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AIオタクは恋をする  作者: 寺田ゆきひろ
第一章 日本における学生生活の始まり
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第一話 帰国、そして、再会

 僕は、神崎愛斗(かんざきあいと)、ハ歳の時に自動車事故で両親を失った。

 一つ年下の妹である花蓮(かれん)と二人きりになってしまった。

 葬儀の日、アメリカにいる母の妹である紫乃(しの)と紫乃の夫であるマイケル・フランクスが来日していた。

「愛斗、花蓮、これからは、アメリカで私達と暮らすのよ」と叔母の紫乃に言われてアメリカに行くことになった。

 だけど、一つだけ心のこりがあった。

 凄く仲の良かった幼馴染であり、親戚の神崎麗花(れいか)ちゃんとも、別れることになってしまったので悲しかった。


 アメリカに行く日、麗花ちゃんと別れのあいさつができなかった。麗花ちゃんは、盲腸で入院していたからだ。

 愛斗は、「バイバイ、好きだよ。麗花ちゃん」と手紙を書いてポストに入れた。そして、僕達は渡米したのだった。

 

 愛斗は、渡米する前、恋愛シミュレーションゲームにハマっていた。ゲームでのやり取りが好きで、AIというものに興味を持った。

 この影響で、AIにハマってしまいAIオタクとなってしまった。

 アメリカで、AIのことばかりやってきたため、AIの天才と言われるようになり、十歳でAIチップを開発してしまった。


 AIチップは、ありとあらゆる家電、コンピュータに搭載することで、簡単にAI化ができるチップであった。

 それで、叔母紫乃と叔父マイケルの援助を受けてエイアイケー・コーポレーションという会社を設立した。

 五年が過ぎ、今ではAIチップが世界中に売られて、大成功してしまった。

 会社は、M&Aなど屈指し短期間で世界七十ヵ国に支社を持つグローバル企業となり、愛斗は、全社を統括するCEOになっていた。

 これだけ大きく成長したのも、紫乃とマイケルの手腕によるものでもある。

 このとき、愛斗は会社の筆頭株主でもあり、若干、十五歳であった。


 ときに今は夕方、愛斗はベットの上で横になって考えていた。

 爆発的に売れている現在のAIチップに不満があったからだ。

 愛斗は独り言をつぶやいた。「今のAIチップは、学習情報をフラグ化してキャッシュに保持しているからな。いずれ、容量オーバーになってしまうな」

「キャッシュフラグの容量を増やしてバージョンアップしているけど、いずれは限界がくるな」

「なんとか、人の気持ちを理解するような仕組みができないかな」と考えていた。

「人の気持ちを理解するサブキャッシュを追加すればいいと思うけど、人の気持ちかぁ…」

「そういえば、小さい頃、日本で恋愛シミュレーションゲームにハマっていたな」と独り言を話した。


 しばらく、目を閉じて恋愛シミュレーションゲームにハマっていたことを思い出していた。

 そのとき、はっと思いついた。

「そうだ、原点に戻ろう。基本は原点だよ、八歳のとき恋愛シミュレーションゲームにハマっていたよな。開発のテーマは恋愛だ」と大声で叫んだ。

 隣の部屋にいる花蓮の部屋まで、叫んだ声が聞こえた。「うるさいな。なにが恋愛よ」と花蓮の声がした。


「あ、ごめん」と愛斗は叫んだ。

「だけど、恋愛するにも僕は女の子にモテないからなAIオタクだし」とつぶやいていた。

 そう、愛斗は容姿が良いとはいえない。少し痩せているが背丈も普通、顔も普通、AIのこと以外は普通だった。ただ、可愛い顔だとよく言われる。

 AIオタクだから、あまり女の子の扱いに慣れていないため、今まで女の子からは相手にされなかった。


「まずは、人の気持ちを理解するため、日本に行こう。日本の女の子は優しいと言われるからな。日本の高校に入り、そして、学園生活を行って恋愛しよう」と思った。


 夜になり、早速行動だと思い、すかさずリビングにいる紫乃とマイケルのところに愛斗は行った。

「叔母さん、叔父さん、相談したいことがあるんだ」

「なんなの」と紫乃が言った。

「僕、日本に帰国したいんだ。高校は日本で学びたいんだよ」と愛斗は話した。


「愛斗、随分、突然ね。急にどうしたの」

「次世代のAIチップを開発するためだよ。日本の人々は、優しい人が多いから、AIチップに優しい気持ちを搭載する研究をしたいんだ」

「そうなの」と答え、紫乃は少し考えた。

「愛斗のことだから色々な考えがあるのでしょう。いいわよ。好きにしなさい」と紫乃は言った。


「ありがとう。叔母さん」と愛斗は感謝した。

「でも、一人で行かせるのも、心配だわ」

「紫乃、秘書のアンナと一緒に行ってもらったらどうだろう」と叔父マイケルは話した。

「そうね。アンナと一緒だったら安心だわ。アメリカに来たころから愛斗のことはよく知っているし、愛斗の身の周りは、アンナに任せましょう。愛斗は身の周りがきちんとできないのだから」と紫乃は言った。

