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名探偵おねぇ

作者: 牛尾 仁成

「先生、この事件の犯人が分かったんですか!」


 大広間に集められた館の住人たちの目の前で、僕はそう叫んだ。


 名探偵、金剛寺夜華(やか)(本名:夜叉丸)は満開のハイビスカスのような艶やかな笑みで言った。


「その通りよォ、ユウちゃん。複雑怪奇にくんずほぐれつしている糸を、丁寧に一本ずつ、小鳥さんを愛でるように紐解けば、この事件の全容が見えてくるわァ」


 そう言って先生は自分の服に手を掛け、一瞬で脱ぎ捨てた。


 どういう仕組みでそうなるのか、僕は未熟なので分からないが先生は一瞬で服を脱ぎ捨て、戦闘状態に入ることができる。


 戦闘状態とは即ち、ダンススタイルである。


 ほとんど下着のような姿なのだが、ダビデ像のように均整の取れた肉体を薄っすらと覆うピンク色の衣装が先生の勝負服だ。


 先生の戦闘状態を初めて見た人は呆気に取られて、固まった。女の人はキャーと悲鳴を上げたが、誰も先生の美しくも猛々しい肉体から目を逸らしてはいなかった。


「それじゃあ始めるわよォ~……ミュージック、ケェィモンッ!」


 轟音の指パッチンを合図に、大広間にはナンとカレーな雰囲気の音楽が鳴り響く。そしてどこからともなく、青一色と赤一色のバックダンサーが現れ、全員で踊り始めた。


 腕や足のしなやかさや、腰と首の動きのキレはいつにもまして力が籠っており、この事件の難解さを見る人に伝えてきた。


 先生の表情は山の天気のようにコロコロと変わり、犯人の動機をその顔の筋肉だけで表現し、トリックや事件の推移を召喚したバックダンサーの力を借りながらダンスで表現した。


 そして、百花繚乱のダンスは遂に犯行と犯人を結びつける証拠を指し示した!


 それは犯行現場に残された部分入れ歯であった。


「バカな、部分入れ歯が証拠だとぉ!」


 警部が驚く様子を尻目に先生は今にも天に昇りそうなポーズでフィニッシュを決めていた。


 その瞬間、僕にも犯人が分かった。


「そうか! 犯人は今夜のたこ焼きパーティーでたこ焼きを食べなかったメイドさんだったんですね!」


 部分入れ歯には青のりがついていない。だから犯人はたこ焼きを手配して一口も食べなかったメイドさんだ。


 メイドさんは言い逃れ出来ないと観念して膝から崩れ落ち、自身の罪を認めた。


 こうして恐ろしい事件に幕は下りた。先生でなければ解決できなかっただろう。館の住人たちは口をそろえてお礼を言った。


 ありがとう、名探偵おねぇ、と。


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