前半
「そこに意味はないからね」
「……。」
プラットホームで電車を待っていた。
線路の向かいの壁に、大きな大きな広告が並ぶ。
(江口洋介……きゃりーぱみゅぱみゅ……石原さとみ…)
ビッグなビッグな看板を目で追ううちに列車がやってきた。
俺は、それに乗る。
列車は動き出す。
よく晴れた日の昼下がりだ。
身体の調子がいいのに加え、バッチリお洒落をしている俺は電車に揺られ、車窓から外を見て1人、笑みを浮かべた。
(このように世界があるのがいい……俺と、今、俺が見ている風景が俺と直接的に関係なくても、俺自体が、地元に戻れば俺の日常が俺を待っているわけだ……♪)
そう思い、恍惚としていた俺に、話し声が聞こえた。
目の前に背を向けて立っている、二人のテニスボイーズだと思われる輩が何やら話している。
「先輩は、どうするんですか?」
「うーん、そうだな…」
それだけが確かに俺に聞こえた。
(桁外れのシティにいる子は、日常が桁外れか……俺がびっくらこくことも。何の変鉄もないこと……それが当たり前……
そんなこともあろうかと……俺は俺の義務教育、高校生活をベストで過ごしてきた…( ・`д・´)……!)
そう平常心を保とうと、車窓をワイドに見ていた俺だが、この時、異様にドキドキしていた…。
暑くもなく寒くもない車両において。