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AIオタクは恋をする  作者: 寺田ゆきひろ
第一章 日本における学生生活の始まり
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第五話 権力には権力を

 翌日の朝、愛斗達は学校に登校した。

 朝のホームルームで中尾先生が「神崎愛斗、この後、私と共に校長室に来てほしい」と言った。

「え、はい」と愛斗が返事すると、まわりからは「やばいよ、神崎の奴」「あぁ、やっちまったな」とか小声が聞こえた。

 ホームルームも終わり、中尾先生と愛斗が一緒に教室を出て行った。

 愛斗が行くのを見て、麗花と美香は心配そうな顔をして見ていた。


 中尾先生と愛斗は、校長室に入ると校長先生は、難しい顔をしていた。

「どうしたのですか校長」と中尾先生が声をかけると「非常にまずいことになったの」と校長先生は言った。

「どういうことです」

「今回の件が理事長の耳に入ったの。電話が来て神崎くんを直ぐ退学にしなさいと怒っていたのよ」と校長は言った。

「そうですか。校長」

「私の言葉も、耳にかさなかったわ」

「まずいですね」と中尾先生は難しい顔をした。

「とりあえず、神崎くん、自宅謹慎の扱いにしますので、しばらく家で待っていて下さい。あなたを退学にはしたくないから職員会議で話し合います」

「ありがとう。校長先生」と愛斗は答えた。

「中尾先生、神崎くんを自宅に帰してください。放課後、職員会議をすると他の先生達に伝えてください」

「はい、わかりました。校長」と言って、中尾先生と愛斗は、校長室を出た。

「神崎くん、教室に戻ったら帰り支度をして自宅に帰ってくれますか」

「はい、わかりました」と言って、中尾先生は職員室に愛斗は教室に戻った。


 教室に戻ると一時間目の授業が始まっていた。

 愛斗は「すいません。今日は帰りますので、失礼します」と帰り支度をして教室を出た。

 麗花と美香は、「え、なんで」と思っていた。まわりは「やっぱりな」と声が聞こえてきた。


 一日の授業が終わり、直ぐに帰り支度をした麗花と美香は、急いで教室を出た。

 すると、廊下に郷田と中田兄弟がいた。

 郷田は、「どうだ、お前の彼氏は退学だって」と声をかけた。

「なんで、退学だって知っているの。あっ、あなたの仕業ね」と美香が言った。

「しらねぇよ。おい、退学にならないように俺がなんとかしてやるぞ、そのかわり、俺の女になれ。へっへっへ、沢山、可愛がってやるかよ」と郷田は言った。

 麗花は、無視して通り過ぎて駆け足で行った。

 美香も、麗花のあとを追った。そのとき美香は「先輩のときと同じ手口だわ、卑怯よ」と思った。


 愛斗は自宅に帰っていた。リビングにあるソファーに座って考え事をしていた。

「あぁ―あ、僕は何しに日本に帰ってきたのかな…」

「たしか、次世代のAIチップを研究するためだったよな…」

「日本の心を知るため…。恋愛して心を知るため…。恋か…、なんか恋もできそうでもないな…」と考えていた。


「でも、麗花ちゃんの優しさ、それに思いやりは知ったな。麗花ちゃんの心を知ったのは収穫だ」

「次世代AIチップの構想は、麗花ちゃんをモデルにして考えればいいかも。だから、もう日本にいる意味がないかもな」と思っていた。


 愛斗はため息をつきながら「あぁ―あ、それにしても理事長の耳に入ったから退学だってひどいよな。もう、アメリカに帰ろうかな」と声を出して独り言を言っていた。


 すると後ろで、麗花ちゃんが立っていた。

「あっ、吃驚したぁ」と愛斗は声を出した。

「やっぱり、あいつらの仕業なの…。いやよ。アメリカに帰っちゃ。なんで、愛くんが退学にならなきゃいけないの」と声を出し涙目になっていた。

「麗花ちゃん」と愛斗は声を出すと、麗花は「帰ったら駄目よ」と叫び、いきなり泣きながら愛斗に抱きついた。

 麗花の腕が愛斗の首に回っていたため、愛斗は「うぅ、苦しい。首が締まる」と声を出てしまった。

「だけど、麗花ちゃんの胸があたっている。なんて大きい胸なんだ。凄く柔らかくて気持ちがいいな」とも思った。


 麗花は、そのまま、泣いていた。

「あ、麗花ちゃん、大丈夫だよ」と言っても麗花は無言だった。

 少し、このまま二人は抱き合ったままだった。そのとき、美香もリビングに入ってきて、二人を見守っていた。

「麗花ちゃん、僕は大丈夫だよ。心配しないで」

「大丈夫じゃないよ。私が愛くんを守るから」と麗花が言うと美香が「麗花、駄目よ、あいつの言いなりになったら」と言った。

「でも、愛くんを守れるのなら」

「麗花、あいつの女になったら、滅茶苦茶にされるよ。先輩と同じ目に遭うよ。だから駄目よ」


「美香ちゃん、どういうこと」と愛斗が聞いた。

「愛くんを退学にしないかわりに麗花があいつらの女になれって」

「なんて、汚い奴らだ。駄目だよ、麗花ちゃん。あいつらの言いなりになっちゃ。僕は大丈夫だから」

「だって」と麗花は抱きついたまま、さらに泣いた。


 するとリビングのドアが「ガチャ」と音がした。中に入ってきたのはアンナだった。

「何事なの。皆んなどうしたの」とアンナは声を出して吃驚していた。

 美香は、「アンナさん、帰ってきたのですか」と話し、アンナは「今ね。だけど、何事」と聞いた。

 美香は、今までのことをアンナに全て話した。


 すると、アンナは「なんですって、私の可愛い愛斗を退学にするって、それに私の可愛いお気に入りの麗花ちゃんまで毒牙にかけようなんて、絶対許せない」と怒りをあらわにして声を出した。


