第ニ十三話 愛斗がスクープされる
夏休みも終わって、学校が始まってから早や半月が過ぎた。相変わらず、愛斗と麗花は、いつものごとく一緒に学校へ向かって歩いていた。
「ねぇ、愛くん、今日は大丈夫みたいね」とキョロキョロしながら麗花は話した。
「そうだね。つけられてなさそうだね」と愛斗も周りを見ながら話した。
「もう、諦めたのかな」と麗花が言うと「多分、諦めていないと思うよ。パパラッチは諦めが悪いから」と愛斗が言った。
「そういえば、愛くん、もうすぐ、文化祭だね」
「あれ、その前に運動会があるんじゃなかったっけ」
「運動会ではなくて、体育祭だよ」
「そうか、体育祭か」
「体育祭は、中止になるかもと言っていたのよねぇ」
「そうなの、なんで」
「うん、会場が取れないみたい」
「そうなんだ。残念だね。授業がサボれるのに」と愛斗は言った。
「ふふふ」と麗花は笑った。
「麗花ちゃん、じゃ、文化祭って、どんなことするの」
「そうか、愛くん、アメリカにいたから文化祭って知らないのか」
「うん」
「文化祭って、学校のお祭りみたいなものなの。模擬店、展示とかライブもやったりするんだよ」
「そうなんだ。楽しそうだね」
「そうよ、あと、クラスでも何か出すんじゃないかしら、模擬店とか何かだと思うけど」
「うちのクラスは、何を出すんだろうね」
「これから決めると思うよ」と話している間に学校に着いた。
愛斗と麗花が教室に入ると美香と詩織がきた。
「愛くん、麗花、おはよう」
「おはよう」と愛斗と麗花は挨拶した。
「そういえば、聞いた話だけど、体育祭は中止になるんだって」と美香が言った。
「やっぱり、中止になるのね」と麗花は言った。
「それで、早速、文化祭の話が出ているみたい」
「そうなの。うちのクラスは何をやるのかしら」
「これから決めるみたいよ。京香が言っていたのよね」と話していると先生が教室に入ってきた。
「皆んな、席に座ってください。ホームルームを始めます」と先生が言うと皆んな席に着いた。
「早速ですが、委員長、文化祭の出し物を決めてほしいんだ」と言った。
「出し物ですか」と京香が言った。
「そうだ。今週中に決めてくれればいい」
「わかりました」
「よろしく。今日の連絡事項は、これだけだ。じゃ、ホームルームは終わります」と言って先生は教室を出た。
京香は、前に出てきて皆んなに言った。
「皆さん、明日、話し合いをしますので、今日一日、文化祭で何をやりたいか考えておいてください」と話した。
そして、しばらくして教科担当の教師が来て授業が始まった。
午前中の授業が終わり昼休みになると愛斗、麗花、美香、詩織は一緒に昼食を食べていた。
愛斗と麗花の弁当は、麗花の手作り弁当だった。
「愛くんのお弁当は、毎度のこと麗花が作ったの」と美香が聞いた。
「そうだよ」と愛斗は答えた。
「美味しそうね。麗花の愛妻弁当ね」と美香が言うと愛斗と麗花は赤くなった。
それを見ていたクラスの男子は、睨みつけて言った。
「愛妻弁当だって、なんで、神崎さんは、あんな奴の弁当まで作ってくるんだ」
「いいな。羨ましい」
「神崎さん、可愛いのに、悔しい」
「まるで、夫婦じゃん」とつぶやいていた。
その様子を委員長の小泉京香と親友の中村和美が見ていた。
「ねぇ、京香」と和美が京香に声をかけた。
「なに、和美」
「神崎麗花ちゃんって、あんなに可愛いのに何で神崎愛斗といつも一緒にいるの」
「愛斗くんのことが好きだからじゃないの」
「えー、じゃあ、あの二人は、やっぱり付き合っているの」
「わからないわ」
「堂島さんも、神崎愛斗が好きだと言っていたよね。じゃあ、二又じゃん。なんて奴なの。クズよ」
「堂島さんのこともわからないわ。だけど、本人達の問題だからね」と京香が答えた。
