になった。
だが、この二人は俊介が仕組んだことだとは愛斗達は知らなかったのであった。
またもや、愛斗のまわりにひと波乱の足跡が迫っていた。
本話で、「第一章 日本での学生生活」における日本での高校生活が始まるときの話は終わりです。
第二章では、立花俊介のせいで、女難に遭う愛斗の物語が始まりますので、引き続き読んでみてください。