 相変わらず、愛斗に抱きついたままだった麗花にアンナは声をかけた。

「麗花ちゃん、大丈夫だよ。私がなんとかする。だから、愛斗も退学にならないし、麗花ちゃんも、そいつらの女にもさせないから」とアンナは話した。

 麗花は顔を上げて、「アンナさん、どうするの」と話した。

「ふふ、麗花ちゃん、私に任せて。私を信じてくれるかしら」

「美香ちゃん、お父さんに電話して。緊急事態とアンナが言っていたと話せばいいから」

「それだけで、いいの」

「そう、そうしたら、私の携帯に連絡がくるから」

「わかりました」と美香が言って父俊介に電話した。


「麗花ちゃん、私を信じて。大丈夫だから作戦があるの。だから、家に帰って待っててくれる」

「はい。わかりました。アンナさんを信じます」と言って麗花は愛斗と離れて、しょんぼりしながら自宅に帰った。


「アンナさん、お父さんと連絡とれたよ」

「ありがとう美香ちゃん」

「それと、愛斗、あなた、わかっていないと思うけど、こんな、理事長の権力なんか簡単に吹き飛ばせるよ」

「なんで」

「小さい権力を振りかざしているけど、愛斗は、もっと大きい権力を持っているのよ」

「え、そうなの」

「そうよ」とアンナは話すと、アンナの携帯に俊介から電話があった。

 アンナは、俊介に事情を話して電話を切った。

「美香ちゃん。これから、あなたの家に行くわよ。愛斗も一緒ね」と話して家を出る準備をした。


 三人は、美香の家に行き、俊介が帰ってくるのをリビングで待った。

 リビングのドアが「ガチャ」と鳴り、俊介が帰ってきた。

「お待たせ。校長の五十嵐先生からも話しは聞いたよ。とんでもない奴らだね。これは、こてんぱんにやっつける必要があるね」

「そうなの。パパ。なんとかできるの」と美香が話した。

「できるさ、アンナ、さっき電話で話していたことをやろうか」

「はい。そのほうが敵面です」とアンナは答えた。

「愛斗、お前がいないとできないんだ」

「なにするの、俊介さん」

「AIブラックリストに登録するんだ」

「えぇ―、AIブラックリストは、テロや国際的な犯罪者に登録するリストじゃないの」

「そうだよ、この郷田親子達も殆ど犯罪者だよ。いじめも犯罪だし、何人もの女の子を脅迫して毒牙にかけているからね」

「そうかな…、まぁ…、犯罪に近いか」

「そうだよ、AIブラックリスト登録には、CEOである愛斗の認可が必要だ。いいな」

「はい」と愛斗は答えた。


 不思議に思った美香が「ねぇ、AIブラックリストに登録されるとどうなるの」と聞いた。

「AIチップは独自ネットワークで接続されているから、AIブラックリストに登録されているかチェックするんだ」

「AIチップは個人番号でオーナー登録してから使うから、リストに入っているとそのオーナーのAIチップ機能はロックされるんだ」

「パパ、AIチップがロックするとどうなるの」

「ありとありうる機械は、停止するんだ。だから、電化製品、車など全て動かなくなるな」

「へー、そうなの。じゃ、何も使えなくなるんだ。生活どころじゃないね」

「そうさ、家にも居れないし、カードも使えなくなる。物も買えないね。ホテルさえ泊まれないから居場所もなくなるね」

「じゃ、殆ど泣くしかないね。でも、そんなことやって問題とかおきないの」