「ふーん、だけど、堂島さんも麗花ちゃんも美人さんなのに釣り合わないよね。不思議だわ。あんなオタクぽくって冴えない奴なのに」
「私は不思議ではないと思うよ」
「えー、京香もそう思うの。だって、神崎愛斗って外見は普通だし、何考えているかわからないし、皆んなから嫌われているのよ」
「あのねぇ、和美、愛斗くんだって、いいところがあるんだと思うよ。麗花ちゃんは、外見ではなく内面を見て好きになったのだと思うよ。堂島さんも同じね」
「じゃあ、彼は内面的にどんなところがいいのかな。京香はわかるの」
「彼は、性格がいいと思うよ。それと、思いやりもあって優しいと思うわ」と京香は妹の香奈が助けられたことを思い出しながら答えた。
和美は、京香が思いにふけっていることを見ながら、また話し出した。
「ふーん、京香は、随分、彼のこと知っているのね」
「色々とね」
「他には何かないの。例えば、何か秘めたものがあるとか」と和美はしつこく聞いた。
「秘めたものねぇ、あるかもね」
「ほんとに、京香ぁ」
「あっ、まずった」と京香は手のひらで口を押えて言ってしまった。
「ねぇ、何か知っているの。京香」
「ちょっと、言えないかな」
「教えてよ」と和美はしつこく聞いた。
京香は少し考えてから話した。「絶対、誰も言わない」と和美に聞いた。
「絶対、言わないから」と和美はお願いした。
「じゃ、親友の和美だから言うね。誰にも言わないでよ」
「うん、言わないよ」
「和美は、エーアイケーという会社は知っている」
「ええ、知ってるよ。AI関係で世界的に有名な会社もね」
「そうよ。実はね。彼は、エーアイケー本社のCEOであるアイトー・フランクスくん、本人なのよ」と京香は愛斗の秘密を話した。
和美は、一瞬沈黙して言った。
「えー、アイトー・フランクスさんって、超有名な人よね。しかも、世界で初めてAIチップを普及させた人よね。社会の教科書にも出てくるよ」と少し大きな声で言ってしまった。
「ちょっと、和美、声が大きいよ。びっくりしないでよ」
「でも、名前は、神崎愛斗だよ」と小声で和美は話した。
「彼は両親がなくなって、アメリカの親戚に引き取られて養子になったの。本当の名前は、愛斗・フランクスなんだって」
「ああ、なるほど、ローマ字だと、アイトーだよね。なるほど、なるほど」
「そうなのよ。それに彼は、私の妹香奈がいじめに遭っていたのを助けてくれたのよ」
「えー、そういうことが遭ったの。彼はいいところがあったんだねぇ。でも、愛斗くんって凄い人だったんだね」
「そうよ。だから、このことは秘密ね」と京香は念をおして言った。
「わかったわ。秘密にするね」と和美は答えた。
だが、少し考えていた。「記者さんに頼まれたけどどうしようかな」と迷っていた。
和美は、「親友との約束だから黙っていよ」とも思っていたのだった。
そして、午後の授業も終わり、愛斗は麗花達と一緒に帰った。和美も帰り支度をしてから京香に声をかけた。
「京香、一緒に帰ろう」
「ごめん、和美、集めたノートを先生のところに思っていくから先に帰っていいよ」
「わかったわ。じゃあ、京香、先に帰るね」と和美は言って、教室を出た。
和美が校門を出て、自宅の方へ帰る途中に新聞記者の中島が待っていた。
「少し、いいかい」と和美に声をかけた。「はい」と和美は答えながら考えた。「やっぱり、この人に言うのやめよう」と思っていた。
「ねぇ、彼の秘密、わかったかな」と中島が聞くと和美は、「いいえ」と答えた。
「ねぇ、本当かな」
「何も、わかりませんでした」と和美は答えたが中島は疑った。
中島は、「何か掴んだな」と思って、聞いた。
「やっぱり、何か知っているんでしょう」
「いいえ」と和美が答えると中島の仲間が来た。
「中島、何かわかったのか」と中島の仲間である飯島は来た。