「そうだな。あと、会社のほうは、紫乃と私のほうでなんとかするから大丈夫だよ」と叔父マイケルが話した。

「ありがとう。叔母さん、叔父さん」と言った。

「出発の準備を早くやらなければね。今はニ月だし、日本は高校の受験シーズンね。知っている人に頼んで入学できるところを探しましょうね」と紫乃は話した。


 翌々日、アンナは、愛斗が来日するための準備に日本に向かった。

 愛斗も来日する準備を始めていたところ、自分の部屋に妹の花蓮が入ってきた。

「お兄ちゃん、日本に行くんだって」

「そうだよ」

「なんか、急だね。寂しくなっちゃうな」

「花蓮も、日本へ遊びに来るといいよ」

「そうだね。あと、話しは聞いたよ。AIに人の気持ちを搭載しようとしているんだって」

「そうなんだ。研究の為にね」

「お兄ちゃん、日本で恋でも、しようとしているんでしよう」

「なんで、わかるんだ。お前、透視でもできるのか」

「お兄ちゃんの考えていることなんて、わかるわよ」

「花蓮、凄すぎ」

「でしょう。でも、お兄ちゃん、女の子の気持ちとか全然わからないからな。大丈夫なの」

「俺、わからないかな」

「わかっていないよ」

「まぁ、試行錯誤(しこうさくご)して頑張ってみるよ」

「まぁ、頑張って。そういえば、昔、住んでいたところに戻るんでしょ」

「あぁ、昔、住んでいた家は残してあるらしい。父さんと母さんの思い出の家だからな」

「そうだよね。もしかしたら、昔、よく一緒に遊んだ麗花ちゃんに会えるかもね。親戚でお隣だし」

「もし、会えたら告白でもしてみようかな」

「もう、そんなだから、お兄ちゃんは女の子の気持ちがわかっていないのよ」

「えぇ―、そうなのかな」

「そうよ。駄目ね」と普段どおり兄妹の会話をしていた。


 三月の末、アンナから来日の準備が整ったとの連絡が来た。

 次の日、愛斗は日本に行く準備が整ってリビングに行った。

「叔母さん、叔父さん、日本に行ってきます」

「体には気をつけてね。アンナは、日本の空港で待っていると思うの。合流してね」

「はい、叔母さん。行ってきます。ありがとう」と家を出た。


 空港に着き、日本に行く飛行機に乗った。フライト時間が終わり、日本に着いた。空港にはアンナが待っていた。

 アンナは長身でスタイルも良く、ロングヘアの金髪美人だ。頭も良く超エリートである彼女は、会社で愛斗の秘書もやっている。

 彼女との関係は、愛斗が渡米したあと僕の面倒をよくみてくれたお姉さんみたいな存在である。

 紫乃の親友シンディの娘さんで、僕より、十歳年上の二十五歳だ。


 発着ゲートを出ると「アイトー」と叫んだ声が聞こえ、アンナが僕を見つけてくれた。

 僕は、アメリカでは、アイトー・フランクスという名を名乗っている。一応、叔父と叔母の養子になっているからだ。

「アイトー、飛行機は大丈夫でしたか」とアンナは日本語で話した。

「アンナ、大丈夫。でも、飛行機は苦手だな。耳が痛くなるよ」

「ふっふふ、慣れなんですけどね」とアンナは笑顔で答えた。

「さぁ、行きましょう。車を止めてあるの」とアンナは言った。


 二人は、車に乗って東京にある自宅へ向かった。

「学校の入学手続きは、済んでいます。来週の四月七日が入学式になりますので、そのつもりで」とアンナは車を運転しながら説明した。

