CHAPTER2-1
遅くなりました!!
再来週からは毎週火曜に投稿します!
トイレから帰ってきても黒板には真っ白い文字が残っている
黒板消しの仕事は日直のはずなのに忘れているらしい
こういう時のための学級委員なのだろう
自分がやらなければいけないのは分かっているが
制服の袖が汚れるのであまり気乗りはしない
しかし一度やり始めたら最後までやらなくてはいけないのだ
几帳面な性格が出て何度も何度も教壇を往復した
やってみると案外気持ちいいものでもある
身も心も綺麗になるようで楽しく終わらせることができた
袖についた粉をはたいた後
黒板消しクリーナーと呼ばれているもので粉を吸い込ませているときに
肩とトントンと叩かれた
振り返ると「ありがとう」
と書かれたノートが目の前に広がっている
ノートの上にはノートと同じくらい真っ白い指先が爪を見せていた
「誰?」と言ったが返事がない
おそるおそるノートの裏側をのぞき込もうとした時
音梨さんが、ひょこっと顔を出した
僕が驚いたのと同時に彼女も驚いていた
パッチリしている目が最大まで開いている
「どうしたの?」と言いかけて、手のひらに書いたが伝わらず
しぶしぶ黒板の隅に小さく書いた
彼女は、避難訓練を知らせてくれたことの感謝と
迷惑をかけた事への謝罪をしたかったらしい
僕は全く気にしていない事を述べて
「困ったことがあったら遠慮せずに言って」
という事を伝えた
実際に僕は全く気にしていなかった
というより彼女の言動?が気になっていた
身振り手振りを使って感情がよく分かる
言葉を使っていないのに感情が豊かで
特に彼女の笑顔は本当に幸せそうなのだ
彼女はチョークをまた手にして
「今日、日直じゃなくない?」と黒板に書いたので
「黒板を消し忘れてる人がいるから消してる」と書いた
彼女は目を輝かせて「偉い!」と書き足した
僕は彼女としばらく黒板で会話した
好きなYouTuberが一緒だったので結構盛り上がり
あっという間に黒板消しが真っ白になった
休み時間が10分しかないことを恨みながら
もう一度チョークを握るのと同時に
「お!黒板消えてんじゃん。タクトがやってくれたのか、ありがとな!」
振り返ると山口だった
「おい、手濡れてるじゃねえか!」
「わりぃ。トイレ行ってたからさ」
「ちゃんと拭け!ああ、そういえば」
山口に紹介しようと思い、音無さんの方を向くと
もういなくなっていた
「あれ?」
「どうした?」
「いや、なんでもないや」
「なんだよぉ」
キーンコーンっとチャイムが鳴り始めた
まだ二人の会話が残っている
僕は彼女の文字を名残惜しいが消した