「ああ、この子が知っているみたいなんだ」
「そうか、お嬢ちゃんたち、彼がアイトー・フランクスなんだよね」
「知りません」と和美は答えた。
「まぁ、その言い方だと彼がアイトー・フランクスだということを知ったのだろう」
「あ、だから、違います」
「お嬢ちゃん、彼がアイトー・フランクスということは、もう別の人から聞いたからわかっているんだよ」と飯島が言った。
「えっ、じゃあ、バレたということなの」と和美は、つい答えてしまった。
「やっぱり、そうか」と男は言った。かまをかけたのだった。
「中島、いくぞ」と新聞記者の中島達は、和美のところを急いで去っていった。
和美は「ひどい、かまかけるなんて。どうしよう」とつぶやきながら座り込んでしまったのだった。
会社に戻った中島と飯島は、早速、スクープの準備を整えていった。
「神崎愛斗くんの写真は、撮ったか」
「まだだよ」
「じゃ、いつも、一緒にいる女の子だとかも写真を撮ってくれ」
「わかった」と中島と飯島は念密な打ち合わせをしながらスクープの準備をしていたのだった。
「俺は、望月という男を張るからな」と飯島は出て行った。
その頃、愛斗は日本エーアイケーにいた。望月が愛斗の家に来て迎えに来た後に会社に行ったのだった。
愛斗と望月は、打ち合わせをしていた。
「愛斗さん、今、考えている次世代AIチップの構想を教えてほしいんだよ」
「まず、簡単に言うと、望月さんのAIダブルチップにもう一つ、サブチップをバイパスで接続するんだよ。今のAIチップが人間の脳であり、今度、接続するAIチップが人間のハートになるんだよ」
「ハート、心臓のこと」と望月が聞くと愛斗は答えた。
「そうだよ、人間の心、ハートランニングチップだよ」と愛斗は宣言した。
「ハートランニングチップ、どういうこと」
「ハートランニングチップは、日本人の心。おもてなし。やさしさをデータ化したチップだよ。相手からこうしてほしいということを受け答えするチップになる」
「なんか、凄いことになりそうですね。なんか、わくわくしますよ」と望月は話した。
しばらく、愛斗と望月は打合せしてから、会社を出た。
会社を出たところに飯島が待ち構えていた。
「やっぱり、そうか、神崎愛斗くんと開発チーフの望月が一緒だ。彼がアイトー・フランクスだという証拠だ」とつぶやいた。
そして、飯島は二人がいるところの写真を撮りまくっって、飯島は大喜びだった。
「大スクープだ」と思っていた。
望月は、愛斗と車に乗って自宅まで送っていったのだった。
望月は、ワクワクしていた。「また、愛斗さんと一緒に開発ができるなんて」と心に思っていた。
愛斗の自宅に着くと望月は話した。
「愛斗さん。また、一緒にできますか」と望月は話した。
「是非、また、お願いします。それと、アメリカで一人、呼び寄せる予定なんですよ」
「誰をですか」
「僕の片腕となっているマイク・アンダーソンだよ」
「えー、ほんとうですか。あのマイク・アンダーソンですかぁ、最初、愛斗さんと一緒にAIチップ開発をした人ですよね」
「そうだよ、彼は欠かせないからね。僕の親友でもあるし。アメリカでは、僕の初めての友達なんだ」
「そうですか。心強いですね。それでは、頑張りましょう」と望月は行った。
そう、マイク・アンダーソンは、アメリカで一人だった僕に声をかけてくれた人だった。
初めての友達であり、お兄さんみたいな人だった。
愛斗がAIチップを開発するときにサポートしてくれたのがマイクだったのだ。
マイクは、現在、アメリカ本社で開発チーフをやっている。
もう一人の天才とも言われているのが彼だった。
愛斗は、「次世代AIチップの開発には、マイクは欠かせない」と思いながら家に入ったのだった。