「アンナ、やることが早いね」

「そうですか。学校は、日本エイアイケーの社長である立花様の紹介で学園の推薦枠に入れて頂きました。学校は、大鷹学園ですよ、アイトー」

「アンナ、立花って、家によく来ていた俊介さん」

「はい、そうです。マイケルの大親友である俊介様です」

「はぁ…、俊介さんに借りを作ってしまったか―、俊介さんはどうも苦手だよ、アンナ」

「ふっふっ、アイトー、また、いいように()き使われそうですね」

「そうだよ、俊介さんペースにはめられるよ」と愛斗はガッカリした。

「それと、お隣の親戚である神崎様のお嬢さんも同じ学校に入学するらしいですよ。後でお隣へ挨拶に行きますよ。アイトー」

「本当に麗花ちゃんにも、会いたいな―」

「会えるかもね。あと、明日、日本エイアイケーの本社に出社して頂きます。立花様とパートナー企業との会食があります。その後の予定もありますので、お願いします」

「帰国してすぐなの―、早速、予定を入れてきたよ。流石、俊介さんだよ」

「仕方がないですよ。全社を束ねるトップなのですから。予定は詰まっているのですよ。アイトー」

「あと、エイアイケーのトップが来日するとマスコミが嗅ぎ回ったみたいで、全てシャットアウトしておきました。だから来日時間も知れ渡っていないので、空港も静かだったでしょう。アイトーは、そういうこと嫌いだから」

「何から何まで、サンキュー、アンナ」

「あ、もうすぐ、着きますね」と話している間に家に着いた。一戸建ての家だ。


 車から降りた愛斗は、家を眺めた。「昔のままだ。懐かしいな」と思い出に(ひた)っていた。

「アイトー、送った荷物は全て運んでありますよ」

流石(さすが)、アンナだ。抜かりはないね」

「任せて」とアンナが言うと、家の先から一人の女の子が歩いて来た。

 長いストレートロングの黒髪で、背丈も愛斗と変わらない細身だが、胸は大きく可愛いらしい女の子だった。

 近くまで来てすれ違いざまに愛斗と女の子は、目が合った。

 二人は、少し沈黙して、お互い考えた。

「あっ、もしかして、麗花ちゃん」と愛斗は声を出した。

「え、もしかして、愛くん」と麗花も声を出した。

 実に七年ぶりの再会であった。


「麗花ちゃん、久しぶり、なんか、凄く、大人になって綺麗になったね」

「えぇ、そうかな」と麗花は答えた。

「麗花ちゃん、僕は、あのときと同じで麗花ちゃんが好きなんだ。だから僕と付き合おうよ」と愛斗は告白した。

 麗花は、赤くなり、「えぇ―、愛くんのバカっ、嫌いよ」と言って走って行った。

「えぇ―、なんで、昔、恋愛シミュレーションゲームのように好感度フラグはオンなっているはず。仲良くなって、お互い、好きだよと言っていたのに何で嫌いなんだ―」と愛斗は叫んだ。

 横で見ていたアンナは、「くっ、くっ、くっ」とお腹を抱えて笑っていたのだった。

 愛斗は、もう、昔のことだということを全然、わかっていなかった。

「アンナ、僕、フラれたのかな」

「まぁまぁ、アイトー、家に入りますよ。くっくっくっ」とアンナは笑いながら言って、家の鍵を開けた。

 そして、アンナと愛斗は、家に入ったのだった。


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