プロローグ-02-
私、斎藤千鶴(20歳)は父が整体師、母がネイリストをしていて、2つ上にスポーツトレーナーを目指す兄と、5つ下に美容師になる!と夢見る妹の5人家族。
私は母が自宅の1階で個人サロンを経営していて、よく母の仕事風景を見ていた。その中でも1番印象的なのは毎回お客様から笑顔で『ありがとう』と言われていること。そして母のネイルに対する向上心なども凄くて、小さい頃からネイリストになりたい!と夢見て高校生の頃に母の指導のもと3年かけてネイルの検定を全て取得した。
本当は大学とかも行かずにネイリストになろうと思ったら今後のことを心配した両親に猛反対された。
ならば、と思い最終的には母と同じ自宅サロンをしたかったので家から近い大学に絞って経済学を学んでる途中。
で、同じ大学に通ってる生徒限定で出張ネイルでお小遣いを稼いだり、大学がない日は母のサロンでバイトさせてもらったり、ネイルの練習をしてる。
「問題は今日の出来事よね」
今日は授業が1限と4限しかなくて、授業の合間に大学でネイルの施術を三人して授業を受けて帰ったところまではいつも通り。
ネイルの予約がある時はキャリーケースに必要な道具を入れて持ち歩くので、30分かけて歩いて大学に行く。
まあ、歩くのは好きなので苦痛に感じてないのが救いかな。
それに都合が合えば兄が車で迎えに来てくれる。
今日は歩いて帰ってたんだけど、途中で急激に頭が痛くなって薬局で市販の頭痛薬を買おうと寄り道した。
低気圧とかの影響で頭痛になりやすいからそのせいかと思ってた。
「でも、今日は晴れてたし台風が来てるとか雨が降ってるわけでもなかったんだよなぁ」
薬を飲んだあとしばらくは頭痛がしてたんだけど、痛みが治まってきた頃に今度は耳鳴りが始まった。
流石におかしいと思って病院に行こうと思った矢先に、女性とも男性とも判断しにくい中性的な声が聞こえた。
「たしか、『見つけた』って言ってたかな?」
その声を聞いたのが私がここで起きるまでの最後の記憶。