3話 〇〇〇〇でひと騒動
前話のあらすじ:ポテチが空を飛びました。
〇〇〇〇に到着した俺と野菜ファミリーたち。
…〇〇〇〇については、みんなわかってるよな?言ったらダメだぞ、内緒だぞ。
安価かつ最近は若者向けの服も積極的に開発しているこの店は、農家の奥様の仕事着選びにも大人気だ。とは言っても、俺の仕事着はほとんど建築系などの方も使うような作業着店で買うことが多い。
後部座席のニンジン・サツマイモ・ジャガイモは店に着くまでの間も散々いろいろとケンカしたり何故か共感しあって突然泣き出したり、仲良くジャンケンで誰が俺に直接洋服を選んでもらうのかを決めたり、とにかくにぎやかだった。
「さて、店に入る…。ニンジン、うさ耳はしまえと言っていたハズだ。サツマイモ、日本刀をまた没収されたいか?ジャガイモ、車はキレイに駐車してあるから持ち上げて動かす必要はない」
「ウチのあいでんてぃてぃーがぁー」
「む、むぅ、でもこれは身を守るためには必要で…」
「ちょっとズレてるんだよ、ほら、ここ見てよお父さん」
…店に入るにならない。
ほら、スマホで写真取ってる人が周りにいる!あの人らがイヌスキグラマにアップした写真が数日後にワイドショーで取り上げられてたらどうするんだ。
これは対策を練る必要がある。
と思っていたら、ハクサイが前に出る。
「旦那様の言いつけを守れないなら、1年間おやつ抜きです」
「「「!?」」」
さすがハクサイ、子供達のしつけは良妻の得意技だ。というか、ジャガイモは俺の奥さんになるとか言っていた気がするのだが、ニンジンやサツマイモと同様に子供だとハッキリ立場が決まると精神的に幼くなるのか…?よくわからん。
「みんな落ち着いたところで、店に入ろうか」
〇〇〇〇の店内はコーナー分けされていて見やすい。ハクサイがテキパキと、元々予定していた買い物を済ませていく。ニンジンとサツマイモにはパソコンを使わせていなかったが、ハクサイにはパソコンの使い方やインターネットの概要を教えてあったので、〇〇〇〇の商品もあらかじめ目を付けてあったようだ。
「なぁなぁ、これとかどう?ウチに似合うと思うんやけど?」
「姉上、それならこっちの緑のデニムを合わせたらどうだろうか?」
「おいおい、お前らわかってねーなー。俺はこっちのフリル付きの方がニンジンには似合うと思うぜ」
(え、ジャガイモは服なんて興味ない性格だと思ったが、意外と普通らしいな)
てっきり武闘派かと思っていたのだが、パワーと一人称以外は普通に女の子らしい。
「よっしゃ、オカンが決めるもの以外ではこれにする!」
ニンジンは可愛らしい服を選ぶ。
「私はこれにするぞ」
サツマイモは大人しく見えるものの、どこか和風側を取り入れた服が好みなようだ。
「俺はこれだなー」
…前言撤回。ジャガイモはどこの旅する武闘家かと言わんばかりの露出が多くてサイズがやたらとぴっちりした服を試着してきた。
「ジャガイモ、それを買うなとは言わないが、出歩く時に困らない服をハクサイに見繕ってもらえ」
「えぇー!?こういうの漢らしくていいと思ったのによー!」
「いいから…。あ、ハクサイ。ジャガイモの服はまかせたぞ」
「あらあら、しょうがないですね。ジャガイモは私と一緒に来てね」
「うむ、ジャガイモはセンスが無いぞ」
「せやなー、あれは無いわー」
根菜同士の争いは常に絶えない。もはや我が家の常識と化しつつあるが、ニンジンとサツマイモはなんだかんだで仲がいいから、ジャガイモも早く馴染んでくれるといいな。
…ちなみにすでに2回ほど店員さんから注意を受けている。ニンジンが興奮してやかましいこと。ジャガイモが力加減を誤って、商品を破いてしまったこと。サツマイモは大人しいので何もやらかしてない。
もちろん店員さんには俺が丁寧にお詫びして、ニンジンとジャガイモには、初めてのお出かけで興奮するのはわかるが、やっていいこととやってはいけないことがあると教える。
一般常識があるとはいえ、彼女たちは野菜から人間になったばかりなのだ。見た目は高校生ぐらい…ハクサイは20代前半ぐらいの見た目だった。他の3人は高校生ぐらいに見えるのだが、やはり人と野菜での知識の違いはあるのだろう。そこは俺がちゃんと教えてゆかねばならん。
(ここで父親の威厳が発揮できるな!)
俺がニマニマしていると、ハクサイが察したようにニコニコしている。本当に良い奥様だ。今日の夜も楽しみだ。
そうしている内に全ての買い物を終わらせたハクサイが、会計を済ませてきたようだ。ハクサイには【すでに財布を握られている】ため、俺が使える金はお小遣い制になっている。元々畑仕事が大好きで、消耗品や農機具の修理費以外に出費していなかったので何も問題ない。
とはいえ、ハクサイには数千万円近いお金を預けてあるのだが、毎日の食卓は上手に食材管理されており、無駄な出費はない。ハクサイ、優秀である。
ちなみにニンジンとサツマイモも料理が出来る。それについてはおいおい説明しよう。
さて、みんなのお洋服も買い揃えたので、これで次の段階に進めるだろう。次はスーパーだ。
「さて、帰るぞー」
「「「「はーい」」」」
妻と娘3人と共に、座席の容量がギリギリなコンパクトカーで帰路につくのであった。
いつも私の小説をお読みいただきありがとうございます!
次話は翌日投稿します。
今後もお楽しみいただければ幸いです。
ぺこり。