「AIブラックリストは、国際犯罪、テロなど防ぐためにあるんだ。これは国際的に認可されているから問題ないよ」

「えー、凄いね。あいつら生きていけないね」と美香は吃驚した。

「そうだな」と俊介がうなずいた。


「愛斗、一緒に本社にあるサーバー接続端末でやろう。その端末しか接続できないからね」

「はい、わかりました」

「じゃ、これから会社に行こうか」と俊介は話し、車で愛斗と会社に向かった。

 俊介は「面白くなってきたな」と話しながら車を運転した。

 会社に着き、サーバー接続端末の前ききた。愛斗は端末を操作し、セキュリティチェックも行ってサーバーと接続した。

 そして、郷田親子の個人番号をAIブラックリストに登録した。

「これで、明日から全て使えなくなるな。見ものだな」と俊介は、ワクワクしながら話した。


 そして、翌日の朝、郷田の家では、電気が止められた。

「おい、なんで停電しているんだ」

「はい、旦那様。わかりません。電話もできないです。今、私個人の携帯で電力会社に電話してみます」

「そうか、わしは、とりあえず出るぞ。あとはたのむ」と言って玄関に出た。

 車の前に来ると「おい、どうした」と運転手に声をかけた。

「はい、車のドアロックが開かないのです」と運転手が言った。

「なんとかしろ。クビにするぞ」と郷田は言った。

「親父、車が動かなくて、俺も学校に行けなくて困っているんだ」と郷田陽太が言った。

 郷田家の機械的なものが全て停止していたのだった。


 使用人が「旦那様、電力会社と連絡が取れたのですが」と話した。

「なんだって」

「はい、お客様の電力供給がストップしているそうです」

「だから、なんだ」

「電力供給システムのAI機能が拒否しているから電力供給ができないとのことです」

「じゃ、どうしろと」

「AI機能を管理しているエイアイケーのサポートに連絡してくれと言われました」

「じゃ、そのサポートに連絡してみろ」

「連絡したのですが、お客様は全てのAI機能は使えません。としか教えてくれません」

 郷田は「役立たず。わしの携帯は使えないから携帯を貸せ。わしが電話する」と言ってエイアイケーのサポートに電話した。


 サポートに繋がり、再度、何故か聞いた。

 サポートは、「先程、話しましたが、お客様のAI機能は使えない状態です」

「何故だ。理由を言え」

「これは、トップシークレットとなっておりますからお応えできません」とサポートは話した。

「トップシークレットだと、なんとかならないか」

「これは、当社の社長でないとわかりません」

「社長を出せ」

「社長を出すことはできません」

「じゃ、もういい」と電話を切った。

「陽太、お前は歩いて学校へ行け。わしは、電車でエイアイケー本社に行く」と父郷田は言った。

 郷田は、多少の現金を持って家を出た。


 その頃、愛斗の家では、謹慎で暇だったので望月を自宅に呼んでいた。

 ダブルAIチップのアーキテクチャ(こうぞう)を望月さんに説明していたのだった。

 望月は、真剣に愛斗の話しを聞いていたのだった。




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