8話 お小遣いの使い道
前話のあらすじ:ホウレンソウは穏健派のようです?
ホウレンソウが人間になってから2か月が過ぎた。
ホウレンソウは実に控え目で大人しい。読書が好きなようで、ネット小説や普通の文庫を読んでいる。ホウレンソウはお小遣いのほとんどを本と、その本を収めるための本棚を買うために使っているようだ。
他の子供たちにもお小遣いを渡していて、みんな月に15万円ずつだ。
なぜそんなに出せるのかと言うと、労働力が一気に増えて今まで手が回っていなくて、遊ばせていた畑を作れるようになったので、目下売り上げがとても増加しているのと、野菜ファミリーは戸籍が無いため、一切税金がかからないからだ。
パートさんを雇ってもフルタイムなら月に15万円は給料を払わなければならない上に、人を雇うということは給料とは別にも支給すべき作業着や手袋などの必要経費や、交通費や残業代やらなにやら…。
(元野菜たちだと普通のパートさんとは違って経費も無いし、特殊能力もあるから労働力も上なんだよな。毎月小遣い15万円でも安すぎるぐらいだ)
たぶん70年ぐらい昔の農家の子供たちが聞いたら泣いて羨ましがる金額だと思う。
だが、俺も仕事の手伝いに子供の頃から駆り出されて、夏休みの半分は農作業をしていたが、毎年夏休みの手伝いでそれなりの金額のお小遣いをもらっていた。
…もちろん母親に貯金されていたが。
さて、娘たちがお小遣いで買ったスマホでにぎやかに会話しているようだ。
「サツマイモー!ウチのイヌスキグラマにサツマイモの写真アップしておいたでー」
「コラ姉上!?私が真剣を振り回している危ない人みたいに見える写真を、無断でアップするな!」
「ニンジン、俺が石を運んでるところならいいぜー」
「アレは石じゃなくて岩やったやん。しかもジャガイモよりデカかったし、さすがにアカンのちゃう?」
「姉さんたちは騒がしすぎる。イヌスキグラマはこういうのをアップする場」
ホウレンソウが持っているスマホには、野良猫5匹がウチの軽トラの荷台で、それぞれが理解してその形で繋がって寝転び、丸を描くかのようにお昼寝する画像が。
「「「…」」」
唖然とする根菜3姉妹。
「お、王道すぎてつまらんな!」
「お、俺もチャンスがあればそれくらい撮れるぜ!」
「ホウレンソウ、その画像の他の写真は無いだろうか?何枚か撮っているのではないか?他のバージョンがあったらぜひ送って欲しいぞ」
サツマイモだけ反応の路線が違うようだ。
(俺もその画像が欲しいぞ)
「ところで、どうやってこんな写真撮ったんや?」
「そこだけあらかじめ暖めておいた。それと写真を撮る時に外してるけど、本当は枠を作ってそこでおねんねしてもらって、全匹寝てから枠を外して写真を撮ってる」
「「「「策士すぎる」」」」
そして野菜たちにはそれぞれ自室を与えている。例外はハクサイ。もちろん俺と同室である。
(さて、今日も畑仕事を進めるか)
「お父様、ホウレンソウの【アレ】はちょっとすごすぎるぞ」
「俺もそう思う。【アレ】は反則だよなー」
サツマイモとジャガイモがホウレンソウの【アレ】を驚きの目で見つめている。
ホウレンソウは野菜としては連作障害の起こりやすい作物なのだが、ホウレンソウの【アレ】とは【連作障害を皆無と化す能力】だ。
ホウレンソウいわく、本を読んでいるだけで連作障害や病気知らずの強い子が育てられる。と、太鼓判を押していた。
…半信半疑だったが、確かにハクサイの【オーラ】とホウレンソウの【読書】でウチの野菜は何の問題も無いキレイなお姿で育つようになった。
恐るべき葉菜類の実力と言ったところだろうか?
おかげでまた売り上げが上昇中だ。この分なら異世界に転生して変形するような【赤いトラクター】を買えるかもしれない。
…いや、なんでもない。
娘たちのお小遣いだが、ホウレンソウ以外の娘もそれぞれ好きに使っているようだ。ホウレンソウは目に見えて部屋に本や本棚が増えているのでわかりやすいが、他の娘は何に使っているんだろう?
気になった俺はとりあえず聞いてみることにした。
「ウチはほとんど貯金しとるで。使っとるのは洋服くらいやな」
「貯金か、偉いぞ」
ニンジンはおしゃれ好きで、結構色んな洋服を着ているので予想はついていた。しかしそれでもメインの使い道が貯金とは驚いた。もっと散財するタイプかと思っていた。失礼。
「私はほとんど使っていないぞ。スマホの料金以外では刀のメンテナンスとか木刀を買ったりぐらいだな」
「そうか、剣術以外に違う趣味も探してみるといいぞ」
サツマイモもほとんど貯金か。サツマイモらしいと言えばサツマイモらしい。
だが俺は知っている。サツマイモの部屋はカワイイぬいぐるみだらけだと言うことを。
「俺は漫画とトレーニンググッズだな」
ジャガイモはホウレンソウとは違うベクトルの読書が好きで、部屋が漫画だらけだ。だが本棚を買うつもりが無いのか、同じ作品ごとに山のように積み上げるので、ハクサイからよく注意されている。
そしてダンベルやらバーベルやらが倉庫にある。
…お前そんなもの無くても岩を持ち上げるじゃないか。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
今後もお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。